母と赤羽
祖父は静かに、けれども重みのある声色でその話を始めた。
「赤羽は、あの男は明子のストーカーだったんだよ。」
「ストーカー…」
「ああ、私達も後から浩一くんにその話を聞かされて、言葉を失ったよ。」
赤羽は母さんのストーカーだった。
そのストーカーから守るために祖父母にも、父さんにも伝えず、頼らず一人で俺を育ててきた。
ということらしい。
頭の中で要約はできたが、その行動の理解ができない。
ストーカーは実害がでねければ警察も動けない。
だから警察には頼れない。
そこまでは何となく分かる。
でもだとしたらむしろみんなにこのことを伝えて、一人の時間を作らないほうを選ぶほうが普通なのではないだろうか?
どうして危険なほうをえらんだのだろうか?
赤羽が生きている。その事実は今もかわらないというのに。
「それは…」
祖父に聞くと下を向き、言葉を濁した。
「ねぇ、教えて。どんな答えでも俺、大丈夫だから。」
「…。」
「ねぇ。」
「輝くんが殺されると思ったからよ。」
祖母が呟いた。
「あの事件、輝くんが唯一の生存者となった誘拐事件。あれは、輝くんを狙ったものだったのよ。」
「…俺…を?」
「そうよ。赤羽は輝くんを殺そうとして、同じ年くらいの子供を次々を殺したの。」
「…ああ、あの時もっと早く赤羽との関係を切らせておけばこんなことにはならなかったんだ。
私のせいだ…高校を卒業して明子と結婚」
「ちょっ!ちょっと待って!!」
急に入ってきた新たな事実に俺は頭が追いつかない。
「赤羽と…母さんは、恋人同士だったってこと!?」