そして役者達が揃い始める。
シルヴィーとシンシアの会話は書いてて楽しい。
「カインが見たら目の色を変えて、知りたがりそうな魔法ですね」
華奢な護衛が感心しながら結界のドームを見た。
「まぁ、あの天才錬成士のカインが。教えて差し上げたいですが、これはバロス王家の血筋にしか使えないと聞いた事があります」
もともとバロス王家は強い魔力を持っている。近年、魔力の循環不全のせいで強い力を使えるものが少なくなっていたが、循環不全を克服したシンシアは本来の力を取り戻している。
「それでも、馬車から出ない、とあれ程お願いしたのに」
「あら、馬車からは出てませんわ、一応」
確かにシンシアは馬車からは出ていないが、姿を見せている。
「……とりあえず、転移します」
すっぽりと被って顔を隠していた冑を脱ぎ、シルヴィーが足元に複雑な魔法陣を展開した。
結界の中では破落戸や黒づくめの男達が、護衛騎士が少女であった事に目をむいて驚いているが、知った事ではない。
「馬車や馬はどうするの?」
シンシアがシルヴィーに問い掛けると、森の中から別の騎士団が現れた。
「馬車や馬は私達が……」
アレキサンド王国騎士団の制服を着た一団の出現に、破落戸や黒づくめの男達が慌て出したが、ドームから出る事が出来ない。
「もし、あんた達の雇い主に会えたら言っとけ。阿呆みたいに杜撰な計画だって」
荒々しく冑を取った、大柄の護衛がにやにや笑いながら破落戸達を挑発した。
「ハザック、計画は杜撰だが、実行されてたら大問題になってたから」
シルヴィーも呆れてはいるが、警戒は緩めていない。
「冒険者ハザック。ギルドマスターが裏切ったのか」
黒づくめの男の1人が叫ぶ。
「裏切る?ちげーよ、こっちの計画にあんた達が嵌められたんだよ」
「ハザック、置いてくよ」
シルヴィーは既に黒づくめの男達に興味がないのか、スタスタと魔法陣の中に入っていた。
転移魔法は高度な魔法なので、使えるものは少ない。だが、シルヴィーはなんて事ない魔法の様にあっさりと、山路に居た者達を全員、別の場所に移動させた。
何処かの室内訓練場の様な場所だが、人が数人いるだけの、広いだけで何も無い。
「本当、シルヴィー様って規格外だよな」
「素晴らしかったわ。少しもブレないで移動させてしまうんですもの」
ハザックとシンシアが和気藹々と話していると、最後まで冑を取らなかった護衛がゆっくりと冑を脱いだ。
さて、追い込みを頑張らないと。




