色々な事に巻き込まれてます。
シルヴィーはどんどんいろんな事に巻き込まれてます。
「待っていたぞ」
エントランスにはジルコン公爵本人とリーリウムの家族が全員で出迎える。
シルヴィーはダドリーの手を借りて馬車から降り、カーテシーをした。
「ご招待に甘え、不遜の身ですが」
「シルヴィー嬢。挨拶は大切だが、堅苦しいのは好かんよ」
ジルコン公爵がまた、ポンと肩を叩いた。
「シルヴィー嬢、妻のカノコです」
リーリウムが自分の隣に立つ、華奢な女性の肩に手を置く。
「初めてお会い出来ました光栄に、心よりお礼を申し上げます」
淡いピンクの髪に髪よりも濃いピンクの瞳をした美しい夫人が、細部まで洗練されたカーテシーでシルヴィーに挨拶をする。
「流石、リーリウム様の奥方様。全てが洗練されていらっしゃる」
うっとりとシルヴィーがカノコを見ると、頬を染め恥じらう姿は何処に出しても問題の無い、貴族令嬢そのものだった。
「シルヴィー様」
ダドリーがそっとレイモンドから預かっていた書類を差し出す。
「ジルコン公爵様。父、レイモンド・ロードライトより預かってまいりました」
書類の中身は知らないが、ジルコン公爵に渡して欲しい、と託された手紙を差し出すと、ジルコン公爵は嬉々として開封し、中を確かめると、リーリウム達に笑顔で頷いた。
「リーリウム、ロードライト伯爵は了承したぞ。これで問題はない」
「素晴らしい。ロードライト伯爵には後日、私達夫婦で礼を申し上げます」
なんの事かわからないシルヴィーが、そっとダドリーを見る。
なのに、ダドリーはただ頷くだけで、何も教えてくれない。
「ジルコン公爵様。父はなんと?」
「良き話を此処でするのは不作法だな」
「まずは一息ついてから、リリーとの手合わせを見せて貰おう」
内容を説明する気があるのか無いのか解らないが、エントランスで長話は流石におかしい。
「カノコ様が祖父の養女に……」
ティールームで一息ついたところで、衝撃の事実にシルヴィーは固まった。
「アーノルドは魔術学園で、わしの後輩で親しくしていた」
ジルコン公爵の話は嘘では無いが、半世紀近く前の話だ。
「前ロードライト伯爵に話を持ちかけた所、喜んでカノコを養女にする、と言ってくれたのだ」
爵位を父、レイモンドに譲った後、地方の領地で隠居生活を堪能している筈の祖父、アーノルドの決断はシルヴィーにとっては寝耳に水、の状態だ。
平民のカノコが王家からの信頼が厚いロードライト家の養女になれば、ジルコン公爵家に嫁ぐ事に異論を唱える者は、皆無だろう。
それよりも、この養子縁組でロードライト家はこの国に数家しか居ない公爵家と縁続きになった。
ジルコン家の縁者である、と嘘を吐いているジルコニア一族に対しての牽制にもなる。
「外堀、埋めてきてますね」
「なんの話だね」
ジルコン公爵がにやっと笑う。
ダドリーが馬車の中で言っていた意味を理解し、シルヴィーはちょっと息を吐いた。
「いえ。カノコ様のような素敵な方が義理とは言え、叔母様とお呼びできるなんて、素敵です」
思惑は様々あるが、カノコ達の幸せの手伝いができる事は素直に嬉しい。
「私達もシルヴィー様のような、素敵な姪が出来て、嬉しいです」
「リーリウム叔父様、カノコ叔母様、どうぞ、私の事は呼び捨てで」
身分が上の方に様付けで呼ばれる事に抵抗があるシルヴィーからしたら当然の発言なのに、2人は本当に嬉しそうに笑う。
「リリーとユーリの事も呼び捨てにしてね」
カノコの純粋な笑顔が、何故か物凄いプレッシャーに感じるが、シルヴィーも笑顔で頷いた。
その内王家とも親戚になったりして。




