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第七章 決戦⑤

『おい!闇の導きさえありゃ、俺がアイツをぶっ潰してやるっつってんだよ!』

(闇の導き…?ちょっと待て…言葉と一緒に何か…音が…。いや、これは…歌?)

「天使にだってなれるって、信じてたあの頃は、世界に何の疑いもなくて。だけどそれはただの希望でしかないと気付いたとき、僕はどこにも存在しなくなってた」

綾子は歌い出していた。

「ちょ…、黒崎さん!?」

「それって綾様がレコーディングした歌…」

自分でもわからない。だけど、歌わなければならないような、そんな気がした。

「世界は色をなくして、何も見えなくて聞こえなくて。暗闇の底に落ちながら僕は歌う。僕はここにいるよ。僕はここにいる」

十字架の宝玉は更に輝きを増した。クロウも一瞬怯む。そして溢れる光と共に、少年妖精が現れた。

「ヴァイス…!?」

シェルがその者の名を漏らす。ヴァイスというと、クロウの身体の持ち主だった闇天使?確かに彼はクロウと同じ顔をしている。しかし彼はクロウに乗っ取られたはずじゃ…?

「貴様…!?何故だ!!おまえの魂は、私の中で消えたはず!」

「…最初から、乗っ取られてなどいなかったんだよ…。僕は君という邪念が生まれた頃、身の危険を感じて宝具の玉に魂を隠していたんだから」

ヴァイスの言葉に綾子は仰天した。

「君は、僕と波長の合う人間。だから、封印を解くのに必要だった。そしてこれからも」

「どういう意味だ?」

「少しの間、身体を借りるよ」

言うやヴァイスは綾子の意識に入り込んだ。融合したことで身体に黒い翼が生える。ヴァイスは空を浮遊しながらクロウを見つめた。

「自分の身体と戦うというのはあんまり気分のいいものじゃないけど…。仕方ないね」

「ふざけやがって…!貴様如き、丸呑みにしてくれる!」

クロウは闇の歪みを引き起こす。だがヴァイスは綾子の右手に力を集め、軽く歪みを元に戻した。

「くっ!」

「…闇を操れるのは君だけじゃない」

ヴァイスの力で形勢が逆転した。これなら勝てるかもしれない。綾子は遠い意識の中で希望を感じた。

「くそっ、何故だ!?もうすぐ…、もうすぐ全てが俺のものになるのに…っ」

クロウのその言葉は正に敗色濃厚を物語っていた。

「みんな、僕の力は奴と同質…。奴を倒す力にはならない。僕が補佐するから、後は君たちの力だよ」

ヴァイスは優しく笑った。クロウとは逆に勝利を確信している顔だった。

「畜生!」

クロウが下僕を呼び出す。ヴァイスがまた闇へと戻すが、すぐさまクロウは闇の塊を投げてきた。光魔法で相殺しないと。真由美は再びルーチェを唱える。

「俺に任せろ」

博が大剣を振るう。すると剣圧が闇の塊を跳ね返し、剣の威力と合わさってクロウに激突する。

「がはっ!」

思わぬダメージを喰らいよろめくクロウ。

「数さえいなきゃこんなモンだ」

「テンペストボルト!」

何度か使う内にレベルの上昇した到の魔法が発動した。轟音と共に雷竜が出現しクロウに喰らいつく。みゆりの華麗な剣技も炸裂する。その間に幸広が真由美に魔法力を上げる術をかけた。そして。

「ルーチェ!」

真由美の唱えた光の矢が、クロウの身体を貫いた。

「ばかな…この俺が…負け…る…?」

それがクロウの最期の言葉だった。


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