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完全否定されて地味に落ち込んでます

今回、ダドリーがいっぱい喋ります。


「わざわざ苦労する相手を選ぶとは、な」

「苦労も幸不幸も皆、その人の心が決めるものです」


シルヴィーの言葉にウィリアムは微かな笑みを浮かべ、イザベルは大きく頷いている。


「そうですわ。シンシア王女殿下はご自分の病も癒て、バロス王国の民を救う方法も見つかりましたから、決して不幸では無いと思いますわ」


シンシア王女との対面を終えて帰宅するシルヴィー達は王宮の長い廊下を歩いていた。


「それにパトリック殿下も守る方が見つかり、きっと強くなられるでしょう」


側妃の子、と言う事や王家の色合いが若干薄く見える紫がかった淡い緑の髪や灰色の瞳の所為で、ウィリアムよりも下に見られている。


曖昧な立場から王族にしては少し、甘さが見えていた第二王子のパトリック。

ウィリアムほど真っ黒になっては困るが、強かにならなければ、今後バロスの王配としてやっていけない。


覚悟が決まった様なので、後は彼がどの様な振る舞いをするか、此方は見ているだけでいい。


「シルヴィーは、パトリックに付くつもりなのか?」

「まさか。私はお花畑撲滅作戦の真っ只中に立つつもりです」


シルヴィーがウィリアムの質問を即答で否定すると、クスクスとイザベルは笑う。


「心強いな。頼りにしているよ、我が参謀殿」


芝居がかった台詞だが、ウィリアムがホッとするのが判った。



車寄せにはロードライト家の馬車が待っており、その前でダドリーが恭しく頭を下げている。


「シルヴィー、馬車を呼んでたの?せっかくウィル様が送ってくれると言ってたのに」

「小一時間、砂糖壷に顔を突っ込んで帰る気はありませんので」


シルヴィーがにっこり笑ったが、イザベルはキョトンとしている。


「ベル、私と2人っきりになるのは嫌かい?」

「そんな事はありません。けど……」

「婚約者の居ない私にはお二人の仲睦まじさは、少々甘ったる過ぎます」


茶化している様に見せながら、シルヴィーは滅多に2人っきりになれない、2人の時間を守ろうとしていた。


「またお茶会に呼んでくだされば、喜んで伺います」


別れの挨拶をするとイザベルも残念そうな顔をしながらもウィリアムにエスコートされ、馬車に向かった。


「宜しかったのですか?」

「お二人の時間は邪魔したく無いからいいのよ」


シルヴィーも馬車に乗って王宮を後にした。

馬車が王宮の外に出た途端、シルヴィーは、はぁーっと大きく息を吐いた。


「お嬢様?」

「何処で選択を間違ったのかしら?」


シルヴィーの不穏な言葉にダドリーの眉が微かに顰められる。


「ダドリー、アサシンの予知夢、覚えている?」

「はい。随分とありえない、と思いました」

「ありえない?何処が」

「出会いからしてありえません」


ダドリーの言葉に、シルヴィーが目をぱちくりさせる。


「お嬢様が気にしていた様なので、調べてみましたが、アサシンは名前が暗殺者、となっていますが役割は王家の影と似た様なもので、理由によっては暗殺も受けるが、と言った組織でした」


どうやら、シルヴィーの認識から間違いであるようだ。

詳しく話を聞くと、アサシンギルドは諜報活動を主に請け負うギルドで、人殺しの集団では無い。


「まして、それだけ危ない任務に就くのですから、当然組織では腕の立つ治療士が居ます。たかだか腕を斬られたくらいで、大した力の無い子供の世話になるなど、アサシンギルドの構成員として恥でしかないでしょう」


ガラガラと音を立てて、頭の中で、何かが崩れて行く。


「なんだろう、ダドリーの話を聞くと、ファーストって人がカーボン男爵令嬢を好きになる要素が無さすぎる気がする」

「お嬢様の予知夢はウィリアム殿下の未来には大きな影響を及ぼす可能性はありますが、アサシンのファーストには当て嵌まらない気がします」

「私もそう思う」

「それになんですか、ファーストの白い長髪と赤い瞳って。目立たない事が大事なアサシン達ではあり得ない色ですよ」

「目立つ色彩でも任務を完遂する有能な、って意味じゃない?」

「諜報活動は目立たない事が大切なんです。地毛がそうであっても、きっと染めたはずです。まして髪や瞳の色なんて任務でコロコロ変えますよ、きっと」


ダドリーに此処まで否定されると、地味に落ち込みそうだ。


「じゃあ、さっきの違和感も間違いなのね」

「選択を間違った、と仰ってましたが、何が疑問でも?」

「疑問と言うか、ウィリアムと共通の予知夢の中、ファーストの件で、シンシア王女の病気を治す事があって、かなり後半の恋の進展が本格的になった時に見たの」

「良い事だと思います。今回の件でファーストは確実にお花畑の阿婆擦れと縁がない事が証明されたのですから」


言われるとそうだ、と思えるのだが何故か引っ掛かる。


「何事も無ければ良いけど、その後、シンシア王女が暴漢に襲われる件があって、そこでファーストとお花畑さんの恋が成就するのよ」

「何故、シンシア王女殿下の危機で恋が成就するのです?」

「シンシア王女の即位を望まない輩が暗殺しようと狙うけど、お花畑さんがシンシア王女を守って怪我をし、その事にファーストが、って感じかな?」


考えながら話しているせいか、ダドリーの目が据わっているのにシルヴィーは、まるで気が付いていない。


「シンシア王女殿下はパトリック殿下の婚約者となり、次期バロスの女王陛下となられるお方。護衛も王家の影も万全の体制で王女殿下の安全を確保する筈です」

「そうよ、そうだわ。イザベルにも物凄い数の護衛や影が付いたのだから、他国とはいえ王族に隙なんか無いよね」


これでファーストの話は完全に消えた、とシルヴィーが微笑むとダドリーは静かに頷いた。

設定を完全否定されて落ち込むシルヴィーが可愛い

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