騎士科の実技授業 ①
騎士科の実技授業はかなりハードな授業になるはず。
騎士科の実技の授業は、選択している生徒が少ない為、3学年の合同で行われる。
本来なら騎士科の授業を取っていない、ウィリアム達は来ないはずなのに、ちゃっかりシルヴィーの前に立ち、にやにやしていた。
「ウィリアム殿下達は騎士科の授業を選択していないはずでは?」
「新入生が初めて実技の授業を受ける時、面白い見せ物があるのでね」
ウィリアムに話しかけてみたが、彼がここに居る理由になっていない。
しかも、口許はにやにや笑っているくせに、赤味が更に強くなった紫の瞳は、背筋が寒くなる程の苛立たしさを滲ませている。
「良からぬ事を考えているように見えますが」
ウィリアムの不機嫌な理由が判らないが、目の前に壁のように立たれると、女子にしては背が高い方のシルヴィーでもすっぽり隠れてしまっていた。
「やあ、諸君。我輩が騎士科の主任教師のフェーイックだ。誉ある、イーリスの所持者でもある我輩の授業を受けられる幸運を噛み締めたまえ」
目の前の壁のせいで良く見えないが、のっぺりした顔に不似合いな派手な服を着ているせいか、何処のサーカスのピエロだ、とシルヴィーは笑いを必死に噛み殺した。
フェーイックは演説の間中、ゴテゴテと装飾が付いた鞘を自慢そうに振り回しているが、一向に抜こうとしない。
「ルーファス様、何故、先生は剣を鞘から抜かないのですか?」
右横にいるルーファスに小声で話しかけると
「イーリスを見たければ自分に忠誠を誓え、と言ってるらしい」
「何ですか、その言い草。そんなこと言ったら、騎士団の方達はどうするのです」
騎士団にはイーリスの所有者は結構いる。
「抜けないんじゃないのか?」
左側からジェフリーの冷ややかな声がした。
「ジェフリー様、それはあり得ないのでは?」
「いや、あり得るな。あいつ、剣受式の試験をパス出来るほど高い実力は無い」
さすが、総騎士団長令息。相手の実力を見る目は鍛えられている。
「しかもイーリスには主人を特定する魔法が使われている。錬成士長が施している筈だ」
ジェフリーの言葉にシルヴィーは考え込んだ。
「鍵と錠前ですね。カインはこの事を聞いていたのね」
「鍵と錠前?」
「何?カイン錬成士長に何かアドバイスしたの?」
興味津々で2人がシルヴィーを見る。
「3年ほど前、イーリスが持ち主の名前を刀身に浮かび上がらせても、勝手に使う不届き者が居ては意味がないからどうしたら、と聞かれたので」
魔力の波長は人の指紋や虹彩などと同じで、同じ物はない、と言い切れる。
だから、剣受式の試験を合格し、イーリスを持つ事が許された者は自分の魔力を鍵にしてイーリスを鞘から抜けないようにしている。
所謂、生体認証ってやつ。
「いい事を聞いた」
ウィリアムが冷ややかに笑う。
この反応を見るだけで、フェーイックと言う人物はあまり褒められた人物では無いようだ。
ピエロみたいな騎士……。居たら、やだなぁ。




