失恋しました。
攻略対象が失恋しました。
ジェフリーとルーファスは、訓練場で手合わせをしていた。
「予想はしてましたが……」
「ああ。でも、希望は捨てて無かった」
激しく剣がぶつかり合う音に紛れ、2人の声は他の者達には聞こえていない。
「隠さずに冷酷な決断や、策士の顔を見せてくれる程信頼してくれているから……」
「そう。いつかは俺の事も、男として見てくれるかもって思ってた」
ずっとシルヴィーだけを見ていたから、彼女の目が誰を見て、その心が傾けられているか知っていた。
それでも、一縷の望みに縋っていた。
が、失恋の痛みを紛らわせている剣の打ち合う音に紛れ、耳障りな声が聞こえた。
「ジェフリー、ルーファス、一緒にランチデートしましょうよー」
2人は聞こえないふりをしたまま、剣を打ち合わせながら、ヒソヒソ話した。
「ウィリアム殿下はピンクの猪、と仰っていたな」
「はい。シルヴィーは、ピンクの雪だるまと言ってましたがました」
「どっちが近い?」
「俺は、雪だるまの方が」
「そうか。僕は猪の方かな」
驚くほど、縦幅と横幅が同じの体型になったお花畑の阿婆擦れが、ぶんぶん手を振っている。
「僕は右に」
「では、俺は左に」
キン、と剣を合わせ静かに礼をすると、2人ともスタスタと左右に分かれ、校舎へと戻って行った。
「えっ、ジェフリー、ルーファス、アタシはこっちよー」
訓練場は一般の生徒が怪我をしないように、防御膜が張られており、入る事が出来ない。
防御膜に太い身体を押し付け、ギャーギャー喚いているが、誰も気にしない。
「あんなのでも少しは国の為に、役に立つ事あるのか?」
「いっそ、ラスティックに送り付けますか?」
校舎に入ったジェフリーとルーファスは、冷たい目で騒いでいる者を見るが、当人はまるで気が付いていない。
「たかが女が、知識や剣で男に勝てるわけなんか無いね」
背後から聞こえた声にジェフリー達は眉をしかめる。
背後の存在を確認すると、ジルコニア一族の半端者が偉そうに踏ん反り返って、仲間にベラベラ話していた。
「だいたい、その高慢ちきなロードライト伯爵令嬢って奴、学園の授業に真面に出てないって聞いてるぜ」
ジェフリーが訓練用の剣で自分の肩を叩いた。
「止めるなよ、ルーファス」
「当然、止めませんよ」
ルーファスも剣を持ち直し、スルリと手袋を脱いだ。
良い子達なんだけど、相手が悪い。




