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4話‐2

 何件かの小さな事件を解決した後、空も完全に暗くなったので帰宅。

 玄関扉のドアノブに手をかけようとした瞬間、ドアノブがひとりでに回ったのに気がつき、一歩後ずさる。


「ショウか。随分と遅いけど、今日もボランティアか?」


 開いた扉から現れた叔父さんが、声をかけてくる。


「う、うん。少し夢中になりすぎて、遅くなったんだ。……これから仕事?」


 叔父さん達には、余計な心配をかけないように俺がヒーローとして活動している事を伝えていない。

 帰宅が遅くなる言い訳として、ボランティアとして街中の美化活動をしてると嘘を言っている訳だ。

 尤も、犯罪者という街を汚す奴らを掃除しているという意味では、美化活動と言っても間違いではないかもしれない。

 そんな事よりも、叔父さんは仕事に行くためのスーツを着ている。

 何かあったのだろうか?


「ああ、少し用事ができて、これから仕事だ」


 当然というべきか、仕事の内容までは話してくれない。

 普通に考えて、俺に言う必要は無いしな。


「やっぱりね。仕事、頑張って――」


「ショウ、少し時間があるか?」


 応援の言葉をかけながら家に入ろうとするが、叔父さんに呼び止められる。


「大丈夫だけど、どうしたの?」


 態々無視する意味もないので、足を止めて叔父さんへと振り返る。


「ショウが毎日何をしてるのか、あまり詮索する気はない。だけど、叔母さんに心配をかけるような真似だけはするなよ」


「……え?」


 さっきも言ったように、叔父さんには俺がボランティアをしていると教えている。

 しかし、今の言い方だと、俺が嘘を教えているのを知っているようではないか。


「叔父さん、今のどういう――」


 すぐさま叔父さんを呼び止めようとするが、一瞬呆気にとられた隙に仕事へと向かっていた為に、話を聞くことはできない。

 ……ヒーローやってるということまではバレてないみたいだけど、一体いつ勘づかれたというんだ?




「皆、オレの活躍を見てくれたか? 最っ高にヒーローしてただろ!」


 教室に入るべく扉を開こうと手をかけた瞬間、中から音切の喧しい声が響いてくる。

 俺も助けられたし、奴の言う通り確かにヒーローはしていただろうが、あの自己顕示の強さは一体どういう事なんだ。

 まあ、奴が何を言おうが俺には関係ない。

 多少うるさくても気にしなければいいだけだ。


「見てないって奴は、火走に聞いてくれ。昨日オレが助けたから、しっかりオレの活躍を話してくれる筈だ!」


 音切の言葉を耳にし、俺は踵を返し教室から離れる。

 あの野郎、何で俺を巻き込んでくるのか。


「ショウ、どうしたんだ? 教室はこっちじゃないぞ?」


 少し歩いたあたりで、遅れてやってきた二郎が声をかけてくる。


「そんな事はわかってる。音切の奴がうるさいから、授業が始まるまで適当に時間を潰そうとしてるだけだ」


「なんだかよくわからんが、なる程な。じゃあ丁度いいか。ショウにお客さんだ」


 二郎がそう言い終わると同時に、背後から多田さんが姿を現す。

 どうやら、気持ちの整理がついたみたいだな。


「や、やあ。おはよう、火走君。早速で悪いけど、昨日の事について話そうじゃないか」


 多田さんは僅かに緊張した様子で、俺に視線を合わせずそう口にする。

 前言撤回、まだ完全に整理できた訳ではなさそうだ。


「わかった……と言いたいところだけど、少し長くなる話だ。昼休みに屋上まで来てくれ」


「そ、そうだね。そうする事にしようか。じゃあまた後で、火走君」


 多田さんは少し考える素振りを見せた後、納得した様子でそう口にして俺達の前から立ち去っていく。


「昨日何があったかは知らないけど、どうやら仲直りはできたみたいだな。それじゃあ、今日の昼飯は一人で食うことになるか」


「ブレイズライダーについての話だ。お前も一緒に来てくれたら助かる……いや、来い」


 二郎は付いて来る気が無かったみたいだが、こいつにも昨日の事を話す必要がある以上、まとめて説明した方が都合がいい。


「そ、そうか? 俺は別に構わないけど、ブレイズライダーの話? 一体どういう――」


「や、やめろよ! さもないと、ひどい目に合わせるぞ!」


 二郎が疑問を口にするが、言い終わる前に突然響いた声により遮られる。

 声のした方へ視線を向けると、二人の男子が何やら口論していた。


「大声出しても誰も助けになんて来ねえよ。お前が大人しく金を出せば、やめてやる……というか、ひどい目ってどんな目に合わせるつもりだ? お前みたいな弱い奴がよ!」


 一人は柄が悪く、如何にも不良といった様相をした男子生徒。

 どうやらカツアゲ真っ最中のようだ。


「ひ、ヒヒッ。僕が弱いだって? いいのかい、そんな口を利いても」


 そしてビクビクと怯えながらも、ニヤニヤと笑みを浮かべながら妙に強気な返事をしたもう一人は碓井だった。

 不良のガタイはそれなりに良く、俺達以外にも何人か彼らの存在に気付きはしたが、巻き込まれたくないのか奴の言う通り皆知らない振りをしている。


「碓井の奴、挑発みたいな真似しないで早く逃げればいいのに」


「そう簡単に逃げられたら苦労しないだろ」


 二郎に突っ込みを入れはするが、態々挑発する必要無いのも確か。

 一体何故、あそこまで強気な態度に出れるんだ?


「ネクラヤローが生意気な口を叩きやがって。痛い目みないとわかんねーみたいだな!」


 碓井の態度が癇に触ったのか、不良は実力行使に移ろうとする。

 ……あいつとは別に仲が良い訳じゃないが、助けてやるか。


「おい、そのへんに――」


「よぉ! 何やってるんだ? オレに聞かせてくれよ!」


 不良を止めるべく声をかけようとしたその時、どこからともなく現れた音切によって遮られてしまう。

 ……さっきまで教室にいた筈なのに、いつの間に近くにいたんだ?

今回の話を読んでいただきありがとうございます。

ブクマ・ポイント・感想をもらえれば筆者のモチベーションが上がるので非常にありがたいです。

次回は来週日曜日の昼十二時投稿なので、読んでもらえたら励みになります。

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