5話‐4
叔父さんと一緒に倉庫の中を進みながら、周囲の様子を窺う。
倉庫は一階層しかないが、壁際の階段から頭上に張り巡らされた点検用の通路に通じている構造。
そしてこの倉庫、どうやら今は使われていないらしくあちこちに埃が積もっており、置いてある物も空のダンボール等、価値のありそうな物は置いてない。
「ブレイズライダー、本当に奴はここに入ったのか?」
スコーピオが見つからないせいで俺を疑いはじめたのか、勉叔父さんは訝しげな顔で問いかけてくる。
「ああ、確かにこの建物に――」
間違いなくスコーピオが倉庫に逃げ込んだと伝えようとするが、突如として背後から強い衝撃を感じ、遮られてしまう。
「ぐっ……」
「ぶ、ブレイズライダー!?」
更に痛みで呻き声を上げながら、重たい何かの押し潰されるかのように、うつ伏せに倒れこむ。
「ノコノコと入ってきたな。 ここがお前の墓場だ!」
首を後ろに回してみると、俺にのしかかっているスコーピオが目に入る。
「は、離せよ! ぐあっ!?」
すぐさま反撃に移るべく点火装置を起動させようとするが、両腕がスコーピオのハサミで掴まれているせいで、痛みにより手に力を入れられず、点火装置の起動ボタンを押すことすらできない。
「誰が離すか! このまま――」
「そこをどけ!」
勝ち誇った様子のスコーピオを、叔父さんが蹴り付けた。
しかし、スコーピオはあっさりと叔父さんの足をハサミで受けとめてしまう。
……そう、俺の腕を掴んでいたハサミで受けとめたのだ。
「邪魔だ、火走!」
スコーピオは一言そう叫ぶと叔父さんの足を受けとめていたハサミを振るい、勉叔父さんを吹き飛ばす。
「お前は後だ! まずはこいつから仕留める!」
「仕留められるのは、お前の方だ!」
スコーピオから解放されて自由になった腕の点火装置を起動させて火花を散らすと、激しく燃え上がる炎へと変化させスコーピオを包みこんでやる。
「ぐおォォォ!?」
硬い甲殻を持つスコーピオでも、熱さには耐えられない。
俺の上から離れると、苦しそうに地面をのたうち回る。
「大丈夫か!」
スコーピオを尻目に起き上がると、倒れている叔父さんの元へと駆け寄り、声をかける。
……返事はないが、息はある。
どうやら、気絶してしまっただけのようだ。
「この野郎、よくもやってくれたな。絶対に許さねえ!」
叔父さんの状態を確認している間に、纏わりついていた炎を鎮火して起き上がったスコーピオが此方を睨み付け、怒りで声を荒げる。
「悪党に許してもらう気なんてない。そもそも、先に仕掛けてきたのはそっちだろ」
自分勝手な言い分を適当にあしらいながら、気絶している叔父さんを巻き込まないように離れる。
「何を言ってやがる。お前が先に強盗の邪魔をしたんだろう? 悪いのはお前だ」
……まともに相手をしてやるだけ、時間の無駄か。
スコーピオの出方を窺うべく、返事をせず立ち止まった俺の様子を見て、スコーピオもまた立ち止まる。
どうやら同じようにこちらの出方を見る事にしたみたいだ。
なら、先に仕掛けさせてもらう事にしよう。
近くに置いてあった空のダンボールを掴みとり、牽制として投げつける。
「鬱陶しい!」
スコーピオが腕を振るうと、ダンボールはあっという間に真っ二つになった。
「うおりゃあァァァ!」
まあ、牽制としてはそれで十分。
腕を大振りした事による隙をつき、一気に近づき炎の拳で殴り付ける。
硬い甲殻だが、何度も殴っていればどうにかなる……と、思いたい。
いや、例えどうにかならなくても、諦めずに戦う他に道は無いのだ。
「さっきは手加減してやったが、今度は潰してやる!」
両手のハサミをジャキンジャキンと鳴らしながら、俺の腕目掛けて突き出してくる。
捕まったら、ただじゃすまない。
ハサミをかわしつつ、スコーピオの腕が届かない距離まで飛び退く。
……まずは、あのハサミをどうにかしないとな。
「危ないな。刃物を人様に向けるなって、誰かから教わらなかったのか?」
「生憎、親も教師も、みんな俺の事を恐れて何も言わなかった! お前も、何も言えなくしてやる!」
大柄な体格に似合わず機敏な動きで近づいてきて、ハサミを突き出してきたスコーピオ。
俺は突き出されたハサミの甲殻部分を掴み、受けとめる。
「やってみせろよ!」
両拳に宿した炎を燃え上がらせ、両腕のハサミを炎で包む。
先程のように燃やされては堪らないと思ったのか、スコーピオは俺の手を振りほどき、数歩程後退していった。
「また燃やそうって算段だっただろうが、そう何度も通用するか!」
勝ち誇った様子でそう口にするスコーピオだが、俺には別の狙いがある。
「そうだろうな」
一言だけ返事をしてやると、再び攻撃を仕掛けていく。
「生意気な奴め。その澄ました態度をいつまでも――!?」
当然、スコーピオも反撃するべく両手のハサミを使おうとするが、そこでようやく俺の狙いに気付いたらしく、動きが止まる。
驚いた様子のスコーピオの視線は、炎で溶かされ溶着されたハサミに向けられていた。
「自慢のハサミは、もう使えないな!」
隙のできたスコーピオを殴り付け、怯んだところを炎を宿した足で蹴り飛ばす。
「こ、こいつ……ぐあっ!?」
仰向けに倒れこんだスコーピオは起き上がろうとしてくるが、咄嗟に胸元を踏みつける。
これでもう、抵抗はできない……筈だった。
「かはっ!?」
次の瞬間、横っ面を叩かれるような衝撃を感じ、気がつけば倉庫の壁に叩きつけられていた。
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