決闘します?
ジェフリーとルーファスがキレました。
「僕達の友人であり、ウィリアム殿下の参謀でもある彼女を侮辱するなら、その実力、見せて貰おう」
バシッと2つの手袋を顔面に叩き付けられた学生は怒鳴ろうとして、声が詰まった。
目の前に立っているのはラリマー宰相の嫡男、ジェフリーとジェイド総騎士団長の令息、ルーファスで、表情は無いがもの凄い怒気で、立っていられないほどの恐怖で体が震える。
有無も言わせず、2人はシルヴィーを侮辱した生徒達の襟首を掴み、今出てきたばかりの訓練場に入った。
「もー、ジェフリー、ルーファス何処に……」
耳障りな声が尻窄みで消える。
ざわついていた他の生徒達も、2人の怒気に言葉を失う程だ。
「貴族なら決闘の作法くらい知ってる筈だ」
完全に腰を抜かし、一塊になって震える生徒達をジェフリー達は冷ややか見下している。
刃を潰した練習用の剣しか持っていないのに、切れ味鋭い実戦用の剣のような恐ろしさで、震える生徒達は今にも泣き出しそうだ。
「無理ですよ。陰口を叩くしか能が無い者が礼節を学んでいる筈、無いですから」
冷ややかなシルヴィーの声に2人がチラリ、と目を向ける。
「友人である君を侮辱した奴だ。庇うな」
ルーファスの目には殺気が滲む。
「庇う?違います。こいつらが何を言おうと、気にしていないだけです。どうせ、もうすぐ学園から居なくなりますから」
なんの話だ、とジェフリーがシルヴィーを見てから、納得した様に頷く。
ガクガク震え、声すら出せない生徒達にシルヴィーは微笑んでみせた。
「ナタリア先生は、学園長権限で、来月の試験で在学の基準を満たさない者達は、退学を宣告するつもりだと思います」
「へぇ、どっちの理由?」
「両方です」
意味が分かっているのは、シルヴィー達3人だけで、当事者達が怯えた目でシルヴィーを見る。
「なら、叩き潰しても問題はない」
「それをやったら、暴力を振るわれた、と言い出しますよ」
「言えぬよう、決闘の申し込みはした」
「作法を知らないお馬鹿さんには、通用しませんよ」
「貴族の男子なら知らない筈が無い」
ルーファスの良く通る声に、訓練場に居る生徒達が頷く。
「だから、さっき言いましたよね。貴族としての作法も義務も知らず、特権を貪り陰口を叩くしか能が無いって」
シルヴィーが呆れた顔で、ルーファスを見る。
「貴族の者達が持つ特権は、義務を果たす為のものであって、貪るものでは無い」
「国や民、領地、領民を守り繁栄させるために貴族は居る」
ルーファスとジェフリーの言葉に、多くの生徒達が頷き、感銘を受けた事だろう。
「そうです。ですが、欲に溺れ、堕落した者は怠惰を愛し、他者を貶める事に腐心しています」
今、シルヴィーが語る存在に、多くの生徒達の目が、訓練場でへたり込んで居る者達に向けられた。
「後は貴方方次第です。自分を見つめ直し、努力を惜しまず自分を変えられるか」
厳しい言葉だが、問答無用で切り捨てないだけの温情はある。
それを受け取るか、拒絶するかは本人次第だ。
シルヴィーは怯える生徒達に背を向けた。
逆恨みしたなら、切り掛かってくるかもしれないのに。
だが、へたり込んで居る者達には、その気配が無い。
「逆恨みをする根性も無いのか」
呆れ果てた、とでも言いたげなルーファス。
「ルーファス、少しは真面な部分があった、て言ってやれよ」
ジェフリーは砕けた口調だが、目は冷たい。
「これからの事を真剣に考えないと、破滅の一択だしな」
「冬の試験が楽しみだ」
「ええ。人は変われます。自分の罪と向き合い、真摯に努力すれば、時間はかかりますが必ず立ち直れるものです」
ふと漏らしたシルヴィーの言葉に何を感じたか判らないが、へたり込んで居る者達の嗚咽が漏れた。
ウィリアムの側近は当然、腹黒さん達です。




