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ルーファス視点

今回はちょっと短め

ルーファス・ジェイド総騎士団長令息視点


図書館の一角で濃い緑色の髪を掻き乱しながらルーファスは唸っていた。


「なんで俺がこんな勉強しなきゃなんないんだよ。騎士は己の技術を磨くことが最優先なのに」


目の前に広げられている本は兵法の指南書で、軍関係者なら目を通して置いて損はない物だ。

だが、ルーファスは自分には必要無い、と本を閉じようとした時


「シルヴィー様。何故、一介の騎士が兵法書だけでなく歴史や地理などを学ばなければならないのですか?」


と、若い男達の声がした。


「兵法書は戦術を組み立てるのに必要ですが、歴史は戦いの後の人の営みを、地理は人が住む場所を知るのに有益だからです」


若い男達の質問に答えたのは彼よりも若い、いや幼い少女の声だった。


「ですが、騎士は己の技術を磨くことが最優先ではないのですか?」


男の意見にルーファスは頷いた。

だが、少女の答えは違った。


「技術を磨くのは最優先ではありません。義務です。その上で、自分の意思で自分の行動を決める事が必要になります」


騎士の存在意義に対して少女は冷たく言う。


「ですが……」

「戦場で上官の命令に従う事だけが騎士の役割ではありません。規律を守る事は大切ですが、騎士の本当の目的は弱い者達を守る事でしょ。最悪の状況でも冷静に判断でき、行動に移せるだけの知恵が無ければ弱い者達を護れません」


幼い声だと言うのに語る言葉は深い。


「ですが地理ならまだしも歴史なんて勝ったものの作り話が多いから」

「そうですね。でも無傷で勝った戦いなど無いですよ。そして一番被害を受けるのは弱い立場の民です」

「弱い立場の……そうですね。戦いは勝ったから終わり、になりますが、復興はすぐには出来ないものです」


騎士の言葉に、ルーファスも不覚にも頷いていた。


「はい。ですから過去の戦いを学び、復興の長さや戦いが起こっても早期に解決する方法や戦いそのものを起こさない様にする知恵を身に付けて欲しいのです」

「そうなると、歴史や地理だけでは足りませんね」

「流石、アンバー団長に鍛えられているだけはありますね。理解が早くて話が分かる方です」


騎士達の向学心に少女が嬉しそうな声を上げ、手を叩いている様だ。

ルーファスは声の主を確かめようと立ち上がると丁度、本棚の影から若い騎士達と赤紫色の髪をした少女が現れ、楽しげに笑い合っている。


シルヴィー・ロードライト伯爵令嬢。


彼女の事は噂で知っていた。

アンバー第一騎士団長の秘蔵っ子で最年少で剣受式の試験を突破した、と言う話題の存在だ。

だがルーファスは生身の彼女の事を見たのは初めてだった。


「あんなに華奢で綺麗なんだ」


悪意ある噂では女のくせにガタイが大きく、ガサツで不細工だと言われていたのに、本人は聡明でカラッとした態度の華奢な美少女。


「噂なんてアテにならないって事か」


ルーファスは閉じ掛けていた本に目を向け椅子に座り直した。

いつか彼女と会う事があった時、剣の技術にしか誇れる物がない男では居たくない。

国の事、民の事など多くの物を対等に話せる存在になりたい、と。


「いつか彼女とゆっくり話をしてみたいな。きっと楽しいだろうなぁ」


うっとり呟くルーファスの緑の瞳と脳裏に彼女の華奢な姿がくっきりと焼き付いていた。

総騎士団長の息子君は脳筋でした。

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