アンナ達 其の2
ハーベルンの町からオルレア迄の道を決めるのにアンナ達は揉めに揉めた。
台地のなだらかな道か?また山道をかけ行くか?
セバスとギルバートはリチャードのこの馬車なら山道より速く行けると説く。
アンナやマーサとウルティマは近道が速く行けるに決まっていると┅
マリアはどちらでも?
確かに台地を走れば普通の馬車より速く行けるが村や宿場町が有る分トラブルも有るのでは?
山道は近道だが魔物も多く出る。
これから先は魔物も狂暴な物になる事を考えれば速さはどちらか?
『告 ゴーレム馬車の手入れを進言します 脚回りの点検が必要』
「リチャード?どう?脚回りに問題有る?」
❨はい、車軸に違和感が少し❩
「セバスさん、車軸を見てもらえる所は無いかしら?」
「うん?故障かな?」
「いえね、フィルが点検しなさいって言うからリチャードに聞いたら車軸がおかしいらしいの。」
「ほうっ!フィルとはそんな事も解るのか、ならば従うに限る。」
「そうだな、あれだけの速さだから点検はしなくては。」
「そうね┅やっぱり村や宿場町が有る道が安全に速く行けるわね、馬車の面倒を忘れてたわ。」
「ううっ、仕方ないのね、山道が面白そうだったけど。」
「マーサ考え子供、大事な事速く追い付く」
「これからが永い道のりだから確実な方が良いわね。」
「じゃあセバスさんとギルバートさんに馬車の手入れをお願いして私達は買い出しに行きましょう、セバスさん達が欲しいのも頼まれますよ?」
「儂らのは良い、今度は永いこと馬車の中だから考えて買い出しに行くと良い。」
「承知しました、では待ち合わせはこの広場で。」
「ゆっくり楽しんで下さい、大きな町はここから先は無いから。」
ウルティマは先程からずっと頭を抱えウンウンと唸っている。
「ウルティマちゃん?どうしたの?」
「フィルにテオ達の事聞いてる返事無い!」
「ああそれで?諦めなさいフィルは答えないわよ。」
「どうして?」
「彼女は必要な事しか告げないし必要な事しか応えないの、わかった?」
「ズルイ知りたいテオ達の事」
「今頃はフォレストに向かって飛んでるわよ!私達が会えた時は必ずマリアンヌ様が住んでた所にいる筈。」
「飛んで行く!」
「ダメーッ!絶対迷子になる!ワイバーンやら他のドラゴンやらと揉めるに決まってるから。」
『告 ここからフォレスト迄の間にワイバーンの群れが何ヵ所かあり ドラゴンも山あいに数匹確認しています』
「ほら!他にも空を飛ぶ魔物はいるからやめなさい!」
「ウルティマちゃんはまだお子ちゃまだから私達と一緒が良いの!」
「マーサうざい」
「ウルティマちゃんもマーサちゃんもほら!お菓子のお店があるわよ?行かないの?」
「行くマーサ置いてく」
「私も行くわよ!」
4人で賑やかに町を楽しんでいると懐かしい人に出会った。
メイドのエマがお辞儀をして手を振る、
「アンナ先生!マーサちゃん!お久しぶり!」
「エマ!どうして?この町へ来てたの?」
「はい、ヘレンさんとガードナーさんがこの町へ行くので私もついてきたの。」
「ガードナーさんは騎士団を辞めたのは知ってたけど?」
「ガードナーさんの実家がこの町で農場とお店をしていてそこで働いてます。」
「うわ~お久しぶり、エマさんはお嫁に行かなかったんだね?」
「私は相手がいなかったから┅」
「どう?もう慣れたの?」
「実は┅ガードナーさんがお父様とは馬が合わないとと言うか、仲があんまり。」
「そう、ヘレンさんとは?」
「ヘレンさんはしっかり者だからガードナーさんを上手く操ってますけど、いつまで持つか?」
「そんなに?」
「ガードナーさんはいつも言ってるんです、テオ様達と一緒に居たかったって。」
「ガードナーさんテオとは仲良しだったわね。」
「ヘレンさんもテオちゃんの赤ん坊からだもんね┅」
「2人ともテオの所が良いのかな?」
「それはもう!私だってお許しがあれば一緒にと思います!」
「そうね┅あのね、テオがフォレストで領主になるのが決まったの、オーギュスト様から貰ってね?かなりの領地だけど魔物の土地になってるみたいで、だからもし良かったら暫くして来ると良いわ。」
「私だけでも?」
「ええ、オルレアの私の家へ来ればテオが転移ゲートを作ってるから安心して領地迄来れるから。」
「私、行きます!必ず、こちらの事をキチンと片付けてから。」
「そう、待ってるわ、テオもサラも喜ぶわ。」
「多分、ガードナーさん達も一緒に!」
「ええ、でもちゃんと話してからにしてね?」
「それはもう、ヘレンさんが決める事ですから。」
笑いながら話して別れると急ぎ足で行ってしまった、嬉しかったのだろう。
見た所メイド職ではなく下働きなんだと身なりから解る。
農場の下働きならばかなりの労働だろう。
給金も良く疲れない仕事をやって来た者には苦労が多いと思われる。
新しい領地には気心が知れた者が多くいたが何かと良いに決まっている。
アンナは3人が来てくれたがテオも助かると考えて誘った。
もしかしたら┅
アンナはエド、執事のエードナーへ手紙を書いて、あの屋敷から出された人達の中にテオ達の領地に来たい人達がいたらオルレア子爵邸へと来れば、と伝えてくれる様に頼もうと決めた。
アンナには自信があったのだ。
フォレスト領地は必ず素晴らしい領地となりローレンス辺境伯領の中でも一番の領地となる事を。
何故ならあのテオが造るのだから。
「アンナさん!アンナさん!」
「センセ!もう買い出し終わったわよ!」
「あっ、と、ごめんなさい、考えてたら。」
「良い時間おじさん待ってる」
「そうね、行きましょ。」
広場ではゴーレム馬車に人集りが!
かくも珍しい様子の馬車を人々がワイワイガヤガヤと見物してギルバートは不愉快な顔で睨んでる。
皆で謝りながら乗り込むと颯爽と走り出す。
人々が驚きと歓声で見送った。
セバスはいつものポーカーフェイスでさりげなく手を振る。
みるみると駆けて行く馬車はあっというまに小さくなって行ってしまった。
「セバスさん?どこか故障してた?」
「いや、故障など無かったが車軸に色んな物が挟まって重くなっておった、テオ坊が造った車軸はミスリル合金で滅多な事では壊れはしないようだ、幾重にも重なった合金の板があって揺れが制御されてた。」
「ドアーフの職人が驚いてたぞ、凄い細工の馬車だと。」
「やっぱり┅だから脚回りは確認しないと駄目ね、夜通しあの速さで走るんだから何でも巻き込むわよね┅」
「私もうっかりしてた、ゴーレム馬車の凄さに圧倒され肝心な事を忘れてた。」
「全く、浮かれてたな、リチャードとフィルの事にビックリし通しで、ハハッ」
「私は馬車の事を詳しく無いからお二人にお任せします。」
「リチャードの事はアンナさんに任せるが馬車事態の事は私達が見ましょう、リチャードもおかしな所は気付くでしょうから。」
❨お詫びします、具合が悪いのは直ぐに言いますから❩
「頼んだぞ。」
「それで?どこまで持つのかな?」
「フィルの手助けもあって魔石の持ち時間が随分と延びたので10日程は走り続ける事は可能ですね。」
「10日も┅しかし、儂らが持つのかな?」」
「フフッ、そうね、5日が限度かな。」
「じゃあ5日置きに休憩をしましょう。」
「リチャード!5日したら休憩だから場所があったら停めてね?」
❨了解、事が無ければそう致します❩
「お願いね!それで、セバスさんあのねメイドだったエマに会ったの、ガードナーさん夫婦と一緒だって。」
「ガードナーは確かにあの町外れの農場主の倅だったのう。」
「そうなの!それでね┅」
さっきの事をセバスとギルバートへ話してからエドへ手紙を送った事も話した。
領地には人手が必ず必要になるからと話すとセバスは無理に誘う事は無いのでは?と言う。
人外魔境の土地となった所へ果たして?
もっと時間を置いてが良いのでは?と言う2人にアンナ達は笑いながら直ぐに領地は凄い事になると自信を持って話すのだ。
セバスとギルバートはまだ知らない。
テオの本当の能力を。
そして、自分達が授かった能力の事も。
人外魔境ならばテオや自分達は超越者としての楽園を創造できる。
人が居ないからこそ出来る夢が実現可能なんだと確信していた。
オーギュストが悔しがる様を必ず見る事になると。
アンナとマーサはフォレストで薬の研究と酒の開発を考えていた、マリアは回復魔法と聖魔法を極めてから他の魔法を使えるようになりたいと、ウルティマは出来ればテオの嫁になれたら?
龍人と人が?
各々の思いは既にフォレストの地にあった。
目的の無い旅、冒険者としての旅ならば全く違うのだがひたすら急ぐ旅にトラブルは迷惑千万な事でその点テオ達はトラブルの多い旅をしている。
それもリチャードのお陰なのだが。
5日間夜通し走り障害物を蹴散らしては進む中、馬車の中は家と同じように食事も風呂もふかふかのベッドで眠れる旅にトラブル事態起こり様がない。
何回目かの休憩地でやっとトラブルみたいな事に出会う。
広い草原地で林が少し有る場所にリチャードは停まった。
川が流れ見渡すと真っ直ぐな道が台地を織る様に伸びる。
草っ原にテーブルを広げ魔道コンロで料理して川で洗濯等も。
風呂のお湯で洗濯してはいるがタオルケットやバスタオル等はさすがに広い川で洗うのが良い。
アンナは林が気になり見てるとスライム達が集まり飛び跳ねている。
「ねえ?ちょっと?スライムが暴れてるわよ。」
「スライム?ほっといたら?」
「なんだか一匹のスライムに攻撃しているみたい。」
「仲間割れかな?」
少し小さなスライムに10匹のスライムがぶつかっている。
アンナは何を思ったのか風魔法でスライムの群れを吹き飛ばした。
虐められていたスライムがアンナの側へ近寄ると虹色の姿へ変わった。
「わぁ!見てみて!綺麗なスライムになった!」
「どれどれ?」
「ホント!綺麗なスライム!」
「なんだかカワイイわね┅ちょっと抱いて┅」
アンナが手に取り抱きあげるとスライムは安心した様に身を委ねた。
「アンナさん!召喚してみたら?」
「えっ!出来るかしら?」
「虹色でカワイイじゃ無いですか?」
「そうね┅やってみるか。」
イメージだったか?そう言って念じてみるとスライムが魔法陣に乗っかった。
名前┅名前?
アイリーン?そうねアイリーンよ!
「あなたの名前はアイリーン。」
白く光りグニュグニュと伸び縮みするとふた回り程大きくなりピタンとアンナの腕に飛び込んできた。
『解 スライムの希少種 レインボースライム 知能が有り魔法を使う 魔力の高いスライム アンナによって名を持ち進化 ゴールドスライムになりました』
ゴールド?今はまだレインボーだけど?
『解 通常はレインボーか青、又はピンク 力を出すとゴールドへと変わります
魔法を教えると全属性が使えます』
「なんか凄いスライムみたい。」
「アイリーンちゃんか、カワイイですね。」
「マーサより賢い」
「グヌッ!スライムに負けないわよ!」
「仲良くしてね、はじめての使い魔だから。」
「この子も進化の実を食べたら話せるかな?」
「それは無いわよ┅って?有りかも?」
「楽しみ」
「ウルティマは好きみたいね?」
「カワイイ」
アイリーンもウルティマの匂いが好きなのか?ドラゴンの気配に惹かれるのか?纏わり付いてる。
このアイリーンはのちに重要な存在になるとは誰も思いもしていなかった。
ヒロと出会うその時まで。




