フォレストの町
「フフッフフッ~フフンランラン♪」
「マーサ随分ご機嫌ね?」
「だってもうすぐテオちゃんに会えるんですよ、テオちゃんの温もりがぁ!」
「まったく、まだ早いわよ!そりゃ私だって┅」
2人してもじもじして?
やはり女の性なのか?永い時間の寂しい思いが会える事で思いがつのり抑え切れない。
早い物でヒロ達と別れて9ヶ月も経った、ローレンス領を出た時は直ぐに会えると思っていたが追い付けなかった。
アンナにマーサ、マリアは普段なにも無い様にしていたが温もりを求めてしまう体は正直に反応していた。
ヒロを求める本能を堪える日々がこんなにも辛い事だと思っていなかった。
それ程ヒロへの愛は深いと気づかされた旅だった。
黄金色に染まる麦畑の道をゴーレム馬車は軽やかに進む。
高く連なる第2城壁が見えた頃は麦畑は夕陽に照らされ黄金色から薄紅色に染まって皆の顔も紅くなっていた。
「やっと町がある第2城壁に着いたようだ、どんな町なのかな?」
「今や1万を越える領民が住んでおるのじゃ、それなりの町なんじゃろう。」
「やっぱり少し遅かったかしら?もう夕方だし、今日はテオ達と会えないのかな?」
「第1城壁までは距離がある、今日は町に泊まり明日には会えると思うが。」
「このまま町に泊まらず夜通し行けば着くんじゃ無いですか?」
「わからないわ、この地区だけでも10日近く掛かったでしょ?」
「そうじゃな、たとえこの先夜通し走っても着くとは思えぬ、町に泊まるのが良いじゃろう。」
「あまり考えず町へ入りましょ、それからでも良いでしょ?驚く事ばかりだから。」
「マリアさんの言う通りです、驚きの連続でしたからきっとこの先も驚く事でしょうから。」
「そうね、見て見ましょう!どんな町なのか、フォレストの町を!」
第2城壁の門番ゴーレムに案内され門をくぐるとやはり驚きの光景が広がった。
「ようこそフォレストの町へ、私は役所を任されているドノバンと申します、皆様の案内とお世話を承りました、宜しくお願い致します。」
「始めまして、アンナです、ドノバンさんは役所と言われましたが?」
「はい、領主様から領民の管理と言いましょうか名簿や戸籍などの作成と仕事状況や要望と生活のお世話をする仕事を頂きました。」
「ほう、確かに役所ですな。」
「私はヒュードルの町で役所の地域係をしていましたから領主様から適任だと。あの建物が役所です、横にあるのが迎賓館となります、今夜はあちらでお休み下さい。」
そう!門を抜けて最初に目に入るのが真っ白い建物!お城のような物、ドノバンが迎賓館と言った建物だ。
道は門から真っ直ぐ伸びゆっくり進むと右手に迎賓館がそびえる、その前に役所と言われた建物があり奥には広場が見える。
道の左手に連なった建物は騎士団本部でその奥にも広場があった。
「この地区は第1鉱山地区と第2鉱山地区とに別れています、役所がある方が第1鉱山地区でして住民も多く住んでいます、第2鉱山地区は住宅地と倉庫街となってます。」
「ドノバンさん、領民は人族だけですか?」
「いえ、領主様の御意思は多種族共同でしていろんな種族がいます。」
「人族と亜人だけでは無いと?」
「ええ、騎士団の方々はご存知でしょ?それにゴーレムさん達も、他にはハイゴブリンさん達やリザードマンさんに鬼人さん達と他ではいらっしゃらない方々がいて亜人の方々と一緒に暮らしています。」
「そのハイゴブリンとか┅魔物では?」
「会えばお分かりになると思います、魔物ではありません、人族より人らしいですよ。」
「そうですか┅」
「さあ、お入り下さい。」
迎賓館の豪華な入口から入ると真っ赤な敷物があり広いロビーに通された、それからメイド服のゴーレムが各部屋へ案内して行く┅
「あなた達?話せるのね?」
ハイ、私達ゴーレム達皆が話せますので何なりとお申し付けください、お食事の用意ができましたら御案内致します』
部屋は広く風呂も付いていて豪華な造りになっている。
窓から見える町並みには沢山の人が行き交う。
「ねぇ?ゴーレムさん、町の事を教えてくれる?」
『はい、この第1鉱山からは主に鉱石でしてミスリルやオリハルコンにアダマンタイトなどの希少鉱石が多く取れます、又、鉄や銅が非常に多いです。第2鉱山は主に宝石類です、金や銀が多くルビーやダイヤモンドなども多いですし種類も豊富です、住民は与えられた家を選んで好みの住居に住んでいます、商店もありますが全部領地の経営です。』
「お店は持てないの?」
『ハイ、仕入れが出来ませんから商いは無理です、ですから商人経験者にはお店で働いてますが給金が受け取れ服飾屋とかは作った服等を領地で買い取りそれを売って貰います、自己経営は無理ですので。』
「成る程ね、仕入れ出来ないから無理かぁ、で?飲食店はどうなってるの?」
『統べて同じです、各々のお店は領内で取れた材料を使って販売して売り上げを納めます、給金は決まってますが報償金が年に3回支払われます、これは個人の働きにより受け取る額は違いますけど。』
「フォレスト領では儲けるとか無いのね、安定した暮らしは保証されると┅」
『町が出来てそんなに経ってません、この先給金を貯めフォレストを出たい者もいるでしょう、しかし、出た者は領地へ戻れ無いのが決まりです、覚悟がある者は生きて行けますが甘い考えの者は、苦しみ困まった時に生きて行くのは難しいでしょう、この地に居れば安心して生きていけます、それに郷帰りに町を出る事は出来ますから』
「確かに、また戻れるならなんて甘い考えじゃ駄目になるわよね┅」
『それでは私はこれで』
ゴーレムメイドが出て行くとセバスとギルバートが訪れた。
「アンナ殿、町を見ましたかな?驚きですなぁ、この短期間にこれ程とは。」
「そうですね、テオは人手不足をゴーレムで賄いあのアンデッド達で魔物討伐をして他にもゴブリンとか訳のわからない人達を使ってここまで仕上げたのね?」
「明日は本人から聞けるでしょう、これまでの事とこれからの事を。」
「楽しみじゃな?あの第1城壁の向こうはもっとビックリする事じゃろう。」
「この第2地区も見ればもっと驚く事ばかりだと思うけど?」
「明日、少しは見て見たいですな、町並みや人々の暮らしを。」
「セバスさんはやっぱり執事の目で見るのかしら?」
「何か役に立てば良いのだが┅」
「ハハッ、お主の仕事が無いかも知れんのぉ、坊は優秀な使用人を使っておるようじゃしなぁ。」
「ほんと、テオとサラだけじゃここまでは出来ないわよ、きっと誰か捕まえて来てるのよ。」
「悪魔も気掛かりではあります、魔物が一緒と言うのも。」
「愉快じゃないか?誰も考えもしなかった事じゃ、悪魔に魔物も仕えさせるとはハハッ」
「笑い事ではありません!ギルバートさん?もし彼等が裏切ったら┅」
「それは無いじゃろう、坊に仕えとると言う事は何らかの契約がある筈じゃ、ウルティマちゃんが良い例じゃろう?」
「契約ね、それに魔物より人に近いと言ってたわ、人間の方が裏切るのは得意でしょうから。」
「この地区がフォレスト領の中心地となる訳だが広い領地だから転移ゲートを効率良く使っている、領民を町へまとめ外敵から守る、そして逃げ道も作って置くとは┅」
「坊の考え方は領地の繁栄ではなく領民が安心して暮らす事なのじゃろう┅」
「テオは裕福とか贅沢とかには興味無いから、領地が安定してそこに暮らす人達の幸せのお手伝いをしたいんでしょうね。」
「そうですね、入植条件を見ると分かります、そして部外者を近づけ無いのは問題を避ける為でしょう。」
「欲深い貴族達に関わりたく無いのじゃろう、冒険者達も問題を持ち込むからなぁ。」
「明日はこの地区を見てみたいわ、時間が掛かるかも知れないけど大切な気がして┅」
「そう言う事です、私達も同じ考えですよ、この先この地で暮らすのですから。」
「儂等は坊とこの領地を考えなければならん、まずは知る事からじゃ、領地全体を知らねば何も始まらん。」
「ええ、出遅れたけど私達はテオのお手伝いをする為に来たんだから。」
話し込んでいたらゴーレムメイドが食事の案内に来た、ぞろぞろと豪華な広間へと入り晩餐の席に座ると何体ものゴーレムメイドが料理を配膳して行く。
綺麗なグラスに注がれたワインは香り高く芳醇で喉を潤した。
ギルバートはビールと言うエールに似た酒に夢中になり何杯も飲んでいる、料理も美味しく野菜の上品な味に驚いた。
デザートは今までみたことが無いケーキと言うのが出て虜になる、夢の様な時間だった。
食事を終えるとアンナが皆に話した。
「明日、この地区を見て回るから第1城壁へ行くのはもう少しずれるかも知れない、皆にも見て知って欲しいの、この領地の姿を。」
「う~ん、早く行きたいけどそれってとても大事な事ね?」
「ここまで来たんだから慌て無くても良いし、町のお店屋さんとか行きたい、それにどんな人達が居るのか知りたいよね。」
「予定はドノバンさんにも話して見るわ。」
「じゃあ明日は自由行動なの?」
「バラバラ散るのは得策では無いじゃろう、一緒に回るのが良いと思うが?」
「そうしましょ、知らない町だし案内して貰ったが良く解ると思う、結構広い地区だから迷子になるわよ。」
「了解、明日は見学会だね?楽しみ!」
「ゆっくり寝て疲れを取りましょ?」
各々に思いを馳せ旅の終わりが近いのを感じていた、そして新たな生活が始まる事に胸が踊る思いを堪え眠りについた。
『おはようございます』
「おはよう、今日はこの地区を見て回る予定よ、遅くなったら又今夜もお世話になるかも知れないけどお願いね?」
『承知致しました、手配致します、朝食は昨夜の広間へ用意してありますのでお好きな時間にお出でください』
「ありがとう、貴女の名前を聞いても良いかしら?」
『ハイ、21号と申します、名前はサラ様から与えて頂きました』
「そっそう?21号さんね、ありがとう┅」
21号?やっぱりサラがゴーレム達の親分?確かにゴーレム達の数は半端ないわね┅
しかし┅まるで人間みたいじゃないの?動きも話す事も、考えて動いてる┅
テオから教わったって言ってもあんな魔法が?
広間へ行くと昨日とは違って朝食はバイキングになっていて沢山の料理が並んでいた。
オープンキッチンでは料理ゴーレムが腕をふるって肉を焼いたりパスタを作り注文する料理を出してくれる┅
この領地ではゴーレム達が人間以上に働くのか?
みんなはそう思ってしまう、要所要所にゴーレム達が活躍していて治安と仕事を人間以外の者達が取り仕切っている┅
食事後玄関のラウンジに集まるとドノバンが案内してくれるみたいで簡単な説明を受けた。
「おはようございます、第2地区を見学すると言う事で幾つか注意点があります、広いので移動にはバスを利用致します、巡回バスがありますので、公衆トイレが区画毎に設置されてます、ご利用下さい、学校や病院の際はなるべく静かにお願いします、後は現場毎にご説明致します。」
「お忙しいのにありがとうございます、宜しくお願いします。」
「バスとはなんじゃな?」
「馬車の荷台が大きな物でして30人程乗れます、中央広場に乗り場がありまして第1鉱山へ向かいこちらへと戻り第2鉱山へと同じ様にこの地区を巡回する物です。」
「お金とか払うの?」
「利用にはお金は必要ありません、施設もです。」
「それって病院もですか?」
「ええ、公共の物と言うか領地が提供している物は全部お金は必要ありません。」
「お店屋さん以外は無料と言う事ですな?」
「はい、領主様は領民にお優しくて、なるべく無駄な出費はしないようにと言われます、仕事に必要な物とかも買うのでは無く支給されますので武具屋はありません、鍛冶職人とか細工職人等は工房にて仕事が有ります、この領地では適材適所で働くのが当たり前になってますので不満など無く働いております。」
「給金とかはどうなってるの?」
「月始めの日に職場にて管理者から手渡されます、お店屋には役所に取りに来て貰ってますが病院と学校は別です。」
「ほう、病院と学校はどうしてじゃろう?」
「学校は現在ゴーレムさんが子供の世話をしていて病院はサラ様や領主様が患者を見てくれます、まだお医者さんと高度な知識の教師が不在でして探していると言った所です。」
「ヒュードル領から1万人以上入植しても居なかったのね?医師とかは他の領地でも大丈夫だしね。」
「入植者の殆んどが無一文の平民と農民でしたから┅余裕のある者はオルレア領やローレンスの町や王都へ行きました。」
「解りました、後は現場で聞きます、行きましょう。」
迎賓館を出ると最初に役所を訪れた、普通の役所になっていて幾つもの部署があり、2階は警察署と言う物には驚いた。
警使所だと思うけど違っていてどちらかと言えば苦情とか意見とかの処理係┅
この町では犯罪の要素が無く有るとするなら痴情のもつれが多く、数少ない娘の取り合いから喧嘩が一番多いとか┅
今はそんな些細な事を取り扱う部署だと言われた。
もちろん町の見廻りはしていて制服も直ぐに警官と解る、町には交番と言う物が幾つもあり住民の世話をしている。
ドノバンが言うには町の長が居なくて仕事毎にまとめ役が居てその者達が集まり議会で話し合う合議制を取っていると説明された。
3階がその議会場が有り大きな円卓が置かれている、会議で決まった事を領主が受け採択されるとなっている。
会議は毎月行われ領民には採択された事が報告される。
確かに普通なら代官がいて町長もいて町は運営されるがこの町は領民が運営する事を領主が望む形を取っている。
それに人族だけでは無く亜人達も参加している。
あの魔物達もだ┅




