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第六章 想いを胸に ―クロウ編―
とある廃墟で、クロウはその黒い翼を広げた。その直後、手首に巻き付けられていた呪文の書かれた鎖が消失する。彼は笑った。
「やっと身体の呪縛が解けたか」
今までは、意識の覚醒こそしていたものの身体は自由ではなかった。だから、思念波で魔物を呼び寄せることくらいしか出来なかったのだ。それも、低級の。
だが今は違う。今ならもっと強い魔物を呼び出せるし、私自ら動くことが出来る。
――聖戦士や神の生まれ変わりが、何ほどのものだと言うんだ?
「フッ。誰もこの私に手出しは出来ない。この身体を創った神でさえも。…いいザマだ」
「えーと。ひょっとして、あんたがクロウ?」
「!?」
音もなく、目の前に男が現れた。
「ばかな…っ。気配なんか何も…!貴様っ、何者だ!」
「さぁねぇ。俺もよくわかんないんだよなぁ。判るのは、俺とあんたが敵同士って事だけ」
男はにんまり笑って、クロウの顔に大剣を突きつけた。