メール
もしかして、そんな過保護っぷりが自分の首を絞めていたのだろうか。でも俺はそんなこと望んだすらない。しかし、過保護ではあったが息子の俺からして普通に幸せな暮らしをしていたと思うし、どう考えても「過労死」と「母」の繋がりを見つけることが出来なかった。
「それではまた義息子さんがいらしたらお呼び下さい。今後のことについてお話しさせていただければと思います。」
医師はそう言って一礼すると、静かにその場を立ち去った。
「過労死って…どう言うことなの…?」
「分からない…」
祖父母も理解が追いつかないようで各々がこの「過労死」という死因に疑問を抱いていた。
再び沈黙が走る。
静かな空間の中、今度は俺のスマホの受信音がぽんっと静寂を切り裂いた。
メールは父からだった。
『あと五分で着く。』
「父さん、あと五分で着くって。」
「分かった…」
重々しい口調で返事をしたのは祖父だった。
ぽんっ
そしてもう一通メールが来た。
メールの差し出し人は見覚えの無い名前だった。
ぽんっ
ぽんっ
ぽんっ
その名前から立て続けに三通メールが届く。
「どうしたの?輝くん。」
祖母が訪ねる。
「いや、知らない名前からメールが来てさ、多分迷惑メールだと思う。『赤羽』なんて初めて聞いたわ。」
「赤羽…!!!?」
祖父母はお化けでも見たかのような驚き様で、祖母は次第に顔が青ざめていく。
「そんなっ…」
「えっ?どうしたの??」
俺は迷惑メールに対してそんな反応をされるとは思っておらず、思わず笑ってしまった。
「赤羽…下の名前は?」
祖父が聞いたことのないくらい低い声で聞いてきた。
「えっと…光に男で…光男?」
「お父さん…!!」
「ばあさん、落ち着いて…輝くん、メールの中身を読んでくれるかい。」
祖母は今にも倒れそうな様子で、支えている祖父はどうしてか怒りで声が震えているようだった。
「あっ、うん、えっと…最初のが、『久しぶり。』次に『元気にしてる?』、『大きくなったね』で最後が…『また会いたいな…』。」
「お父さんっ!!!」
「とにかく、藤田刑事に連絡しよう。連絡先は持ってるよな。」
内容を聞くと祖母は震え出し、祖父は片手で祖母を抱きながら急いで電話をし始めた。
「何?どうしたの??」
俺は何に震え、何に怒りを覚えているのか全く分からなかった。
そんな混沌とした中、ようやく父が到着した。
「父さん…」
「…お母さん、お父さん…、一体どうしたんですか?」
父も来て早々、義両親の様子を見て、この状況が理解できていない様子だった。
その時、祖父の電話が繋がった。
「あぁ、藤田刑事ですか。お久しぶりです。新城です。…『赤羽光男』が現れました。」
これが、全てのはじまりだった。