4話‐1
突然の爆発に暫く呆気にとられてしまったが、爆発が収まったところでようやく我にかえり、シャイマーの元へと駆け出す。
「おい、大丈夫か!?」
「ぐ、うぅ……」
先ほどまでのサメの化け物では無く人間の姿に戻ったシャイマーに声をかけるが、呻き声しか返ってこない。
シャイマーの近くでしゃがみこみ、様子を確認する。
……怪我こそしているが、命に別状は無さそうだ。
「おいおい、あの爆発で生きてんのか? 随分と頑丈なんだな」
「化け物になってたから、そのお陰だろうな。ただ、話を聞くのは無理そうだ」
シャイマーは意識を失っており、軽く揺すってみても起きる気配は無い。
ガイストバックルをいつ、どこで手に入れたのか聞きたかったが、残念だ。
「流石に死んでたら後味が悪いし、良かった。とりあえず、初めての大物撃破ってところかな。オレのヒーローとしての輝かしい歴史に刻まれる一ページになれたんだから、こいつも光栄だろ」
……音切を無視して、少しでも情報を得るべく腹部のガイストバックルを調べようと手を伸ばす。
しかしガイストバックルに触れた瞬間、既にひび割れていたバックルは粒子状になり、俺の手のひらから零れ落ちて消えていった。
「勝ちはしたけど、何も得られなかった……いや、これ以上シャイマーが暴れないだけでも、御の字か」
シャイマーが気絶しガイストバックルも消滅した以上、ここにいてもやる事はない。
俺は圧縮されたバイクを取り出すと、圧縮解除して跨がる。
「あれ、もう行くのか? お祝いにこれからパーッと騒ごうかと思ってたのに」
「ソニックライダー、一緒に戦ってくれたのには礼を言う。だけど、あまり変な事をしたり、話したりするなよ。じゃあな」
勿論、音切に付き合う意味も無い。
無駄だとは思うが一応釘を刺し、この場から離れる為にバイクを走らせた。
人気の無い場所まで辿り着くとバイクを圧縮して片付け、変身も解除する。
「……ふぅ。色々気になる事はあるけど、とりあえずシャイマーの件は解決したし、ひとまずよしとするかな」
暗躍するノワールガイストや、ガイストバックルの事など気になる事はあるが、当面の脅威が一つ去った事で僅かな間だが安堵の気持ちに浸り、その場に座り込む。
……とはいえ、他にもやる事はある、いつまでもこうしている訳にもいかない。
鞄からいつも使っているスマホではなく、多田さんから渡された連絡用の端末を取り出し眺める。
正直気が引けるけど、後で話すと言った以上は連絡をとる他にない。
後回しにしても意味がないし、早く済ませた方が楽だろうしな。
「……通知が来てる?」
意を決して端末を弄り多田さんに連絡をとろうとするが、一件のメッセージが届いていると通知されている事に気づく。
どうやら数分前に送信されたらしく、送り主は多田さんのようだ。
多田さんへの連絡をひとまず止め、端末を操作し、メッセージの内容を確認する。
『やあ、ブレイズライダー……いや、火走君と呼んだ方が良いのかな? まさかこの端末を渡して初めてのメッセージが、君の正体を知ってからになるなんて思ってもいませんでした。まさか君がブレイズライダーだったなんて、今まで非礼を何と詫びたらいいかわからない。とりあえずボクの心の整理ができたら再度此方から連絡するので、暫しお待ちください』
メッセージの内容を要約すると、どうやら俺の変身を見て相当動揺したらしく、落ち着く為の時間がほしいので多田さんの方からまた連絡するらしい。
彼女がかなり驚いている事が、どこか変な文面からもわかってしまう。
一先ず問題を合法的に先送りできた事にホッとすると同時に、多田さんのような天才でもこんなに焦ることがあるのだと知り、どこかおかしな気持ちになる。
「さて、今日は帰るとするかな」
用事も無くなったし、今日のところはもう休むとしますか。
端末を鞄の中に戻し、代わりに普段使っているスマホを取り出し、何の気なしに画面を見る。
……スマホにもニュースや二郎からの連絡が通知として来ており、俺に新たな事件発生を知らせていた。
「……もう一頑張りするか」
再びバイクを取り出し跨がると、街の平和を守るべく走り出した。
※
『の、ノワールガイストに、栄光あれ!!』
ブレイズライダー達の手により倒されたシャイマーが、絶叫の後に爆発したところで画面が切り替わる。
『……以上が、先程発生した事件現場の映像でした。それでは次のニュースです。先日逮捕された強盗グループの一人が、護送中に脱走――』
興味の無いニュースに移ったので、リモコンを操作してテレビの電源を切る。
「ヒヒッ、今日もブレイズライダーが活躍して、応援してる僕も誇らしいよ」
鮫の化け物を見た時は面食らったが、ブレイズライダーはそんな化け物相手にも果敢に立ち向かい勝利した。
流石は僕の見込んだヒーロー。
……それはいいのだが、一つだけ不満がある。
「ソニックライダーの奴め。ブレイズライダーの邪魔をした挙げ句、とどめを刺す美味しいところを奪いやがって」
最近現れたソニックライダーとかいうヒーローだ。
アイツの言動を暫く見ていたが、僕はあんな承認欲求の塊をヒーローだなんて認めないぞ。
たまたま力を得ただけでブレイズライダーと一緒に戦いヒーローとして称えられるなんて、あってはいけない。
「ヒヒッ、ぼ、僕だってヒーローになれるんだ。ブレイズライダーのように、悪人を倒す力さえあれば」
僕は先程のニュースに映っていた怪人の力を思い返しながら、机の上に置いてあるソレを見る。
「何で彼女が僕にこれを渡したのかわからなかったし、今まで怖いから使わなかったけど、これさえあれば……」
視線の先にあるプレートに彫られた髑髏のレリーフが、僕の決意に呼応するかのように鈍く光った。
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