腹黒は伝染するのか?
シルヴィーの周りには色んな腹黒さんが増殖中?
「シルヴィー様、カインから改良品のサンプルが届きました」
ギルドの事務所で仕事をしているシルヴィーに、ユーノがニコニコしながら冒険者達が使う捕縛のアイテムを差し出した。
「相変わらずカインは隙の無い仕事をするね」
アイテムを手にしながらシルヴィーが感心していると嬉しそうな声が背後からした。
「そうやって褒めて頂けると、頑張った甲斐があります」
「カイン。仕事は休み?」
多忙を極める錬成士長が市井に居るなんて、とシルヴィーの目は言っているが、強かになったカインはケロッとスルーした。
「妻と久しぶりに飲みに行くので、早く来ただけですよ」
初めて会ってから4年。
シルヴィーだけでなく、カインやユーノにも様々な変化があった。
その中でも大きな変化は、2人が夫婦になった事だろう。
これで完全にカインルートは無くなった。
ユーノにベタ惚れのカインが、あのお花畑さんと浮気するとは思えない。
「そう言えば魔獣王様から伝言で、ラスティック王国で魔獣の息抜きに暴れさせるが心配するな、だそうです」
カインの伝言に、シルヴィーがなんとも言えない顔で頷く。
「……それって私ではなく、ウィリアム殿下に伝えるものじゃないの?」
「殿下には既にお伝えしております」
ウィリアムの腹黒さは、この4年でさらに磨きが掛かっている様だ。
「ラスティック王国も不運続きで、確か先月は精霊達が息抜き、と称して騒ぎを起こしていた様ですからね」
「それ、私、知らなかった」
「はい。お伝えするな、と殿下と精霊王様に言われましたので」
ユーノにまでもウィリアムの腹黒さが移ったのか、しれっと返された。
「勇者さん達は怪我してないよね」
「怪我どころか、そもそも派遣していませんから」
シルヴィーは思わず遠い目をした。
ラスティック王国では、勇者を呼ばない王家に対する信頼が激減したに違いない。
「依頼がなかったの?それとも……」
「私達アレキサンド王国のギルドが動く必要はありません。ラスティック王国にもギルドはあるのですから」
当然のように言うが、近隣の王国でアレキサンド王国のギルド以上の実力があるギルドなど、無い事くらい知っている筈だ。
「皆んなが有能な腹黒さんで怖い」
「鍛えられてますから」
「誰に?」
泣きそうな顔でシルヴィーがユーノを見てもカインもユーノもただ笑うだけだった。
「それはそうと、シルヴィー様はこの夏が終わる頃、魔術学園に入学されるんですよね」
新しいアイテムを見ていた冒険者のハザックが寂しそうに言う。
「そうね、後2ヶ月したら自由に此処に来れなくなるけど、問題があったらユーノに話してくれればダドリー経由で対処するから」
「ロードライト家の敏腕執事殿か。なら大丈夫ですね」
ダドリーならシルヴィーを迎えに来る時、ギルド本部にも顔を出しているから問題はない筈だ。
シルヴィーは学園内でお花畑撲滅に走り回るだろうから、そうそうギルドに顔は出せない。
磨きのかかった腹黒さんは一体誰だろう?




