4話‐3
「何をやってるかなんて、お前には関係ないだろ! つーか、誰だお前は!」
「オレは音切我威亜。ソニックライダーっていう名前で、ブレイズライダーと組んでヒーローをやっているぜ。さて、とりあえず質問してみたけど、雰囲気的にそこのネクラ君にカツアゲしてたのはお見通しだ! そんな下らない事をやってる暇があるなら、オレの活躍を調べてファンになり、称える方が有意義だぞ!」
突然割り込んできた変人に食って掛かる不良だったが、音切は一切怯むこと無く早口で捲し立てる。
……碓井の事、さらっとネクラ呼ばわりしたな。
「お前が何者かはわかったけど、そんな事どうでもいいんだよ! 邪魔をするなら――」
「ぼ、僕を助けて恩でも売るつもりか! ヒーロー気取りの勘違い男め!」
自分から聞いたくせにどうでもいいと宣い音切に突っかかって行こうとする不良。
しかし、碓井の方が先に音切へと近寄り、胸ぐらを掴み責め立てる。
ネクラ呼ばわりされたから怒るのはわかるが、それにしては激しすぎやしないか?
「恩を売るっていうか、困ってる人がいたら助けるのがヒーローだし、こういう地道な活動がオレを有名にしてくれるからな。というか、ネクラ君は何で怒ってるんだ? 助けたんだから、感謝してくれてもいいだろ」
胸ぐらを掴まれてなお、飄々とした態度を音切は崩さない。
正直なのは良いことかもしれないけど、正直すぎるのも考えものか。
「だ、誰も助けてくれなんて言ってないだろ! 余計なお節介だ! 第一、僕はお前が嫌いなんだよ!」
碓井はそう言い放つと音切の胸ぐらを付かんでいた手を離し、足早に立ち去っていった。
そういえば、音切の事をヒーローとして認めてないとか言っていたな。
まさか、あんな態度をとる程に嫌っていたとは。
「変な奴だな。ネクラ君はいつもあんな感じなのか?」
「そんな事、こっちに聞いてくんじゃねえよ! お前がヒーローだかなんだか知らないけど、次に邪魔したら只じゃおかないからな!」
ポカンとした様子で問いかけてきた音切に至極尤もなツッコミを入れると、不良も立ち去っていく。
「先を越されたな、ショウ。あの勢いは見習った方が良いんじゃないのか?」
二郎が肩にポンと手を置き、何故かしたり顔で問いかける。
「確かに凄いけど――」
「そうだろう。凄いからもっとオレを褒めたたえ、その素晴らしさを周りの人達にも教えてやってくれ」
俺の返事を遮り、何故か此方に近寄りながら音切が声をかけてくる。
いや、何でこっちに来るんだよ。
「別に誉めてない。確かに行動力は凄かったけど、もう少し落ち着いて言い方を考えろ。碓井の奴、相当怒ってたぞ」
「碓井……? ああ、ネクラ君の事か。悪い事をしたかなとは少し思うけど、名前を知らなかったんだから仕方ない。それはそうと、火走を探してたんだ」
音切は口では反省しているものの、悪びれる様子は見せない。
「俺を探してた?」
なぜだろう、猛烈に嫌な予感がしてきた。
「火走はオレの活躍をよく知ってるからな。他の奴等に話してもらおうと思ったんだけど、中々来ないから探しに来たんだ」
予感的中。
確かにこいつには助けられたがそれはそれ、これはこれだ。
「他人に頼んで宣伝してもらって、それで人気が上がるのか? もし俺がヒーローなら、行動で示し続けるけどな」
「なるほど、そういう考え方もあるな。有り難く参考にさせてもらうぜ。それはそうともうすぐ始業時間だから、早く教室に来ないと遅刻するぜ。それじゃあお先!」
音切は俺の言葉に納得したような素振りを見せると、自身の超能力を使い、猛スピードで教室へと向かっていく。
……口八丁が通じる単純な奴で、助かった。
「理由は色々あるけど、一番は助けを求める誰かの為に、俺はブレイズライダー……ヒーローとして動いてる」
その日の昼休み。
俺と二郎、そして多田さんは人のいない屋上で、内緒話をしていた。
「助けを求めている人たちの為に、ヒーローをやっているか。君がブレイズライダーだと知った時は驚かされたけど、中々立派な心がけじゃないか。他に誰か正体を知っている人はいるのかい?」
俺が何故ヒーローをやっているのか。
その話を聞いた多田さんは、感心したような様子を見せる。
……しかし、どことなく残念そうな雰囲気も感じとれたのは、何故だろうか?
「二郎がここにいるから察しはつくと思うけど、偶然正体を知って協力してくれている。後、こいつのせいで多田さんのお兄さんにも正体がバレた」
俺が抱いた疑問は横においておき、多田さんの質問に答える事にする。
「に、兄さんも知ってたのか!? そんな素振り、全然見せなかったな。全く、兄さんの癖に生意気な事をしてくれる」
目を見開いて驚く素振りを見せる多田さん。
その口振りから、兄妹間での力関係が窺え、お兄さんが普段から苦労しているであろう事が容易に想像できる。
「お兄さんにはショウが黙ってくれとお願いしたからな。それよりも、俺のせいでバレたとはどういう了見だ? お前だって油断してただろ。ひょっとして多田さんに正体がバレたのも、お前のうっかりが原因じゃないのか?」
二郎が多田さんのお兄さんを擁護したかと思うと、次の瞬間には抗議の声を上げはじめる。
確かに俺に非が無いとは言えないが、それはそれとして間違いは正さなくてはならない。
「勘違いを訂正してやろう。多田さんには俺から正体を明かしたんだ。火走ショウとしては兎も角、ブレイズライダーとして考えたら彼女は信頼できると判断した」
「おいおい、今の言葉は本当なのか? 嘘を言ってたりしないよな?」
説明を受けてなお、二郎は疑うのをやめずに多田さんに真偽を確かめようとする。
「本当だよ。それにしてもボクを信頼できるとは、嬉しい事を――ちょっと待ってくれ。火走君としては兎も角ってどういう意味だ!」
最初はどや顔で二郎に返事をしていたが、急にその表情が怪訝そうなものに変わり、俺を問い詰めてくる。
余計な事を言わなきゃよかったな。
「どうもこうも、多田さんの今までの俺に対する態度を思い返してくれ。俺に非が無いとは言わないけど、信頼できないのも無理は無いだろ?」
「……そう言われると、ぐうの音も出ない」
多田さんは俺の返事を聞き、シュンとした様子で素直に大人しくなる。
落ち込まれたままだと、こっちの気分が良くないな。
「まあ、ヒーローとしては色々と助けられたから、信頼できると判断した。本当に感謝してるよ」
「そ、そうか。それじゃあ、これからも何かあったら言ってくれ。君のヒーロー活動を、ボクにできる範囲でサポートするよ」
フォローを入れた甲斐もあって少しは調子を取り戻せたのか、多田さんはニヤリと笑いながら協力を口にする。
「多田さん、ショウのサポートをするのは構わないけど、俺の方が先輩だからな? そこのところは弁えてくれよ」
二郎が多田さんに先輩風を吹かしはじめるが正直、二郎にできる事で多田さんにできない事は無いと思う。
色々言いたい事はあるけど、今は余計な事を口にする必要も無いか。
「ありがとう、二人とも。これからも宜しく頼む……危険じゃない範囲で」
信頼する二人の友人に、労いの言葉をかけるだけにしておこう。
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