混乱
どんどん情報が入ってきて頭がいつになく混乱している。
俺を狙った連続殺人事件があって、俺はその唯一の生存者で…
その犯人が母さんのストーカーで、それで母さんは俺のことを誰にも伝えずに育てて…
でも、その犯人は元々母さんと付き合っていて…
つまり、母さんと別れた後赤羽は母さんのストーカーになって…
母さんは父さんやじいちゃん、ばあちゃんに危害が及ぶと思って一人で身を隠した…?
「…輝くん、大丈夫かい…」
気づくと俺は座り込んでいた。
随分こうしてたのか、祖父は俺に買ってくれたお茶と持っていたチョコを一つくれた。
「…ありがとう…」
俺は一粒口に入れた。
昔から祖父母の家に行くときはなんでも好きなものを食べさせてもらえていた。
お茶を一口飲む。
それは母がお弁当と一緒に毎日持たせてくれた水筒のお茶と同じだった。
そして祖父母の家にいるときはいつも母は俺の食べる姿を見て笑っていた。
そして笑いながらお茶を飲み、祖父母と楽しそうに話していて。
その時だけ母ではなく娘に戻っていた。
「…あっ…」
ズボンに大きな涙の粒が落ちる。
「…あっ、これはっ…」
言い訳をしようと口を開けるとさらに涙があふれ、俺はしゃくりを上げながら拭う手とズボンを濡らした。
「ごめん、輝くん…明子も…母さんも…」
祖父は俺の肩を抱きながら何度も謝ってきた。
「…うっ…」
じいちゃんのせいじゃない。
全ては赤羽光男という殺人鬼のせいだ。