黒づくめの人達は
黒づくめさん達の正体がやっと書けた。
破落戸達がルーミアの計画を全部バラすのに、それなりの人間が死んだ。
血を吐き、身体中が切り刻まれた憐れな骸を見ながら、黒づくめの男達も覚悟を決めた。
「ラスティック国の諜報部員と見るが、間違いないか?」
ハロルド、と呼ばれた青年が、黒づくめの男達を見る。
さっきまでいた、赤紫の髪をした華奢な騎士と同じ髪をしているのに、ハロルドの存在感は薄い。
意図的に気配を消し、相手の視界に入りながらそこに居る気配を感じさせない。
諜報部員としての格の違いを見せ付けられているのだ。
「そうです」
覆面を外しながら、国に戻れないだろう、そんな諦めにも似た感情が脳裏をよぎる。
「では、取り引きをしないか?」
突然の申し出に、一瞬頭が追い付かない。
「取り引き?」
「そう。悪い話じゃないと思う」
ハロルドから持ち掛けられた取り引きは、これ以上ない程、有難いものだった。
「リサーク殿下はラスティックの新国王として即位していただく。もっとも、その首にはこちらが握る縄が付くが、どうだ?」
「願ってもない事です。何故、それ程までに主君に好待遇を」
ハロルドの提案に、黒づくめの男は疑問を持った。
「嫌なら断り、此処で死ね」
「ち、違います。今提案して頂いた事は、我らばかりに利があるので……」
必死に首を振り、アレキサンド王国の得にならないのでは、と訴えた。
「利はあるよ。邪魔な存在をそっちで引き取ってもらうから」
ハロルドの話を聞いても、男は直ぐに理解できなかった。
だが、断るなんて有り得ない厚遇。
「その取り引き、受けさせて下さい」
破滅へと転がりそうな祖国を憂い、我欲を剥き出しにしている王と王太子を糾弾しようとしているリサーク殿下。
この取り引きを受ければ、アレキサンド王国に首を押さえ付けられるが、祖国を救える。
男は頷き、1番後ろに立つ者に目を向けた。
後ろにいた男が、ゆっくりと覆面を外す。
「私からも頼む」
「初めてお目に掛かります。ラスティック国の第二王子、リサーク殿下。私は、ラリマー宰相の部下、ハロルド・ガーネット子爵と申します」
優雅に挨拶をするハロルドを、リサークはしっかりと見詰めた。
今日だけ少しだけ早めの更新です。




