馬車が襲われたんですが……
シンシア王女って凛と咲く、百合みたいな方です。
「何を騒いでいるのかと思えば……。私は一刻も早くバロスの父上のもとに行かねばならないのです」
「シンシア王女様」
全身鎧で固めた護衛達が馬車に駆け寄った。
「へっ、あんたを誘き出す嘘だって、気が付かなかったのかよ」
破落戸達がゲラゲラと笑い出した。
「嘘、ですか」
「そうさ、学園内じゃあんたを殺せねーからよ」
ギラリ、と切れ味の悪そうな剣を突き付けた。
が、怒るそぶりも慌てるそぶりも見せず、ベールの少女はすんなりとした姿勢で破落戸達を見ていた。
「依頼主は?」
「へっ、誰が喋るかってんだよ」
「私を殺せば金が貰えるんだ、と言っていた様ですが、愚かですね」
「なんだと、俺達を馬鹿にしてんのか」
「一国の王位継承権を持つ者を殺して無事ですむなど、何故思えるのです。お前達の依頼主はお前達に罪を着せ、処分するでしょう」
普通に考えても、人を殺して無事で済む筈がない。
まして王位継承権を持つ者へ剣を向けるのは、自分の首に剣を押し付けているのと同じだ。
「嘘だ。あの女は褒美にたんまりの金と、爵位をくれる、と言った」
心なしか、破落戸のリーダーらしき男が焦っている。本気で信じていた様だ。
「爵位を?お前、筋金入りの馬鹿だ」
護衛の1人が、心底呆れた様に言う。
「陛下が承認しない爵位なんて、無いと同じです」
シンシアの声に破落戸達の眉が吊り上がる。
「シンシア王女様、このままでは埒があかないので、場所を変えます」
「そうね。逃げられては面倒ですから、拘束結界」
魔法陣を描かずに、シンシアは護衛の者達以外、全てをドーム状の結界に閉じ込めた。
破落戸達は何処まで行ってもそんなもんなんだろうな。




