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第六章 想いを胸に ―ルシフェル編2―

ルシフェルは炎天使の宝具『炎の腕輪』を借りるため、炎の神殿を歩いていた。燭台と赤い絨毯が至るところに見える。おそらく炎の象徴なのだろう。

チェイニーが同行したので長に会うのは思いの外簡単だった。だがそれは長に会うまでの話だった。

「準天使とクロウを戦わせるなんて、正気の沙汰とは思えませんね」

「しかし、彼には導士としての役目が…」

「そんなモノにこだわって、命を落とすことにでもなったらどうするのです?別に行くのは彼でなくてもいいでしょう。私の精鋭部隊の中から誰か選ばせます」

気の強そうな女長は畳みかけるように言った。

長の言うことはもっともだと思う。だけど、これから先どんな苦難が待ち受けていたとしても、オレはみんなと最後まで戦う。今更留守番なんてごめんだ。

「オレは行く。準天使だとか、そんなの関係ない。オレがみんなを守りたいんだ。そのために宝具を借りに来た」

「…威勢だけはいいようですね。ではあなたの心を試すことにしましょう」

長は机上に置かれている杯を手に取った。

「…この杯は長を選ぶ時の審査に使われる物です。心弱き者はこの杯から現れる炎によって、全身を焼き尽くされてしまうでしょう。あなたの精神力が魔炎に打ち勝つことが出来たら、宝具を貸すことを約束します。自信がないのなら棄権した方が身のためですよ」

「けっ。棄権なんか誰がするか。こんな試練もクリア出来ないんじゃあ、クロウにだって勝てないからな」

長から杯を受け取る。途端に中の炎が巨大化し、ルシフェルの全身を覆った。

「……っ!!」

すごい炎だ。気を抜くと本当に全身を焼き尽くされてしまうだろう。

「……くっ」

「ちっ。やばいな。魔炎の方が強い。このままじゃ…」

「やはり彼には無理だったようですね」

チェイニーと長の声が聞こえる。

(…くっ。やっぱオレには無理なのか?今までみんなと戦ってきたけど…)

燃え盛る炎に包まれ意識が遠のく中、脳裏に浮かぶのは自分の為に涙を流すリーナの姿。

『…バカじゃないの!?今のは私の不注意で…、あんたが怪我する必要なんか、無かったのに!』

『何よ…。私だって…、あんたが怪我したのみて、びっくりしたんだからぁ…。怖かったんだからっ!』

(…オレは…アイツを守るって決めてんだ…。こんなところで…、こんな…魔炎なんかに…)

ルシフェルは屈み気味だった態勢を立て直した。

「!?バカなっ。魔炎が押されている!?」

「負けて…たまるかーーっ!!」

ルシフェルの叫びと同時に、杯の炎が小さくなる。そして、彼の身体を赤く包むように覆った。

「…!?何だ、この炎」

「…くっくっくっ。これは面白い。いいでしょう。炎の腕輪、あなたに託しましょう」

半ば呆れたように笑いながら、長は身に付けていた腕輪を渡してくれた。

「…一つ聞かせて。何故急に炎をはねのけられたのか」

「…だって、なぁ。ここで死んでこれ以上泣かせるわけいかねぇだろ」

自分の為に泣いてくれたことは嬉しかったけど、やっぱり彼女は笑顔の方が似合うから。

「ちっ。なんだよ、のろけやがって。おれも女の一人や二人欲しいっての」

チェイニーが拗ねる。

「そうなのか?到も望月も博もそんなこといわねーぞ」

「わかってねーなぁ。あーいう奴らの方が陰で女はべらしてんだぞ」

「そうかぁ?」

「そうだって。…っと、油売ってる場合じゃねぇな。さっさとタワーにいかねえと」

チェイニーは長に礼を言い、大扉の前へ進む。ルシフェルも後に続き、室を出る前に振り返って長を見た。

「…ありがとう、ございます」

「礼はクロウを倒してからになさい。信じていますよ、ルシフェル。あなたならきっと、導士としての使命を果たせるでしょう」

長の激励の言葉を後に室を出る。必ず勝って、また礼を言いにこようと決めて。


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