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アイスさんとふわ雪さん

作者: 林風

街や、公園の木が、いつしか春のものになろうとしていた。

春を迎えようとしている頃、受験生は、学校に合格し、桜を楽しむ。春がやって来る。

ぼくのしている、snsの中学生は、高校入試で苦しむ子がたくさんいた。高校入試が始まる直前の夜に、「どうしましょう。緊張して眠れないです」と、snsで知り合った子から、メッセージが入ってきたことがあった。顔も、声も知らないぼくなんかに、そんなメッセージをくれるのだ。

ぼくは、少々、適当ではあったが、高校に受かってからのことを考えてくださいと言った。その子は、「アイスさん」という。

一つ、想像しやすいように、話をつくってあげた。

そこらへんは、小説も書いていたことがあり、容易いことだった。

「アイスさんは、高校に受かりました!見事、合格して歩いていると、うちに入れと、部活を勧誘してくる先輩たちに、アイスさんは、辟易しています。さあ!運動部に入ろうか、文化部に入ろうか?迷っているアイスさんの横を男の子が通り過ぎていきました。男の子は、バスケ部に入っていきました。アイスさんは、そこで決意します。バスケ部のマネージャーになって、この男の子を応援しようと。アイスさんの恋のはじまりです。この話の先は、アイスさん自身が作るのです。アイスさんしか作れない、青春ラブストーリーのはじまり、はじまり~」

とメッセージを送ると、その子は落ち着いたのか、

「高校に受かってからのことを想像して寝ます!」と返ってきた。

「どうだろうなぁ。この子......」と、よそから観察をしていると、数日後、「高校合格しました!これで、わたしも高校生です!」という知らせが入ってきた。

本命ではないらしく、残り、公立高校の偏差値10ぐらいアップするところを受験します、というメッセージが入ってきた。

とにかく、良かった、良かった。スベり止めで合格したとしても、めでたい話だ。高校受験というのは、大学受験とは、また違って、浪人ができない。あとがない。ぼくも、高校受験は、大学受験よりもがんばった記憶がある。だから、スベり止めでも合格した、その緊迫したムードのなくなりようときたら、本人にしてみれば、格別な喜びだろう。リラックスできるものである。

ぼくにとっては、少々、適当であっても、あの夜のメッセージは、本人にとってはすがりつきたいくらいのものだったんだろうと思う。

いい知らせが入った。

さて、ぼくも、アイスさんと同じくらいの時期、ちょっとした受験生気分を味わっていた。

文章読解作成能力検定三級という試験を受験しようとしていたのだ。

だから、試験の重みは違えど、受験生くらいの覚悟はしていた。

アイスさんは、めでたく合格したが、その三級を受験する直前は、精神的にアップアップ状態だった。

snsのひとが、励ましてくれるのだが、ピコン、ピコン、着信音が鳴るのが、やかましくて、やかましくて。みんなに「コメントは返せません」と宣言しているのに、どんどん応援メッセージが入ってくる。まいった、まいった。

しょうがないので、コメントを一言だけ返した。「今、誰かのやさしさも皮肉に聞こえてしまいます」と。

それでも、コメントは、ジャンジャン入ってくるし、「あー!うるせー!」となっていた。そこに一つだけ、ぼくのコメントを読んだ、中一の女の子が

「リラックスしてね。林風さん。リラックス、リラックス......」

と、やわらか~く、メッセージしてきてくれて、地獄のなかにいたぼくを、一本の蜘蛛の糸で、天国まで、救ってくれた!

不思議と、その子にだけは、心を開くことができた。「ふわ雪さん」という。

その子にだけは、メッセージを返信し、試験が終わったあと、真っ先に、ふわ雪さんにメッセージを返信した。

「落ち着いて、試験を受けられることができました。ふわ雪さんのおかげだよ」と。

本当に、ふわ雪さんのおかげで、落ち着いて試験にのぞめた。実力を出し切ったねだから、不合格でも来年、また受ければいい、て思えたのも、ふわ雪さんのおかげだ。

はげまして、はげまされる。

世の中というものは、本当に、情が巡り巡ってできているんだなあと、実感したのでした。

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