所謂、転生しました。
なんでも出来るけど、ちょっと天然な女の子が東奔西走する話が書きたかったので、頑張ります。
「どうして、こうなった」
と、頭を抱えたかったが、ベッドに押し倒されている状況では、出来るわけない。
「ダドリー、貴方、今自分が何をしてるのか分かってるの?」
「当たり前だろ。やっと貴女を独り占めできるんだから」
覆い被さっている男、今は我が家の執事のダドリーが悪い笑みを浮かべ、執拗なほどねっとりしたキスをする。
「考え直して」
「何を?」
「私、ヒロインじゃないですよ」
「関係ないね。ヒロインの意味、解らないが俺はシルヴィー、貴女を独占したい」
何度も舌を絡めるキスに息が上がり、抵抗なんて出来なくなっていた。
「夜は長いんだし、存分に俺に溺れろ」
腹が立つほどイケメンの元暗殺者で、ある乙女ゲームの攻略対象者は嬉々として私の制服を脱がしていく。
もう一回言う。
どうして、こうなった?
所謂、前世の記憶を取り戻した転生者の私。
こちらの世界では、シルヴィー・ロードライト伯爵令嬢、と呼ばれる貴族の平凡な、ゲームとは全く縁のない所謂モブの普通の娘だ。
ゲームは18禁乙女ゲーム。
タイトルは『今宵貴方の腕の中で』だ。
登場人物達は皆、宝石を家名にしており見た目も宝石の色を髪や瞳にしているので、結構綺麗だ。
私も髪と目の色はロードライトガーネットのような綺麗な赤紫なので気に入ってる。
容姿はモブだから特徴無いけど、普通。まぁ、前世よりかははるかに整っているけどねー。
前世での名前は忘れてしまったけど仕事は、バリバリの敏腕弁護士の補佐をしていた事は覚えている。
民事担当だったから離婚訴訟から遺産争いの調停など、結構色んな事を補佐として頑張っていた。
頑張りすぎて彼氏も居なかったし、ストレス解消の乙女ゲームの泥沼にズブズブ嵌っていた。
ただ、そういうゲームの楽しみ方がちょっと他の人とは違い、推しのキャラにキャーキャー言うのでは無く、ゲーム内での恋愛を民事の訴訟で考えるとどうなるか、と脳内シュミレーションするのが私の楽しみ方だった。
だって、婚約者がいるのに他の女に現を抜かすなんて見事な不貞行為でしょ。
それに悪役令嬢がヒロインに対して虐めとかしてても、ことの発端は攻略対象者の不貞行為からだし、愛情が無くなったのならきちんと理由を述べ、婚約を慰謝料とか払って白紙に戻すべきだし、政略結婚で愛情が無くたって令嬢が浮気によって受けた精神的苦痛や婚約破棄される実害ついでに家同士の契約など考慮すべき点は多い。
ましてや言い掛かりや罪の捏造なんてもってのほかだ。
「何で悪役令嬢達は法的に優位に立てる方法で戦わなかったのかしら?」
貴族社会はメンツが大切ならば、暴力に訴えるのではなく、ヒロインにデロデロになった相手を社会的に抹殺する方法で戦うべきだ。
色々なゲームでは、虐めしかしないで断罪される悪役令嬢達に腹を立てていたが、あるゲームに出て来た悪役令嬢に興味を持った。
18禁乙女ゲームの典型的な縦ロールの悪役令嬢なんだけど、ハードモードでヒロインがバッドエンドになると、心から愛した王太子とムッチャ濃いエッチシーンで結ばれていた。
しかも、最初っから王太子から溺愛されててヒロインの事なんて欠片も虐めてなかった。
何がハードかって?ノーマルモードでのヒロインはチートなアイテムを使って楽にラブエンドや逆ハーエンドを迎えられるけど、ハードモードでのヒロインは
チートなアイテムやご都合主義満載の虐めとか冤罪なんて無く、本物の恋愛をする様に相手の事を考え、努力しないとラブエンドにならない。
ましてや、婚約者がいる攻略対象者や高位の貴族子弟達の塩対応にめげずにやらなければならないのだから、すぐにキャッキャウフフできるノーマルと比べたらヒロインを幸せにしたくないのか?と運営側を疑りたくなる内容だった。
まぁ、その塩対応を乗り越えてラブエンドにたどり着けたら、腰が抜けるほどの濃厚なラブシーンが怒涛の如く見れるから人気はそこそこあったし、攻略サイトも充実していた。
私?私は攻略サイトのお世話にならず、自力で全ルート攻略しましたが、なにか?
そんな仕事とゲームしか無い人生を送っていた私だけど、血迷った奴は何処にでもいる事を思い知った。
先輩弁護士が扱った事案の加害者が、何を勘違いしたのか突然、私のストーカーになり、振り向かない私に腹を立ててナイフを振り上げてきた。
猛烈な痛みと道路に流れる真っ赤な血が私の最後の記憶だった。
「何で数あるゲームの中で、このゲームに転生するかな?」
子供の頃、ゲームでの主要メンバーである悪役令嬢の彼女と会った所為で前世の記憶を取り戻した時、頭を抱えたかったが、自分は主要メンバーでは無い。
所謂モブだと分かったからお気楽にやって行こう、と思ってたんだ、あいつに会うまではねー。
読んで頂きありがとうございます。
出来るだけ更新早めで頑張ります。