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擬態  作者: 杉将
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僕の股関節が硬いだけだ。

 女が、明日は学校に行かなければ行けないからそろそろ帰る、と言った。それから、カップに入った飲みものをストローで啜り、もうほとんど中身がなかったのか、空気を吸う音が聞こえた。僕は、家に行っていいか、と聞いた。疲れているし、ここから自分の家に帰るには、何時間も歩くかタクシーを呼ぶ必要があるだろう。自分の家に帰り、風呂に入って歯を磨く、そういうリズムがひどく面倒に感じられる。

 女は、実家なのだと言った。それから荷物をまとめるような素振りをしたが、よく観察すると、物を掴んだり離したりしているだけだった。僕はくだらないと思った。僕たちが交わした会話も、この女がナゲットを一人で全部食べたことも、物を掴んだり離したりすることも、全部くだらない。女が実家だと言ったから、こんな風に感じるのだろうか。

 僕は一人になりたいと思った。これ以上くだらないの中にいても仕方がない。実家なら仕方がないね、お姉さんによろしく、と言って僕は立ち上がった。女に姉がいるのかどうか知らなかったが、立ち上がるならそれなりのセリフが必要だと思った。女は何かを言おうとして、言わないほうが安全だと思ったのか、口をつぐんだ。自分の歩幅はこれで正しいのかと疑問に思いながら、僕は店を出た。自分の歩幅が気になるということは、女と同じように僕も不安定な状態にあるのかもしれない。いや、違う、僕の股関節が硬いだけだ。

 しばらく歩いた後に、食べ終えたトレーを片付け忘れたことに気づいたが、今から戻っても遅いだろう。


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― 新着の感想 ―
[一言] 上手く続いているように思います。 ……って、エラそうなことを言ってすみません。 副題は洒落てますね。 さぁ、この物語は、どこを目指していくのか。 どう着地するのか。 そして、「擬態」の意味…
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