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母の死因
「すみません。」
暗く重い静寂を切り裂いたのは、母を担当している若い男性医師の声だった。
「佐久間明子さんの御家族はお揃いでしょうか。」
「いえ、まだ義息子がっ…」
「あの、母はどうして死んだんですか。」
「輝くん、お父さんが来てからじゃないとっ。」
この時の俺は、制止する祖母の声に聞く耳を持つ余裕なんてなかった。
「お願いします、聞かせてください。どうして、どうして母はっ!」
医師につかみかかる勢いで尋ねる俺の様子を見た祖父は、優しく、しかし強く俺の肩を掴み制止すると、「お願いします。」と一言医師に言った。
「はい…。」
興奮している俺を横目に医師は一度咳ばらいをすると、改めて神妙な面持ちで話し始めた。
「まだ正確な診断ではありませんが、佐久間明子さんの死因は『過労死』だと考えられます。」
「過労死…?」