大学
「お前の母さんってさ、なんて言うか…過保護?だよな…」
授業が始まってすらないのにぐったりした俺の様子から察した友人、一ノ瀬爽真が言葉を選びながら言った。
「過保護"?"じゃなくて、過保護"!"過保護過ぎるんだよ…。まあ、これがまだ中学、最悪高校生とかなら分かるけどさ、俺もう大学生だぜ?何ならあと少しで成人するんだぜ?そんな年の男が門限あって、毎日母親の手作り弁当って、やばすぎるだろ…」
俺は小学生から使ってる弁当袋を一ノ瀬の前で揺らしながら、家では言い出せない不満をぶちまけた。
「…まあな…笑
あっ、いや、でも!食費浮くし、輝の健康を何よりも考えてくれてるってことで、良いんじゃない…?」
「そんな良いよ誤魔化さなくてさ。この年で母親の目に入らないからバイト禁止、何食べるか分かんないから友達と外食禁止、おかしいべ。」
一ノ瀬は一瞬言ってしまった本音を誤魔化すように言うも、結果墓穴を掘った状態となり、反応出来ずに苦笑いを浮かべ、バツが悪そうにそそくさと授業の準備を始める。
「はあ、早く自由の身になりたいよ…。」
俺は、そんな一ノ瀬の行動を横目にため息をついた。
「俺も準備するか…やべ、筆箱忘れた。」
俺はこの「自由」が俺"たち"にとってどんなに大きなことか、この時は知るよしもなかった…。