フットワークの軽いイケオジ様
ジルコン公爵様が最近のお気に入りです
「ジルコン公爵様。聞きたい事ですか?」
突然の出現に驚いたが、椅子から立ち上がると、カテーシーをしようと制服のスカートを摘むシルヴィーの肩をポンッと叩いた。
「挨拶は大事だが、堅苦しいのは好かんよ」
社交界では偏屈で有名だけど、実際の本人はとても気さくな方。
「閣下。用事でしたら私が承りますのに」
ベリルが、呆れたようにジルコン公爵を見ている。
「そう言われても、思い付いたのがさっきだからな」
快活に笑う公爵様は、気さくな上フットワークも軽い様だ。
「ご用件はなんでしょうか?お答え出来れば良いのですが」
ジルコン公爵に座ってもらうと、目でウエイターにコーヒーを頼みながら、さり気なく話の続きを促した。
「シルヴィー嬢は剣の設えは、何処で揃えている?」
「剣の設えですか。街の中心から少し離れた工房です。リーリウムと言う方が店主で、品揃えが良い所だと、当家の執事が話しております」
嬉しそうなシルヴィーの答えに、リリーがアワアワし始めた。
「リリー?あっ、紹介が遅れましたが、公爵様、彼女は第二騎士団所属の、リリーです」
シルヴィーから紹介されたリリーはさっ、と騎士の挨拶をして、ジルコン公爵に頭を下げた。
「ほう、その若さで第二騎士団所属とは、優秀だな。わしはユーリファス・ジルコンだ」
蜂蜜のような黄金の瞳が、優しくリリーを見ている。
「それで、さっき慌ててたけど、どうしたの?」
シルヴィーが不思議そうにリリーに声を掛けた。
「はい。先程お話になりました、リーリウムですが……。私の父親なんです」
「えっ!」
「ほぅ」
2人の目が丸くなる。
「御要りような物が有りますなら、明日にでも商品を揃え、公爵家に伺いますが……」
「いや、今行こう。わしのイーリスが不機嫌になって、難儀しているので」
フットワークが本当に軽い。コーヒーを頼んだウエイターが困っている。
流石にベリルも、呆れたように肩を竦める。
「では、そのようにしましょう。私も午後の授業は無いので、護衛としてお供します。シルヴィー嬢、良いね?」
「私も午後の授業は無いので……」
授業は無いが、用事なら山の様にあるが、1人にしないで、と目で訴えるリリーを見捨てることは出来なかった。
公爵家の馬車でリリーの実家に向かった。
リリーは、シルヴィーだけなら両手を上げて喜んだだろうが、憧れのジルコン公爵をしがない武器屋にお連れするのは、胃が痛くなるだけで高揚感などありもしない。
「シルヴィー嬢はレイピアを使うのか」
「はい。ソードは剣の返しで、若干のブレが出ますので」
強度の高いソードよりも、素早く振れるレイピアの方がシルヴィーには向いている、とエインが良く言っていた。
剣聖、とまでいわれるジルコン公爵はシルヴィーの答えに満足げに頷き、ベリルもあの時のシルヴィーの素早さに、納得するように頷いていた。
店に着いたので、リリーを先頭に4人は店の中へと入った。
「父さん、お客様をお連れしました」
「姉さん。どうしたんだよ、急に……。あっ、失礼しました」
店はこじんまりしているが、扱っている品はどれも良い物ばかり。
シルヴィーは、ダドリーがこの店なら、と言っていた意味が解った。
店番をしていたのは、リリーの弟らしく、白く輝く様な髪と夏空の様な明るい青い瞳が印象的な少年だった。
「父さんを呼んで来て」
「分かった。あっ、父さん」
リリーの弟が店の奥に行こうとした時、奥から2人の父親らしき男性が出て来た。
リリーとよく似た、オレンジがかった赤い髪に夏空の様な青い瞳。
そして、ジルコン公爵によく似た面差しの店主をシルヴィー達が凝視した。
コーヒーはウエイターさんに美味しく頂いて貰いました。




