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シルヴィーの恋は……

超鈍いシルヴィーの恋は……

「と、いう訳でゼオンとリリーの恋の成就の手伝いをする事になりました」


定例会となったサロンでのお茶会で、シルヴィーはジルコン家の現状を話した。


「ツッコミ所満載だな」


ウィリアムが苦笑するが、イザベルとシンシアは目をキラキラさせている。


「新年の舞踏会で、家族の健在を見せ付けるつもりか」

「しかも、孫娘には既に婚約者が居る、と」


ウィリアムとパトリックが思案げな顔で頷く。

どうやら新年の舞踏会が山場と見て間違いないだろう。

あとは、何処まで処分するか、と言うだけだ。


「思ってた以上に、平民との結婚は障害が多いのね」


イザベルが、ほぅ、とため息を吐く。

ゲームならあっという間にだが、現実ではほぼあり得ない。


「貴族の結婚は契約ですから、感情だけでは結べません」


言いながら、シルヴィーはやっと自覚した自分の恋を静かに諦めようとしていた。

どれ程好きでも、家の利益にならない結婚を当主が認めるはずが無い。

自分の感情を優先して、貴族位を捨てるなど領民や家令達に迷惑をかけるだけで、なんのメリットも無い。


「新年の舞踏会が今から楽しみです」


パトリックはシンシアの肩に手を置き、愛しげに見詰めた。

王族同士での結婚だが、パトリックとシンシアはお互いを思い合っている。


ウィリアムはイザベルを溺愛して、周りが恥ずかしくなる程、惚気まくっている。


釣り合った身分同士の恋は、案外、すんなりまとまるものだ。


少し切ないが、物語の様に身分を気にしないで恋に溺れるなんて、シルヴィーには出来ない事。

それこそ、ゲームのヒロインの様に複数の男性と関係を持つなんて考えた事もなかった。


話し合いが終わり、自室に戻るとレイモンドからの呼び出しの手紙を渡された。


「どうなさいましたか?」


レミが心配そうにシルヴィーを見る。


「明日、授業が終わったら家に戻れ、だそうよ」


要件は解らないが、楽しい話では無さそうだ、とシルヴィーは視線を落とす。


ダドリーは、今日は本宅に戻って居るから、朝から顔を見ていない。

泣きそうになるが、ジルコン公爵家の事もレイモンドの耳に入れて置きたいので、戻る事を決めた。


授業は珍しく午後まであり、シルヴィーがロードライト家に戻ったのは、夕方だった。


「お帰りなさいませ、お嬢様」


出迎えたのは、新しく入った執事で、ロマンスグレーのいかにも執事、と言った感じの男だった。


「お父様は?」

「書斎です」

「そう、では取り継いで。遅くなければ寮に戻るから」

「畏まりました」


シルヴィーは制服のまま、レイモンドの書斎に向かった。


「シルヴィーです」

「入りなさい」


父親の許可を得て、シルヴィーは書斎の扉を開ける。

柔らかな微笑みを浮かべるレイモンドを、シルヴィーは無表情で見詰めた。


「ご用件は?」

「シルヴィー、私が君の婚約者となるべき者へ出した条件を覚えているかな?」


シルヴィーは頷き、父親がラリマー宰相達に提示した条件を口にした。


「魔術学院では3年間トップ5をキープし、剣の腕前は私同様にイーリスを扱える様になる事。そして、魔力は最低80以上に成る、でしたね」


今でも、あり得ないほど厳しい条件だ、と思う。


「そちらを覚えているとはね」


困った様な顔のレイモンドをシルヴィーは不思議そうに見詰めた。


「私は、シルヴィーの結婚相手は私が認め、シルヴィーが望む者でなければ認めない。と決めている」


レイモンドの言葉にシルヴィーの心が震える。

彼との未来を望んでもいいのだろうか、と。


「ただ、やはり平民とではそれも難しい」


解ってはいたが、やはり駄目なのか、と視線が下がってしまう。


「シルヴィーに聞くが、誰と結婚したい?」


難しい、と言われても望みを口にしたいが、望みを口にすれば、彼にとっては命令にも等しい。


「お父様にお任せ……」


します、と言わなければ。頭では解っていても、心が付いてこない。

うーん、切ない場面で次にしてしまった。

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