アンナ達其の6
「ミルズ男爵はどうされてますか?」
「はい、父はおそらく処刑されていると思います。
「やはり反逆罪で?」
「いえ、ルーデンス国王のお情けで領民殺戮と越権行為の罰になりました。」
「関わった貴族達は皆反逆罪では無く他の罪状で?」
「反逆罪にしては国の威信に関わると、私は母が異変に気づき国王様へ陳情してミルズ家から除籍と貴族籍を廃して頂き今は只の平民となりました。」
「連座制の回避ですな?母君は?」
「止めたのですが┅父を諌めると領地へ行ってしまいもう生きては┅」
「フ~ム?一体何が原因なのか?」
「私は王都の学院でしたから領地で何が起きていたか知りません、ですが温厚な性格の父が人々を殺め恐ろしい計画に加担するなど?」
「ミルズ男爵は気の優しい方でした、少し大人しかったと思う程物静かな性格だった筈。」
「仕方ありません、既に遅すぎました┅オルレア子爵様にはご迷惑をお掛けしてすみませんがもうどこにも頼る所は無くて┅」
「それは構いません、ミルズ男爵とは同級生で友達でしたので残念な気持ちです。」
「身の周りの物は全て売って整理したのですがもう残りも無くすがるしか┅」
「お便りの返事にも書いて置いたのですが何も心配はいりません、貴女をお守りするので。」
「ありがとうございます┅」
メリーヌは安堵したのか泣き崩れ気を失ってしまった。
侍女のシャルレが寄り添い部屋へ案内されカレンが介抱した。
「旦那様、如何されます?」
「そうだな、落ち着いたら今後の事を話し合うとして今は王都の成り行きを見よう。」
「籍は平民でしたら問題は無いかと?」
「連座制を甘く見てはいけない、廃籍で逃れる貴族が悪事を働く事が多くある、元貴族として扱かわれるのだ。」
「平民となっても元貴族として罪が残ると?」
「一族として血は消えぬ、死なない限りは┅」
アンナが心配そうに尋ねる。
「お父さん?あの娘の事どうするの?」
「どうもしないよ、知り合いに頼られたからには面倒は見るつもりだ。」
「あの子、まだ学生でしょ?」
「王立学院生だったが辞めて来たみたいだ。」
「マリアと私はあの子達と関わったからここへ来たのを驚いたけど┅」
「その話を聞かせてくれ。」
ルーデンスの町での事を放し執務室を出るとマリアと一緒にメリーヌの所へ行った。
カレンとシャルレが介抱して気を取り戻し起きていたがベッドで横たわる彼女は顔色が悪く酷く痩せていた。
「本当に辛い旅をしてきたのね、こんなに痩せて。可哀想に。」
「お嬢様は食欲が無く旅の間も倒れる事がありました。」
「事情はお父さんから聞いたわ、今は早く元気になるのが大事ね。」
「そうよ、安心しなさい、嫌な事は忘れ元気になって笑える様にならないと駄目よ。」
うっすらと笑みを浮かべ又、眠ってしまった。
メリッサを残し部屋を出た、フォレストへ発つ前に片付けばと思ってカレンに告げる。
「お母さん?私達ね、あの子の事が終わってからフォレストへ行くわ。」
「あなた達は心配しないで良いのよ、予定通りに向かいなさい。」
「あの子ね、凄い才能があるのよ?彼女自身は気付いて無いと思うけど。」
「才能?」
「私ね鑑定できるの、あの子を鑑定したら女神の加護持ちだと解ったの、属性は光で槍のスキルもあったわ。」
「アンナ!鑑定なんてできるの?それでは見て欲しいのがあるの、お願い出来る?」
「出来るわよ、何を見るの?」
「実はこの間届いた物が怪しいの、送り主を知らないし、箱だけどねぇ何だか胸騒ぎするから。」
「お母さん、感は良かったからね。」
カレンがリビングへ持って来た箱をアンナ、マーサ、マリア、ウルティマが見ると一斉に顔を見合せ4人は箱を屋敷の庭に穴を開け放り込むと一斉に火魔法を撃ち込んだ。
ビガーッ! ドガーン!
物凄い音と火柱が立ち煙の中からユラユラと化け物が姿を現した。
«ググヌゥ、よくもわたしに┅ならば皆殺しにしてくれる!»
なんと魔人が姿を現した、だが強烈な火により皮膚はただれ醜い姿は化け物でしかなく、足掻く様に魔法を放つと自分の魔法の反動で弾かれ壁にぶつかる。
闇の魔法らしく毒の霧が襲ったがマリアが聖魔法で浄化する。
マーサが弓に火をまとわせ放つ、同時にマリアの光魔法【ライトニングシュート】が魔人を包む。
火の矢が額にプスッと射貫き息絶えると金色に包まれた魔人は跡形も無く消滅した。
「どうした!何があった!」
「もう片付けたわ、あの荷物はヒュードル伯爵家から送られて来たみたいね、どうやらフィルが教えてくれた事が正しかったみたい。」
「どういう事?ヒュードル伯爵が私達を殺そうとしたの?」
「そうじゃ無くて魔人が狙ってるのよ、ヒュードル伯爵の所が魔人達に制圧され今度はこのオルレアへ矛先を向けたのよ。」
「でも魔人達も頭は悪いみたいね?」
「そうよね、よりによってテオちゃんの庇護下になってるオルレアを狙うなんてバカ丸出し。」
「マーサと同じ」
「ウルティマ!こんな時にぃーぃ!」
バタバタと走り回る2人を見て皆で笑う姿にマグウェルとカレン、スティーブンは驚いた表情で顔を見合せ何故笑えるのか不思議だった。
「子爵!あんな魔人どもがちょっかい出して来ても心配ない、多分じゃが坊達で既に手を打っておるじゃろう、王都へヒュードル伯爵の事と娘御の婚約破棄を知らせなされ。」
「最早ヒュードル伯爵は亡くなったと同じ┅領民達が心配だが仕方ない、我等は守りを固めよう!」
スティーブンはマグウェルと騎士団へ向かい門を厳重にする様に指示して夜の外出を制限する為に各部署と連絡に追われた。
「慌てなくても良いのに、もう来ないわよ!ホントにテオの力を信じて無いから。」
「アンナ?テオ君ってそんなに能力が凄いの?確かに逞しかったけどまだ子供の面影があったしどちらかと言えば女の子みたいだったわ。」
「フフン!そうよね?テオは女の子と間違える程の顔立ちだもん、それだけイケメンよ!」
「そうね、確かにイケメン!私も婚約破棄したから貰ってくれるかも?」
「姉さん?バカな事は言わないの!テオだって誰でも良いと言う訳じゃ無いわよ!そんなだからあんなバカ息子と婚約なんてするのよ!」
「だって┅こんな田舎じゃ良い男は居ないのよ、歳ばかり取って┅」
「オルレアダンジョンの代官には息子が居たじゃない?彼は駄目なの?」
「年下よ?受けてくれるかしら?」
「姉さん次第じゃないの?姉さんだって美人ではあるしまだ若い部類よ?彼は幾つなの?」
「確か┅27か8だったわ。」
「母さん!優良物件よ!早く手を打って。」
「そうねぇ?仕方ないわね、早く孫も見たいしこの子が片付いて貰わないとねぇ┅」
「ハイ、おしまい、それで今はもう1人のあの子の事を考えましょ?」
「そうだったわ、先ずは栄養のある物を食べて回復しないと!」
カレンはいそいそと調理場へ行ってしまい残されたアンナ達は予定を話しあった。
夕方近く迄話をしてるとマグウェルがお客さんだと知らせに来て玄関へ行くと懐かしい面々が訪れていた。
「アンナ様!私、来ました。」
「私達も話を聞いてテオドール様の所へ是非。」
「エマ!それにヘレンさんとガードナーさんも!」
「何じゃ?ガードナー、お前も来たのか?それは助かる坊も人手は欲しいじゃろう。」
「私はずっとテオ様の所ヘ行きたかったのです、やっと願いが叶いました。」
「ギルバート様!そうですか┅俺も実家の仕事よりテオ様の所が良いと、ヘレンもそう言って。」
「テオ坊はサラと2人だけでフォレストで領地の整備をしている、人手は多く必要だから良いタイミングで来てくれた。」
「私達と一緒に行きましょう!後の事は任せて、さぁ!入って。」
「何だかウキウキして来たわねぇ!もうすぐフォレストへ入るのよ!ウルティマもワクワクしない?」
「マーサ単純まだ2ヶ月必要」
「ふんだ!ウルティマ!フォレスト領に入るのは一月くらいよリチャードの速さならもっと早く入れるの?やっとフォレストの地を見れるのよ!」
「遊びじゃ無いまだ問題ある」
「グヌゥ、お子ちゃまが生意気な事を!」
「エイ!」
ウルティマがアイリーンをマーサの顔目掛けて投げるとスライムらしく広がりペタッとマーサの顔に張り付く、フガフガと暴れ引きはがそうとジタバタしてる。
マリアがペタペタと叩くとポンっと丸くなりマリアの腕に収まりマーサはゼェゼェと息荒くしながらウルティマを追いかけた。
いつものじゃれ合い┅
リビングではセバスとギルバートがガードナー夫婦とエマにこれ迄の事を話してる、アンナはスティーブンとマグウェルに予定を話し合って調整してる。
この時は誰も知らなかったヒュードル伯爵領が戦闘の最中だった事を。
フィルがヒュードル伯爵がオルレア子爵邸ヘ魔人を送った事をヒロに伝えると怒り直ぐに悪魔軍団とクロード部隊をヒュードル伯爵領へ送ったのだった。
アンナが心配無いと告げたのはフィルが教えていたからだ、オルレア領は何も心配無いと、それにアンナ達が居ればどんな敵も排除出来る。
子爵はアンナの秘密をまだ知らない、娘が進化してもう人間で無い事を┅
そしてヒュードル伯爵領を治める事になるなんて思ってもいなかった。
ローレンス辺境地のさらに辺境の地が領主としてオーギュストには面倒な領地だと昔から思っていた事がお座なりになり目を向けて来なかった。
ヒュードル伯爵の事もフォレスト領の事で苦々しく思っていた所に粗末な事で居なくなり信頼するオルレア子爵へ任せる事に安堵して事件の真相を知らないままでいた。執事のエードナーが報告を胸にしまい込んだ、あの地はテオドールが居る何もしない方が良いと判断したからだ、ルーベンスのダンジョンがローレンス辺境伯家へもたらす資金はかなりの物になっている、ヒロが動けば富みが転がって来るし治安も保証される。
エードナーは次第にヒロの存在に惹かれていく。
ケントでは辺境伯領総てを治める事は無理な事だと思っていた、この先魔人や魔物が暴れたらどれだけの被害がありどれだけの人々が命を落とすのか?ケントが領主では心元無かった。
まだ魔物の1匹も倒した事が無い温室育ちのケントでは┅
メリーヌは時間が経つに連れ回復して顔色も良くなりリビングでくつろぎスライムが人と仲良く遊んでるのを不思議そうに見ていた。
「あのぉ?スライムって魔物ですよね?大丈夫何ですか?」
「この子は私がテイムして使い魔になったのよ、可愛いでしょ?」
「アンナ、可愛いと言ったらシロちゃんとドリィちゃんはスッゴク可愛いかったわ!」
「そうね!シロちゃんとドリィちゃんがうちに居てくれたらどんなに癒されたか。」
「なにそのシロちゃんとドリィちゃんって?」
「あら?あなたは知らないの?ヒロ君の相棒?ってか使い魔になるのかしら?」
「こんなに小さくて真っ白でフワフワしてつぶらな目が可愛いくて!」
「だから!何なの?」
「フェンリルって言ってたわ。」
「ええ、ヒロ君とサラさんもフェンリルだって。」
「フェンリルを使い魔にしたとは聞いたが神獣ですぞ、決して人間にはなつかないし冒険者等はフェンリルの素材だと一生遊んで暮らせるだけの価値があると挑むのじゃが誰も勝たぬ、伝説では魔国からの邪神を祓ったとある。」
「300年前の戦争ではそう伝えられてる、それにフェンリルはそう簡単に姿を現さない。」
「でも確かにフェンリルだったわよ、話しも出来て赤ちゃん言葉が堪らないの!」
「ドリィちゃんはグリフォンでサラさんの使い魔だって、シロちゃんと同じ様に真っ白で可愛いの。」
「ドリィちゃんの赤ちゃん言葉がまだ耳に残っているわ。」
「お母様はベッドで一緒に寝ると放さなかったからシロちゃんに嫌われたのよね?」
「嫌われてはいないわよ!シロちゃんと話して私と一緒に寝たら暑いからって言ってただけよ!マーガレットだってドリィちゃんを強く抱くから嫌われたのよね!」
「違います!」
「グリフォンが真っ白?それも驚きです。」
「そんなに可愛いかったの?それに話せる?だったらその小さな姿は本当の姿じゃ無いわね!家に入る為に小さくなったのよ、本当の姿はきっと大きくて強い筈よ。」
「ええ、大きくなった姿も素敵だったわよ、あんなに大きな体がこんなに小さくなるからフフッ」
「銀色の毛が光って綺麗だったわ、ドラゴンみたいに大きくて、でも小さい姿の方が好きだわ。」
「話せるとは驚いた、坊が何かしたのじゃろう、フオホホツ、愉快じゃな神獣を使い魔にするとは、しかしグリフォンが真っ白になるとは┅」
「まだまだ何か有りそうですな?テオ坊だけでは無くサラも何かしてると思ってたが良い。」
「そうね、鉱脈にデスドラゴン、神獣にハイエルフの子達、他にもある筈よ。」
「あのぉ?私達がルーベンスヘ向かう途中で盗賊に襲われた時に2人の冒険者に救われたのです、遠くで姿は見れませんでしたが凄い魔法で30人以上の盗賊達を一瞬でやっつけてしまい何も言わずに立ち去りました、それって?」
「ウーン、それは多分テオ達だわね、関わると時間と身分がばれるから何も言わずに行ってしまったのよ。」
「その後も山道には魔物が居なくて居ても襲っては来なかったですね。」
「テオちゃん達が通ると魔物は逃げて近寄らないわ、それにデスドラゴンを山道の谷底で退治したんでしょ?尚更魔物は出ないわよ。」
「テオの覇気と威圧は魔物逃げる」
「そうだったのですか┅私はずっとあなた達のお仲間に知らず知らず助けられていたのですね?」
「縁があったのよ、それで?これからどうするの?」
「わかりません┅総て無くして無一文です。」
「良かったら貴女もフォレストへ行かない?」
「フォレストへ?」
「貴女ならフォレストの為になると思ったから。」
「私は何もできません、学院も中途半端に辞めて┅」
「大丈夫よ?貴女は知らないでしょうけど凄い力を持ってるのよ。」
「私がですか?」
「そう!それに貴女が望めばもっと凄い能力になるの。」
「そんな┅考えてみます。」
「そうね、でも絶対に行くべきとだけ言っておくわ。」
「アンナ?それは本当なの?メリーヌは学生で世の中の事は余り知らないのよ?ここで預かってもっと大人になってからが良くて?」
「元貴族だとそう簡単に生きては行けません、私も元貴族ですから良くわかります、神官をしてどうにかなりましたが人の目は冷たかった┅頑張ったから出来たのです、メリーヌが大人になってから苦しむのはどうかと?」
「そうよ、メリーヌちゃんは美人だから直ぐに悪い奴等に騙されたりバカな貴族とかちょっかいするわよ!能力があるならそれを育て強くなって世の中に出るのが絶対に良いよ。」
「オオー?マーサが一人前の事言った」
「テオの所はきっと貴女の可能性を育て幸せになれる道を教えてくれる、私達と来なさい?」
「┅返事を待って下さい、決心が┅」
「良いわ、待つけどなるべく速くしてね、予定を考えるから。」
人数が増えた分時間がかかる、速く行ってヒロ達を手伝いたいと言う思いに駆られる。
皆が同じ様に速く行きたがっている。
魔人の事もあるし、魔物の巣窟だと言うフォレストの地を2人だけで整備しているのが心配だった。
いくら強いと言っても数で来られたら┅
会えない時間が長ければ心配しか湧いてこない、心から慕う気持ちが強くなる程に┅




