道標
「ねぇ?命と魂って、同じなの?マリ
アンヌ様から現れたあの蒼白いのは?」
「前世の大学で習った事なんだけど、命と魂って別で、魂は生物の肉体に宿っていてね?生き物を助けたり励ましたり、自分自身とは違う別物みたいな存在かな?命ってのはそのもズバリ、心臓と同じで死んでしまう物、無くなってしまう物だから、命は実体があるけどタマシイは実体がないものだね、心は思考の中にある物かな?命じゃ無くてタマシイの方だと思うよ
不老不死は命と魂が永遠になるって力かな
母様のあの蒼白いのはタマシイだと思うんだ、肉体から放れて別の命を探しに旅に出た、亡くなる前に母様は言ってたんだ私も転生するって」
「どうして不老不死を付与しなかったの?」
「しようとしたんだ、でも断られた。」
「奥様らしいわ┅」
「どうするの?これから?」
「母様の育った所ヘ行くよ、凄く遠いらしいけど行って母様が住んでた家を探す。」
「この屋敷や町から放れるのね。」
「主様の行く所、付いて行きます!どこまでも!」
「なに言ってるの!みんな同じよ!みんな一緒、テオちゃんとずーと一緒よ!」
「セバスさんが言ってたわ、もうすぐ町からエドさん達が来るって、それに王都からも来てるから皆な集まってから、お葬式するんだって。」
「うん、王都からだから数日掛かる、その間、旅の支度とかしとこうと思ってる、みんなは?」
「私とマーサは多分一緒には行けないわ、後片付けに時間が┅」
「私も行けない┅孤児院とか治療中の人達とかの処置があるから┅」
「後から一緒に来ると良いさ、場所は知らせるから。」
「任せて!私がちゃんと知らせるから!」
「セバスが場所を知ってるから聞いたら良いよ、俺も知らないから教えてもらうんだけどね。」
「なんだ?そうなの?」
「でも、母様の育った土地は知ってるみたいだけど、育った家は知らないみたいだから、探さないといけないんだって。」
「どれくらい遠いの?」
「さあ?凄く遠いってだからなぁ┅」
「まぁ、やる事は決まったからサッサと片付けてみんなと合流しましょ?」
「サラ?ウルティマ?テオちゃんの事、頼んだからね。」
「まだ早いわよ!支度しないと、それに、オーギュスト様に許しを頂かないと駄目でしょ?」
「許しは要らないよ!出て行くって言ってあるし、母様の遺言だから!父様には報告と貴族籍の廃籍、ローレンス家からの徐籍をしてもらうだけだよ。」
「徐籍!貴族位の廃籍?本気なの?貴族籍の廃籍は王宮の許可がいるのよ?徐籍って┅」
「そんなの知らない!父様に任せる、俺は只の冒険者になる、だからテオドールの名前も棄てるんだよ。」
「ヒロ・タチバナってなるんだよね?」
「前の名前に戻るだけさ、だから此処を出たならヒロって呼ぶんだよ!テオはナシ!わかった?」
「「「「「「了解!」」」」」
湖畔で話してからみんなは支度を始めた
俺は森の池へと向かった。
妖精達や精霊達、精霊樹とお別れの話あったから
「みんな!俺はこの地を出て旅に出る、だからお別れだよ!暫くは帰って来ないかも知れないんだ、花は見に来るよ。」
«私達はテオと一緒だよ?実体がないものフフフッ»
«テオの周り?側にいつもいるのよ!»
«お別れは精霊樹だけだもんねぇ»
【テオよ!儂は此処で待つ だが、これを渡そう】
なにか塊が飛んで来た
【それは儂の種 分身だ!落ち着く場所に辿り着いたら植えると良い この場所と同じように精霊達が落ち着く場所になる】
「わかった、ありがとう、必ず植えるよ。」
【お前は滅んではならん存在 くれぐれも魂に刻んでおくのだ 肉体は滅んでも魂が滅ばぬ限り肉体は得られるからな?】
「そうなんだ┅┅肉体は得られるのか┅」
【そうだ!魂は別だからな!お前は転生者だから判るだろう 肉体と魂が別物だと】
「統べて納得したよ!赤ちゃんの頃からの疑問がね!中身と姿が違うのが違和感だったから、転生はそんな物だと思ってた」
【滅ばぬように用心だけは忘れるでないぞ!】
「ありがとう!精霊樹、色んな事教えてくれて感謝します、あなたのおかげでこの異世界を生きて行ける力と知識を得る事に感謝しか有りません、必ずまた来ます。」
【よいよい 命の恩人だ この先 何千年かの時を生きられる 面白い事も見れるだろう 儂も感謝してる 精霊達もな?】
「さようならは言わない、また、逢いましょう!」
森を後にしてセバスを探した、屋敷は葬式の準備が済み静かになっていた。
母様はエドが運んだ棺に入れられ綺麗に化粧がされ生きてるみたいだった。
セバスはエドとミーリア母様に話してた、亡くなる時の様子を。
3人は俺に気付き沈痛な表情をして労りの言葉を掛ける、俺は構わずセバスに聞いた。
「セバス?母様の育った土地を教えて、その土地へ行くから。」
「あの土地へ?それはどうして?」
「母様の遺言だし、俺も行きたいんだ!この家を出てからの事を考えてたけど何も思い付かなかった、だけど母様が道標になってくれた。」
「道標ですか?」
「これからの俺の生きる道標を!」
「あの土地でしたら誰も居りますまい!今は人外魔境とも言われております、旦那様も見棄てられた土地、フォレスト領地、あの地域までは此処からだと速くても8ヶ月、普通ですと1年は掛かるかと。」
「遠いんだね?フォレストって、母様の前の名前?」
「はい、フォレスト侯爵家所有の土地です。」
「でも、母様の実家は王都の近くだよね?」
「フォレスト侯爵様は領地を幾つかお持ちで、あの土地はマリアンヌ様が気に入り、小さい時から学院ヘ行かれる迄、住まわれた土地です。」
「8歳まで?」
「いえ、3歳から12歳までです。学院をお出になり直ぐにローレンス家へと入られました、1度は帰りたいと┅」
「お葬式が済んだら、サラと一緒に向かうから承知してね?」
「そんな?そんなに早く行かれるのですか?旦那様がお許しくださるか?」
「許しなんて要らないよ?出て行くのは決定なんだ!母様がいないこの地にいる必要は無いし、俺の生き方もここでは出来ないから。」
「テオちゃん?貴方は家を出るってローレンス家と縁を切るの?」
「その事は父様に話します、前から決めてた事ですから。」
「テオ様?どうするのですか?貴方にはお嫁さんも要るし、そんな土地で暮らせるのか?」
「ははっ、それは大丈夫だよ、皆わかってくれてる、冒険者だからね?なんとかするのが主だろ?」
「そうですか┅今は成り行きを見させて頂きます。」
「テオちゃん?貴方が実家を贔屓にしてくれたのは感謝するわ、でも居なくなったら悲しむでしょうね。」
「色んな権利はタニアに任せてますから大丈夫ですよ!逆にお願いしますね?タニアヘの送金。」
「それは大丈夫よ!旦那様もタニアちゃんの事は大切に為さってるから。」
「その事はタニア嬢からギルドと商会の管理を任させて貰ってますし、旦那様からも言われております。」
「じゃあ大丈夫だね、セバス?簡単な地図を作ってくれる?」
「承りました、ギルバートにも手伝わせましょう。」
サラが母様の側から離れない、近寄り肩を抱く、思い出が走馬灯の様に流れる
幸せな日々があった
逢ってからもうすぐ12年になる
表が騒がしくなったのは亡くなってから一月近く経ってからだった。
オーギュスト一行は慌ただしく到着してオーギュストは直ぐにマリアンヌの部屋ヘと入ると力無く崩れ動かぬ妻の姿に只、泣いていた。
その姿は彼が本当にマリアンヌを愛していたのだと思えた、テオは複雑な気持ちだった、何故?┅生前にもっと会って話しをしたりしなかったのかと┅
エドは執事らしく騎士団員達の世話や領主邸の使用人、侍女達に指示を出していた。
明日はお葬式だからやる事はエドが取り仕切っていた。
オーギュストはマリアンヌと一夜を共にした。
昼近くに式は行われた。
町からも大勢の人達が参列して知らない貴族達も来ていた。
式が終わりそうな時にざわめきが起きた。
煌びやかな馬車?金ぴかの御宮車が屋敷の前に停まった。
出て来たのはルーデンス王国、ネルソン国王だった。
国王はズカズカと参列者を分けて入って来ると棺の蓋を外しマリアンヌを見た。
「オーギュスト?お前に言った筈だ!マリーの容態がおかしくなったら報告しろと!このザマはなんだ?死んでしまってるでは無いか!何故死んだ!何故だ!」
涙でぐしゃぐしゃの怒った顔は悔しさに満ちていた。
「ネルソン!俺も知らなかったんだよ?病気じゃ無いと聞かされていた、いつもの疲れだとばかり┅知っていたなら駆け付けてたさ!まさか亡くなるなんて┅」
「俺も会いたかった、最後の前に一度だけでも会いたかったよ┅」
力無く項垂れ国王はマリアンヌの手を取り顔に手を当てて呟いて話した。
「マリー、お前はいつも私から逃げる┅いつも手に届く所に要るのに届かない┅今でもあの眩しい姿が目に浮かぶ┅お転婆マリー┅私が付けた名を好んで使っていたなぁ┅残念だ、ただただ悔しい┅」
「ネルソン?俺も同じだよ?こんな事なら町でと思ってしまう、だがこいつは願として此処を動かなかった、マリアンヌにとって此処はそんなに大切な所だと今でもわからん。」
「オーギュストよ?此処の、この場所がどう見える?私には判る!ここはマリーが育った家に似てるからだ!場所も同じように湖があり森に囲まれてる、お前は行った事がないから判らないだろうが、何故聞かなかった?何故話しを聞いてやらなかった?それがお前の後悔しか無いだろう!オーギュスト!お前は大バカ者だ!」
「それは┅」
「マリアンヌの子がいただろう?どこだ?」
「セバスティアン!テオドールを!」
呼ばれて中へ入った。
「おおっ、おまえがマリアンヌの子か?」
「はい、テオドールです。」
「顔を!顔を見せてくれ!なんと!マリーに似てる┅目元がそっくりだ┅口元も良く似てる┅綺麗な顔をしている┅」
「私は悔しかったよ、もっと早くテオドールが産まれていたらと┅」
「お前はどうするつもりだ?息子だぞ!マリーの子なんだぞ!」
「ずっと考えていた、どうすれば良いかを、養子に出すか、学院で貴族の娘とくっ付けるかとかな?三男なんだぞ?例えマリアンヌの子だとしても貴族の三男に道は無いだろう!」
「確かに┅だが、他に何かあっただろう?」
「発言、宜しいでしょうか?」
「うん?発言を許すぞ。」
「ありがとうございます、8歳の折、父上に申し挙げた事が有ります!私は家を出ると、ですから私の貴族籍とローレンス家除籍をお願い致します!遺言でもある母が育った土地へ行く事にしました、だから父上のご心配も気苦労も要りません!前から決めていた事です。」
「ほう?オーギュストよ初耳なんだが?」
「前に学院行きを言い渡した時にこいつは言う事は聞かぬと言って家を出ると言ったんだ、だが!籍を抜く等と戯けた話しは初めてだ。」
「テオドールと言ったな?お前は貴族を捨て辺境伯家も捨て1人で生きて行くと言うのか?そして、マリーも許したと?」
「母が言ってました、貴族等に囚われず自由に生きなさいと、そして、フォレストの地ヘ行きなさいと、母は私の道標です!」
「はははっ、そうか道標か!オーギュストよ、お前よりマリーの方が判っておったな!」
「ぐぬうっ、テオドール!お前はそれで良いのだな?」
「あのフォレスト領は辺境伯領の一部だな?任せたらどうだ?三男には適任じゃ無いか?」
「あの土地は棄てた土地だ、魔物の地に成り果てた、マリアンヌがいた時とは違うんだ、人にはどうにもならん!」
「それでも良いでは無いか?養子だと何だと考えるよりマリーが遺言を残した様にすれば?」
「わかった、許そう、だが籍の事は保留だ!国王であるお前にも係わる事だからな?」
「貴族籍は簡単じゃ無い、だが要らぬと言うならお前が廃籍すれば良い、いつでも出来る、家の事は知らぬ!お前が決めろ。」
「それは後で考える、今は出て行く事は認めよう。」
「ありがとうございます。」
「テオドールよ!いつか私に逢いに来るが良い、待っておるぞ!」
国王はマリアンヌに一輪の花を置き颯爽と去った。
残された人々は呆気に取られてたが貴族の多くは慌てて国王の後を追った。
棺はローレンス家の墓地がある領都の町ヘと運ばれた。
母様の実家、フォレスト侯爵と侯爵妃が領主邸ヘと到着したのは棺が運ばれてる時だった。
母様が墓へ埋葬されたら出立する。
母様が育った土地フォレスト領ヘと。




