ボードウィン侯爵の怒り
お祖父様一行は5日の滞在を終えてゲートで帰った、エリルは学院が休みの時は必ず来ると言ってドリィ、リィネとカーラに何やら約束してダンジョンの事を念を押して頼まれた。
ヒュードル領の開拓もスティーブお義父さんと一緒に考えマグウェルさんも忙しく動いている。
今回の訪問はとても実の有る事でサラも満足してる。
これから少し忙しいがアンナ達が来たらもっと変わって行くだろう。
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「ブラッドよ、私と婆さんはフォレストへ行き隠居する。」
「お爺さんと一緒に旅に出るわ、後は任せましたよ。」
「なんですか?帰ってくるなりそんな大事な事を。」
「テオから荷物が届く、その荷物が着き次第、旅に出るから宜しくな。」
「宜しくなと言われても┅確かに跡目は継いで今は私が侯爵領を任されてます、しかし父上が居たから上手くやれて来られたのです。」
「何を情けない、お前は映え有るフォレスト家の跡目だ、王族でも有る、領地の管理、領民の安寧を守らなければならん立場だ、しっかりしろ!幸い転移ゲートが有るのだ何時でも行き来出来るでは無いか?」
「はっ!そうでした、転移で移動出来ますね、忘れてました。」
「あらあら、サーシャさん?もっと手綱を絞めないとブラッドは甘えん坊さんで頼りないわよ。」
「お義母様、それはお任せ下さい、しっかりとお世話致します。」
「フフッ、貴女もフォレストへお出でなさい、テオちゃんのお嫁さん達はそれはとっても良く出来た娘さんだからお手本になるわよ。」
「そ、そうですか、それは是非に!」
「父上、テオドールとはどう言う人物なのですか?私には全く解りません、普通のようなしかし、何か強い意思があるような┅」
「フフッ、テオは化け物だ!それもとんでもない化け物、だが安心しろ、あいつは優しい人の良い男だ、お前もすぐに解るし惚れるだろう、ハハハッ」
「それ程┅」
「お父様、お母様、エリルは高等学院へは行きません!中等を卒業したらフォレストへ行きます。」
「エリルちゃん、貴女には伯爵家の次男との婚約が待っているのよ?馬鹿な事は言わないの。」
「ブラッドその事なんだが、婚約は無しだ、無しと言うよりさせぬ。」
「私とお爺さんで決めました、エリルちゃんを自由にしなさい。」
「お義母様!そんな事が許されると?」
「父上、母上、エリルの婚約は随分と前に決まっておりました、それを今になって┅」
「ふむ、安心せい、ネルソンと私でウィンダー伯爵には知らせる、エリルに手をだすなとな、ハハハッ」
「そんなぁ┅」
「エリル、卒業までにやりたいことを決めなさい、もう決まっているみたいだが。」
「はい、お祖父様お祖母様、私はもう決めています、お父様、お母様、卒業の暁にはきちんとお話ししますわ。」
「あらあら、エリルちゃんはしっかり者ね、誰かさんとは大違い、フフッ」
「解りました、エリルの事は保留と言う事と婚約は無しと確認しました。」
「私達はネルソンと話が有る、用意を頼む、」
「承知しました。」
(一体何があったのだ?2人とも生き生きと?それにエリルも覚悟を感じた┅あんな子では無かったが?)
ヒロからの荷物は2日後に届いた、朝起きたら庭に置かれていたのだ。
被りをとると見た事も無い馬車があった。
エリルが飛んで喜び、使用人が取り囲んで驚いた。
なんと!ゴーレムの馬が二頭、それも全身銀色に輝き美しく瞳は青く澄んでいる。
まるで生きているように動き鳴くのだ。
それと御者は2人?あのミスリルゴーレムが座っている、話し出すと皆が一斉に逃げ恐怖するがエリルと仲良く話し笑う。
普通にしゃべるゴーレムには名前があり、カムイとソムリと名乗った。
ヒロが名付け馬にも名がある。
モアとリア、エリルがとても気に入り離れない。
学院へ行く馬車はカムイ達が良いと駄々をコネ、仕方なく許してしまった。
それが大事になるとは┅
いつもの様に校門から入ると人々の叫びと恐怖で腰を抜かす者や走って逃げる者など多数。
しかし、1部の者はモアとリアに釘付けでうっとりと見てる、カムイがエリルの手を取り馬車から降りると教師が駆け寄り更にビックリする。
喋るのが信じられない、馬車の荷台は、空間魔法で造られ、豪華な部屋になっているのを見て、アワアワと腰を抜かす。
そんな騒動をよそにカムイ達の馬車は帰っていく。
エリルは胸を張り、顔が輝き元気に学院へ入って行く。
するとドドドッ、人が集まり質問責めに合うがお構い無しに教室へ向かった。
友達になれなかったのに馴れ馴れしく質問する貴族の子達が好きになれなかった。
馬車が帰ってくるとブラッドとサーシャが荷台を確認するのだが?荷台では無く部屋だと認識して驚きカムイが性能を説明する。
荷台の部屋には寝室がありリビングもある、キッチンと風呂、トイレが配置され冷蔵庫に魔道コンロは4口のが配置され何時でも風呂に入れ料理も出来る。
走る家だった。
荷物を置く場所とマジックバッグ特大が置かれていて旅の途中、買ったりした物が入れられる。
至れり尽くせりの仕様になっていた。
「アンナさん達の馬車とは違うみたいね、テオちゃん優しいから困らない様に考えてくれたのね。」
「この馬車を騎士団や王宮は欲しがるだろうな、誰も造れはせん。」
『旦那様、私達はご主人様から荷台には結界を忘れず張る様に仰せ使っております、今は張っておりません、見てみますか?』
「そうか、では見せておくれ。」
コクンと頭を下げ、最初はカムイが結界を掛けそれからソムリがその上から張る、二重結界。
びくともしない。
「ハハハッ、私達は何の心配も無いな。」
「そうですね、カムイちゃんとソムリちゃんもとても強いしモアちゃんとリアちゃんもでしょ?」
『はい、奥様、モアとリアは空を飛べますし私達より強いかと。』
「なんだって?そうなのか┅テオも凄い物を送ってくれた物だ。」
「フフッ、テオちゃんは優しいから心配してくれたのよ。」
『奥様、モアとリアはサラ様が造られました、サラ様はゴーレム達から女帝様と崇められています。』
「えっ、そうなの、サラちゃんが┅本当に有り難い事ですね。」
「私達はテオ達に守られておるのだな┅」
「父上、母上、私は信じられません┅ゴーレムが喋り知能が有るとは┅」
「それがテオの能力の一部だ、お前も落ち着いたらフォレストへ行け、そして考えを改めろ、権威、名声、身分が実にくだらん事だと思いしると良い。」
「くだらない┅」
「では私達は王宮へ向かう、ネルソンには特と言って聞かせないとならん。」
「私も言わせて貰いますよ、フフッ。」
ボードウィンとエリンダはゴーレム馬車で王宮へ向かった。
その乗り心地の良さに感心して、まるで部屋に居るみたいで揺れなど無くビックリした。
王宮の入口では門番が慌てたが侯爵を見ると敬礼して通した。
騎士団も駆け付けカムイ達に釘付けになり王宮に来ていた貴族連中が口々に騒いだ。
王族専用玄関に馬車が着くと宰相が急いで来て案内する。
奥の院へ入ると国王ネルソンと王妃アマンダが待っていた。
席に案内され座るとネルソン達も腰を落とした。
「叔父上、あの馬車は何なのですか?」
「見ておったか、あれはテオドールが送ってくれた物だ。」
「テオドール?┅まさかマリアンヌの倅┅生きていたのか┅」
「フフッ、驚いたであろう?フォレストへ行き、死んだと思っていたのか?」
「それは致し方無い事、フォレストへ入り生きて出た者はおりません。」
「お前は王で有りながら辺境の地がどうなっているのか知らぬのか?」
「それは┅オルレア子爵にヒュードル領を任せると先だって書状を送りましたが?」
「そのヒュードル領がどうなったか?どうしてそうなったかは知らぬのか?」
「ああっ、その、確かヒュードル領が焼け野原になり伯爵一家も亡くなったとか、それでオルレア子爵に任せる事になったのでは?」
「フフッ、知らぬのだな、ヒュードル領は魔人の手に落ちた、それをテオドール達が殲滅して領民を助けフォレスト領に入植して今はフォレスト領民として暮らしておる。」
「はっ!なんと仰られた、フォレスト領民?魔人?」
「何も聞かされておらんようだ、宰相!お主は知っておるのだろう!倅のブラッドがミルズ男爵領とエイド伯爵領の一件で報告した折にヒュードル領の事も報告した筈だが?」
「はっ、それは┅遠い辺境の事、陛下へ報告するまでも無いと。」
「全く、いつから王宮は目眩になったのか?どっちも魔人の仕業だぞ!テオドールがどちらも片付けたから良かった物を騎士団だけではどれ程被害と死人が出た事か。」
「ハハッ、王国騎士団ですぞ、それは無いのでは?」
「魔人に吸血鬼、それにノーライフキングじゃぞ!」
「はあっ!ノーライフキングと?吸血鬼┅それは聞いておりません。」
「宰相よ、お主は何をしておった!ネルソン!宰相の事、考えなくてはならんな、暗部は知らせて無いのか?」
「暗部からは何も┅」
「これは王国の一大事じゃぞ!魔人達が国をうろつき、貴族や領地を支配しておるのに王宮は何も知らんとは!」
「叔父上、そんなに我が国に魔人達がいるのですか?」
「おるのだ!それに帝国が絡んでおる、まったく、この国の暗部共は何をしているのだ!ネルソンよ、ちと胡座をかき過ぎだぞ!」
「すみません、しかし、テオドールが魔人達を片付けフォレスト領に人が入ったとは┅」
「フフッ、ネルソンちゃん、貴方とオーギュストが棄てた領地が今は立派になって、領民になった人達は幸せに暮らしてるわよ。」
「そんな!信じられません!」
「馬鹿もん!私達は一昨日迄、フォレスト領に居たのだ、孫のエリルと一緒にな!」
「はっ!それは誠ですか?」
「あの湖は綺麗になり湖畔にはあの屋敷があった、テオドールが整備して14000人以上が暮らしておる、働く場所も沢山有り皆が元気に働いていた、幸せそうにな。」
「そんな┅誰も為し遂げられなかった┅」
「確かにフォレスト領は私も諦めた土地だ、ヒュードルに任せたが匙を投げオーギュストは棄てた、お前もだ、それをテオドールが行くと言うとオーギュストになんと言って知恵を与えた?知っておるのだぞ。」
「それは┅」
「マリアンヌの残した大事な子を見捨てたのはそれ程マリアンヌの事を思っていなかったのだな、残念だ。」
「違います、マリアンヌを┅とても思っていました。」
「では何故テオドールを捨てた?お前だけでも優しく出来たのでは無いか?オーギュストはテオドールを疎んで憎んでもいる、マリアンヌが死んだのはテオドールのせいだと勘違いしておるようだ、お前もだろう、だから捨てたのだな。」
「ネルソンちゃん、テオちゃんは何も求めて無いわよ、只、マリーの思いを叶えたいだけなの、フォレスト領を元に戻し貴族から離れ静かに暮らしたい、それだけなの。」
「それが今ではテオドールだけがこの国を助けておる、大陸の情報は総て掴んで、特に帝国を気にしているのだ。」
「そんな┅大陸総ての情報┅では帝国が攻めて来ると?」
「オルレア子爵と私に話してくれたのだ、テオドールが言うには帝国は勇者召還を繰り返している、その為次元の裂け目が出来、そこから魔人共がこちらに来てる、魔国は不可侵を守っているが、裂け目からこぼれた魔人達と帝国が組んで悪巧みをしている、勇者を召還して魔の森にて魔物を退治し、こちらに攻め入る計画らしい。」
「それは┅そんな事になっているとは┅」
「王国は守れるかな?それと、こんな事も言ってたな、帝国が人々を苦しめるなら一思いに消しましょうかと。」
「消してしまう?」
「帝国の民を逃がしてその後に帝国王都、腐った貴族達を消し去りますと、1日も有れば出来ると言っておったから辞めさせた、それは国がする事だからと。」
「そんな事が可能なのですか?」
「良く聞け、宰相!お前もだ!フォレスト領には3000の騎士がいた、その者達は1人1人がAクラスの魔物を片付ける強さだ、それと2000の騎馬隊、これはSクラスの魔物を一騎で勝つ程の力だ、総勢5000の騎士団、その他に騎士団の10倍以上の力を持った軍団が1200名も居た、他にも色々といる、そんな戦力を持っている者が国を攻めれば一溜りも無いわ!静かにしておれとは言って置いた。」
「我が国騎士団や貴族達の騎士団も其れなりに強いと思われますが?」
「フン、1時間も持たぬわ、夢にも思うな!国が滅ぶ。」
「それほど┅ではテオドールに言って国を守らせるのは?」
「情けないのお、恥ずかしくは無いのか?棄てた領地の捨てた人間に国を守って貰うだと?いつから人でなしになった!」
「そ、それは┅」
「私達は明日からフォレスト領へ向けて旅立つ、あの地で余生を送る事に決めた、その為の馬車をテオドールが用意してくれた、良く良く考えろ、国が危ういのだ!」
「ネルソンちゃん、テオちゃんには手を出さないでね?フォレスト領とオルレア領にヒュードル領だけど城塞地帯にするみたいよ、だからその地帯に構わないでね、国に納める物はオルレア子爵が納めるから、テオちゃんの所は王国の地図には無い土地、だから一切構わないで。」
「テオドールに税金や領地料を納めよと言えばあれは快く納めるだろう、だがそれも恥ずかしい事では無いのか?この国が危うくなれば何も言わずともテオドールは助けるだろう、しかし、腐った貴族や王族は粛清を覚悟するんだな、オルレア子爵は国に忠義を持っておる、彼を大事にしなさい。」
「貴方達の事は総て見ているから悪い気は起こさないでね、今もちゃんと見ている人がいるのよ、その人はとても強くて1人で騎士団なんか潰せるし多分、国も潰せるみたいよ、だから絶対に構わないでね、脅しでは無いけど紹介しとくわ、ルシエラちゃんご挨拶お願い。」
パッとエリンダの横に現れた。
『あら、お姉さま挨拶が必要でしたか?仕方ないですわ、フフッ私はヒロ・タチバナ様の忠実な僕、ルシエラと申します、お見知りおきを。』
挨拶が済むとポワンと消えた。
(あれは?悪魔のようだが┅否、悪魔を配下になど┅しかし┅)
「どう?ルシエラちゃんは何時も私の側に居てくれてるの、嬉しいわ、他にもかわいい人達が居るのよ、彼女達を怒らせないでね。」
「初めて会った時は彼等に恐怖したが婆さんは何故か仲良くなって、いつも一緒にいるのだ、婆さんを怒らせるな、いいか絶対にだぞ!」
「承知しました、何が何だか┅まさか┅それで┅明日には出立されるのですね、残念で仕方ありません。」
「なあに、転移で直ぐに来れる、今回は最後の旅だからのんびりと馬車で行くのだ。」
「転移!」
「テオドールが転移のゲートを屋敷に置いてくれている、だがそれは誰でも使える物では無い、許された者だけ、他の者が使えばどこに行くかわからん、一年程掛かる旅だが、その後は気軽に来れる。」
「ネルソンちゃん、くれぐれも考えるのよ?お願いしますね。」
「おおっ、そうだ!忘れるところだった、テオドールがお前に会いに行くと言っておった、しかと伝えたからな。ではサラバだ。」
呆気に取られた王達をおいて馬車に乗り帰って行った。
静かになった部屋でネルソンは叫んだ。
「マリー!教えろ!テオドールとは何なのだ!来ると言うなら見定めてやる!」
拳で叩いたテーブルが2つに割れて手の平に浮く少しの血が、居たたまれなかった┅




