ウィリアム視点③
視線だけで人を動かすのって、策士っぽいですね。
ケバケバしい化粧と派手なドレスの女が誰であるかは、この場にいる者達は皆知っている。
「ジルコニア伯爵令嬢、騒がしいですよ。おや?髪飾りが砕けているみたいですが、如何なされました?」
ラリマー宰相の冷たい声に周りの者達が魔法陣と女の砕けた髪飾りを交互に見る。
「この魔法陣は、いったい何の魔法陣なのですか?」
誰かが疑問に思って声を上げる。
誰だか知らないが、良いタイミングだ。
「この魔法陣は、旧アイテムの効力を完全無力化出来る優れもので、その威力は半永久的だ」
シルヴィー。お前、どんだけすごいもん作ったんだよ!!
魔術院長官の言葉に周りは更に騒めいたが、蒼白な顔のジルコニア伯爵親子が見ものだ。
「成程。どうりで頭がスッキリしたと思いました」
低い声だが、しっかりとした響きの言葉が謁見の間の騒ぎを静めた。
「ゼオン様」
「私に触れるな、汚らわしい」
髪飾りを押さえていた女がゼオン、と呼ばれる騎士にしがみ付こうとして突き飛ばされた。
どうやら総騎士団長の嫡男は、アイテムの魔力が無事解呪された様だ。
「おや、総騎士団長の嫡男、ゼオン様はジルコニア伯爵令嬢との婚約を望んでいない様ですね」
ラリマー宰相達が冷ややかな目を向けている。
いい加減、伯爵にも令嬢、令息にも名前はあるのに誰も呼ばないって事に気が付けよ。
「そんなはずないわ。ゼオン様は私と愛し……」
「お前には嫌悪感しか無い。よくも私を魔力で服従させたな」
怒りを顕にゼオンは剣に手を掛け、翡翠の瞳に鋭い殺気を滲ませ女を睨みつけている。
「ジルコニア伯爵令嬢を拘束しろ。ゼオン・ジェイド総騎士団長令息、謁見の間を血で汚す必要はない」
「御意」
俺の言葉に一旦引いたが、あれは相当怒っているぞ。
なんか手は無いのか?って思いながらラリマー宰相を見るとニヤって笑って頷いた。
「ところで、次期錬成士長のカイン殿でしたら如何します?」
「先日、他の錬成士が作成に成功したアイテムで魔力を大幅に削る事が出来るものがあり、それを使えば良き見せしめになるでしょう」
この世界は魔力が無いと生活するのは難しい。
火をつけるのも、水を汲むのも全て魔力で行われている。
貴族ならまだマシかもしれないが、平民で魔力無しは野垂れ死か物乞いになるしか無い。
あー、女なら別の道もあるけど。カイン、何気に冷酷な案出してるな。
「では、国王陛下。旧アイテム使用の罰則はそのアイテムを付けさせ、貴族位を剥奪する事にしては如何でしょうか」
俺が確認を取る様に目を向けると、国王は静かに頷いた。
「魔力をかけられた者の屈辱を鑑みれば、妥当な判断だ。明文に記載しておけ」
「そ、そんな無慈悲な……」
そんな物使っていない、と叫ばれると面倒だが、現物があるから言い逃れは出来ないだろう。
国王の言葉に令嬢だけで無く、伯爵本人もへたり込んでしまった。
甘い判断は後から苦労が追っかけて来るからやる時は徹底的にするのは物事の鉄則だろ。
まっ、これでジルコニア伯爵家の力も随分削れたからパトリックも生きやすくなるだろ。
さて、今日の仕事は終わったから部屋にでも帰るか。
俺が国王に一礼をして下がろうとした時
「国王陛下にお願いがあります」
と、総騎士団長が前に出た。
「総騎士団長、願いとは何だ」
実直で勇猛な総騎士団長の滅多に無い願いに国王は興味を持った様で、発言を許した。
「私の次男、ルーファスが軍関係の勉強だけで無く、多くの知識を得る為に優れた人材を探しておりました」
ゲームでは脳筋キャラだっはずのルーファスが最近文官志望なのか、と言うほど勉強しているのは耳に入っている。
「良い心掛けだ」
「はい。ですが、どうしても学者は知識に偏りが出るから息子は幅広い知識を持つ方を呼んで欲しい、と望んでいるのです」
総騎士団長の言葉に嫌な予感がした。
「ほう。一理ある意見だな。で、ルーファスには当てがあるのか?」
「ロードライト伯爵令嬢のシルヴィー嬢なら魔力も強く、剣の腕も確かな上才女としても評判の令嬢です。どうか、陛下からロードライト伯爵にお取りなしを」
嫌な予感ほど当たるって本当だな。
これも明日、あいつに言わなきゃいけない事だよなぁ。
「おや、奇遇ですね。我が嫡男のジェフリーもロードライト伯爵令嬢と交流を持ちたい、と願っております」
ラリマー宰相!!直球勝負で来るなよ。
謁見の間を埋め尽くしている大人達が騒ついているけど皆んな、ならば我が息子も、弟もって思っていんのが怖いんですけど。
確かにシルヴィーは美人だし、頭も良いから最優良物件なのは判るけど、あのロードライト伯爵の愛娘だぞ。
ついでにアンバー第一騎士団長の秘蔵っ子だ。
木っ端微塵に貴族の……って言うか、男としての誇りを砕かれるからやめとけって。
俺は事態の鎮静化をする前に逃げようとしていたジルコニア伯爵令嬢を再度護衛官に捕まえさせ、そのまま貴族牢に放り込み、カインに目を向けた。
カインは嫌そうに首を横に振る。
チッ、しょうがない、自分で動くか。
「国王陛下、独断ですが逃亡を試みていた者は貴族牢に送りましたが、宜しかったでしょうか?」
俺の発言でやっと周りが冷静さを取り戻す。
「うむ。良い判断だ」
「それと、ロードライト伯爵令嬢の件ですが、令嬢は社交界にデビューする前の未成年でございます。まずは王家から申し入れるのでは無くロードライト伯爵本人に話を通すのが筋かと思います」
鎮静化を図るだけで無く序でに頭っから水を被せておこう。
あのロードライト伯爵にシルヴィーを自分所の嫁に相応しいか見せて下さい、って言える勇気あるのかってね。
大体、ロードライト伯爵には王家の威光なんて効かないんだよ。
うん。良い感じに皆んな青褪めている。
「では、直接ロードライト伯爵に伺います」
「私も本人に直接話しましょう」
なのに強者が2人も居たよ。
俺が唖然としている間にラリマー宰相とジェイド総騎士団長の2人は謁見の間を出て行ってしまった。
俺、明日無事かなぁ?
ウィリアム君、頑張れ!!




