転がる林檎
「はじまりはひとつの林檎でした」
銀髪の紳士は水晶体に魔力を込めながら、そう語り始めた。
「「最も美しいあなたへ」というメッセージと共に投げ込まれたその林檎は、
女神たちが座る席に無邪気に転がり込むやいなや」
ぼう、と水晶が光をもちはじめた。
うっすらと青年か、少女か、老人か、それとも自分?
とにかく人間らしきものが映り始めた。
「それはそれは、大変な騒ぎでした。しかし、本当の騒ぎははじまったばかりで」
ぴしっ、と水晶に小さなヒビが入った。
「あなたが、終わらせるのです」
「はじまりはひとつの林檎でした」
銀髪の紳士は水晶体に魔力を込めながら、そう語り始めた。
「「最も美しいあなたへ」というメッセージと共に投げ込まれたその林檎は、
女神たちが座る席に無邪気に転がり込むやいなや」
ぼう、と水晶が光をもちはじめた。
うっすらと青年か、少女か、老人か、それとも自分?
とにかく人間らしきものが映り始めた。
「それはそれは、大変な騒ぎでした。しかし、本当の騒ぎははじまったばかりで」
ぴしっ、と水晶に小さなヒビが入った。
「あなたが、終わらせるのです」
ー王都、アストーン家 晩餐室
「およ、林檎じゃんか。ラッキーだねこれは」
最初に林檎を拾い上げたのは女神・アステラ様でございました。
アステラ様はカリューカス12神の一席であり、技術を司る方です。
複数いる女神の中でもお美しく、鳩がたまに飛び出す機械義手を愛用されておりました。
「お待ち下さい。最も美しいあなたへ、と書いてありますでしょ。林檎を返して頂戴」
知恵の女神・ペレタ様は実に聡明な方でした。
同じく12神の一席であり、王座・アストーン様からの信頼も厚く、私もよく議論の相手をして頂きました。
幼く控え目な見た目とは裏腹に論理的でハッキリとした物の言い方をする姿は凛々しく、狂信的なファンがいたとかいなかったとか。
「林檎はともかく、私の前で美について語るなんて100万年早いわよ。ねー、トップちゃん」
「ヴォオオオオン」
テレネ様はアストーン様の奥様で、かわいいペットを3匹飼っておられました。
トップちゃんは特にお気に入りの300歳になるケルベロスです。いつも歯に血を湿らせておりましたが、はてさて何を食べていたのやら。テレネ様も、アストーンが一目惚れしたというだけあり大変美しい方でございました。その代わり性格は・・・いえ、ここは聞かなかったことにしてください。
「まあまあ、御三方。ここは祝いの席ですぞ。ここはアストーン家筆頭執事・カルデラめに免じてお控えくださいませ」
このままでは収拾がつかないと感じた私は、差し出がましいようですが諫めさせて頂きました。なにしろその日はとある結婚式の真っ最中で、アストーン家としては立派にこなす責任がございましたから。
「・・・わかりました。今日はカルデラさんの頼みを飲みます。
その代わり、ハッキリさせて下さい。一体だれが一番美しい女神なのか」
女神様はどなたも非常に気高い精神をお持ちです。
私などの願いを受け入れてくださったのは、ひとえにアストーン様のご威光に他なりません。
しかし、やはり白黒付ける必要があり、後日に再び来場者の方にお集まり頂くことにしました。
「みなさま、再びご足労頂きありがとうございます」
今にして思えば、すべてがひとつの方向を向いていた気がします。
あの林檎、あの結婚式、あの水晶・・・あの・・・。
「それでは、”後夜祭”をはじめたいと思います」