昼休み
一限の講義を終えると、俺と一ノ瀬は二限の空きコマを使い早めの昼食をとっている。
この日もいつもと同じように学食へ向かう。いつもの席は室内ではなく、テラス席。がら空きの室内で毎日何も買わずに弁当を広げることが、なんとも言えぬ罪悪感にさいなまれるため、俺が一ノ瀬に頼んで外で一緒に食べてもらっている。
「いただきまーす。」
季節限定の学食の定食を食べる一ノ瀬を羨望の眼差しで眺めながら、俺は母親の手作り弁当を食べるのも、まあ大体いつもと同じだ。
「これがさ、彼女が作った愛情弁当とかだったら嬉しいんだけどなあ。…居ないんだけど…。」
「彼女なぁー、良い感じの子居なかったっけ?」
「デートに誘ったけど、内緒で家を出る直前に母ちゃんに見つかってドタキャン、それ以来連絡なしっ。」
「まじかー。やばいな、彼女作るどころか良い感じの子とデートすら無理じゃん。」
「そうなんだよー。でも、晩御飯では定期的に良い子いるの?とか聞かれるし。あんたのせいで出来ないんだよぉぉ!」
俺は罪のないお弁当のおかずたちに向かって叫んだ。
「でも大学だから色んな人居るし、輝にもできるさ、きっと!」
「彼女持ちに励まされたくねぇー!!」
俺は一之瀬を睨むとお弁当をやけになりながらかきこんだ。
その後食事を終えた俺たちは、二限終わりの学生たちで学食が賑わいだすまでの間、スマホをいじりながら暇を持て余していた。大体これがいつもの俺達のお昼。
そんないつもと変わらない日常が一変したのは、一本の電話からだった。