第五回ゲスト 摂政ちゃん
「はーい、第五回魔王さまラジオ。MCの側近でーす」
「……………………」
「いやなんか喋れよ」
「ちょっと待って今台本読んでるから」
「なんで今読むの?」
「側近さん、魔王さまに失礼です。敬語を使ってください」
「こんなのに敬語なんていりませんよ」
「こんなのてあーたね」
「今日のゲストは摂政さんでーす」
「初めまして、摂政です」
「摂政さんは魔王さま付き三人娘の一人で私、専属メイドちゃん、摂政さんですね」
「魔王さま付きと言っても私は自分の仕事がありますのでほとんど魔王さまとはご一緒しておりません」
「コイツ仕事しねーから」
「コイツってあーたね」
「摂政さんはメイドとしてお城に来たんですがその後腕を買われて摂政にまで登りつめるという異色の経歴です」
「まさかの四天王飛び越えて摂政だからね。この決議出したとき四天王から大ブーイング食らったわ」
「異例でもありますからね。本来お城ではその職に就いたら原則として生涯そのままとなっているところを魔王さまがひっくり返したワケですから、それも魔王さま特権で」
「実力あるならルールも時には破るものだよ」
「褒められっぱなしで恥ずかしいです」
「確か摂政ちゃんは普通の家の出だよね? 血統も何もないのに突然変異がごとく有能だよね」
「言い方ぁ」
「お構いなく。確かに私の家系は一般階級で両親も祖父や祖母もいわゆる普通に働くサラリーマンです。兄弟姉妹も平均的能力で一般企業に就職しています」
「驚くべきは政治方面の能力だけではなくて戦闘力も四天王の皆さん以上なんですよね」
「血統や才能が物を言うこの世界ですから。たとえメイドといえどもそれなりに強くなくてはなりません。もちろん魔王さまよりは強くありません」
「四天王の連中それ知らんかったらから決議通す条件にタイマンして全員倒せだもんな」
「で見事全員に勝ってしまったと」
「魔王さまのおそばに仕える身として当然のことをしたまでです」
「四天王の皆さんはメンツ丸つぶれでしたね」
「まーアイツらは特別枠だからね。4大元素を持つ各部族の最強が選ばれるっていう」
「四天王の皆さんは役職も階級もだいぶ下だった摂政さんを見下しまくって無事無様に全滅するという」
「あとでチクッとこ」
「大変申し訳ございません嘘ですごめんなさい」
「まーいい薬だったんじゃね? 確かに実力はあるけど幼い頃から蝶よ花よで甘やかされてきたからな。天狗になってた鼻っ柱へし折られてちょうどいいくらいだあよ」
「摂政さん、ぶっちゃけどうやって強くなったんですか? 何か特別な訓練があったりすごい師匠がいるとか?」
「いえ、特別なことは一切しておりません。道場へ通っただけです」
「道場?」
「道場に通って、どうじょー。なんつって」
「辺境の小さな街の、とある道場です。大変良くしていただきました」
「辺境に道場なんかあったっけ…?」
「梁山泊」
「へっ?」
「梁山泊だよ、辺境にある道場は。そうかいあそこ行ったんかい」
「おや、魔王さまもご存知なのですか?」
「あのへんはオジキが面倒見てるんだが、昔むかしある日、世直しの旅の武術家ってのが流れてきてな。歳も食ったし道場を開きたいとかでオジキの館を尋ねてきたって話だ」
「はい、長老さまにそのようにお話を伺いました。魔王さまの叔父さまは快く受け入れてくださり、道場を開いた際には自分にも指導をすることと引き換えに無償で一切を提供してくれたと」
「ひえー。魔王さまの叔父さまって良いお方なんですね。この人はこんなんなのに」
「こんなん言うなや」
「今でも週末は通っております」
「それにしても梁山泊かー。あそこの鍛錬受けてよく死ななかったね」
「えっ? なにそれどういうことですか?」
「実はあそこ人気無くてな、その原因が頭のネジ何本か外れてるみたいな鍛錬らしい。入ったって3日と持たない聞いたが」
「オイオイ」
「いえいえそんな激しい厳しいものではありませんでした。少々個性的ではありましたが3日と続けられないような内容ではありません」
「たとえば?」
「走り込みや素振りです」
「なんだ普通じゃん、うん」
「はい。石地蔵を背負って郊外を一周する、木の葉が切れるようになるまで素振りする、といったごくごくありふれた内容です」
「うん」
「うん?」
「どうかなさいましたか?」
「オジキの辺境の領地って魔界の3分の1くらいあるはずなんだけど…」
「葉っぱって素振りで切れるものなの…? 手刀じゃなくて…?」
「『比較的に一般的』と伺いましたが…一般的ではないのですか?」
「うん普通じゃないね」
「摂政さんなんてましてやダークエルフですよね? 魔法や魔術特化なのにそんなところに通って大丈夫だったんですか? いや大丈夫だったから勝ったのか…」
「もちろん途中何度か挫けそうになりましたが、長老さまのお孫さんに何度も励まされ通い続けることができました」
「なんかこう、ラジオじゃ伝わらないんだけどさ、外見的にはそんな凄い体格には見えないんだけど」
「そういえば、夏休みに南国の島へ女子会で行って海で遊んだときも、相変わらずスタイルいいなーとは思ったけど筋肉ゴリゴリしてませんでしたよ」
「はい、表面的にはそれほど変わりありません」
「ちょっとちょっと、海に南の島へ遊んだってなんで俺誘ってくれないの? 皆水着なんだよね? 薄着なんだよね? 飲み会したんじゃないの?」
「だって覗きとかセクハラするじゃん、下手すりゃ襲われるじゃん」
「うんそうだよ?」
「コイツ…」
「今ではその修行の成果も使うことなく平和でいるので少し寂しくあります」
「そう? じゃ腕相撲でもしてみる?」
「絶対負けるって魔王さまも」
「いやいや素ステであーたに負けてるつってもまさか摂政ちゃんには負けてないでしょwww 摂政ちゃんジャケット脱がなくて大丈夫? スーツじゃやりにくいよね」
「いえ、魔王さまの御前でスーツを脱ぐなどいたしません」
「ええ…ホントにやるんですか? カントクぅー?」
「『面白そうだからカメラ回します』というパネルが」
「ええ…。じゃあ組み合って…、レディー、ファイっ!」
「ハァッ!!!!」
「ンぐえっ?!!! えっ、あれっ?」
「ほれ見ろ言わんこっちゃない」
「ちょちょちょもう一回」
「はい」
「レディー、ファイっ!」
「うおおおおおおおおおお!!!!!」
「ッッッッッッッヌッハァ!!!!」
「フッ…、手がああああ!!! おらの手がああああああ!!!!」
「すいません机に亀裂入ったのでこれまでで」
「いやいやちょっと待ってちょっと待って、今の本気じゃないから、30%くらいの力しか出してないから」
「バカは放っておきましょう。いやー摂政さん強いですね」
「ありがとうございます」
「いいなー、そんなに強くなれるんなら私もちょっと通ってみたいなー」
「でしたら私からお話を通しておきましょう。梁山泊は長老さまの他にも何人か達人の方々がいらして色んな武術を学べますし、間違って怪我したり死んだりしてもすぐに治ります」
「え? いやいや摂政さん死んだら治りませんよwww」
「大丈夫です、私も何度か死にましたが治りましたから」
「…え?」