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第十一回ゲスト 食堂のおばちゃん

「はーい今回も深夜放送の魔王さまラジオ。メインパーソナリティの側近です。今回は一年経ちませんでしたね」


「今思ったけど自分に【さま】ってどうなん? 同じくメインパーソナリティの魔王でーす。まあ実質一年経っててるよねてへぺろ」


「…そこは自称してないからいいんじゃないです?」


「そりゃそうなんだけどさ、ていうか自称してたら痛い人じゃん」


「いつものことじゃん」


「いや? いやいやいやいや?」


「ここまでで既にだいぶクズなエピソードあんのに」


「一番ヤベーのは『明日っから皆ランジェリーガーターベルトで』かな」


「……」


「ゴミを見る目やめてくれないかな。はい、ということで今回のゲストは食堂のおばちゃんです」


「何がということでなのか分かりませんが、食堂のおばちゃんこと料理長です」


「深夜にすいません」


「いえいえ」


「べーつに謝ることなくね?」


「誰のせいだよ誰の」


「深夜のミッドナイト感ええじゃん。夜ふかしってしちゃいけないことしてる背徳感があるからええのよ」


「無職同然の学生が深夜ラジオやりたい放題とか何言ってんだコイツって当時思いましたよ」


「魔王さまは夜型ですから」


「夜行性種族みたいに言わないでくださいつけ上がるから」


「べーつに学校とか行かなくてよくね? 習ったこと使わねーじゃん」


「仮にも魔界のトップがそういうこと言うのマジでやめて。えーとですね、毎度お馴染みなんですが料理長にはまずお仕事の紹介をお願いします」


「中間管理職です」


「雑い」


「ざっつらいと! 雑いだけに!」


「舌の根引っこ抜くぞ」


「ごめんて」


「中間管理職と言っても毎日の仕込みと仕上げは私がしております。城の職員はかなりの数ですのでそれぞれ部署ごとに分業し、統括するのが私です。魔王さまのお食事だけは私が一人で担当しております」


「ずばり魔王さまの嫌いな物は?」


「セロリとナスです」


「ただし醤油にひたした焼きナスとビールは好き」


「いらんこと言うなや。いくら魔界の成人が15だからっておっさんくさ! おいオッサン!(笹沼vc)」


「オッサンじゃない!(子安vc)」


「魔王さまは嫌いな物が少ないので大変助かっております」


「料理長っていうとやっぱりそういう献立って大変なんです?」


「いえいえそんなことはありません。食堂を利用なさる方々も嫌いな物が無いので自由にさせてもらっています、…今は」


「今は?」


「政権交代する前はやっぱ女ってだけで舐められてたんだよね。でしかも食堂職員て非戦闘員だからなおさらね。男だらけの職場で女が食堂やってたらやっぱり絡まれるワケですよ」


「ガラ悪いですね」


「クレーム対応係は料理長である私と副料理長でしていたのですがやはりどうしても絡まれる食堂職員が出ていました」


「んで政権交代して俺が魔王になった後、首になるからって絡みまくる連中とか増えたからさ。やりかえしちゃっていいよって許可出したのよね」


「おや、魔王さまにしては珍しく良い人エピソードですね」


「俺はいつでも良い人だよ?」


「ハア?」


「食堂職員に絡む方々は非常にマナーの悪い方々ばかりでしたので、まずテーブルに着くところから直していただきました」


「具体的にkwsk」


「手をナイフで机に固定して口を器具で固定させていただきました」


「非戦闘員とは…」


「苦手な物嫌いな物だけ食べていただきました。悪いかと思いまして最後は必ずスープをお出ししました、100℃で」


「ダチョウ倶楽部のおでんかな?」


「突然そんなんするからえ?何それ?って逆らったらあかんみたいな空気になって食堂で絡むの無くなったよね」


「シンプルに恐い」


「皆さんたいへん魔王さまには感謝しております。今ではいつでも刺さるよう腰にナイフを用意することも許可されているので」


「おっかないわ!」


「人間界でやったら一発不祥事案件だけどここ魔界だから」


「あの人間界のボンクラボンボン王子はなんと?」


「イイネ!だってさ」


「いやイイネじゃねーよ」


「王子は好き嫌いが激しいので献立に困ります」


「だってよ王子」


「えー、人間て雑食のわりに好き嫌い多いんですね」


「今では魔界も雑食が増えましたが人間は好き嫌いが多いですね。その点魔王さまは少ないので献立にもバリエーションが増え困らないです」


「なるほどねー…。ん?」


「どうした側近」


「あのボンクラ王子ウチの食堂に来てるの?!」


「はい、たびたびいらしております」


「うぇ?!」


「アイツ庶民上がりだから格式ばったというか肩肘張るようなマナーとか無理なんだっとさ。ウチそんなん無いから」


「いやダメでしょそんなほいほい来てたら」


「そんなことはありませんよ。いまや魔界人間界の戦争も幾星霜も彼方。魔界人間界は良きビジネスパートナーですから」


「いやそうじゃなくって仮にも王子なのにそんなんがホイホイ城抜け出して魔界来る?」


「来るんじゃない? アイツはビザもパスポートもいらない顔パスだし」


「あかんやん!」


「お前向こうの爺やさんみたいなこと言うなあ」


「向こうのみたいなとは?」


「王子のやつ金払ってねーからツケてんだけどその金額たるやで爺やさんの血圧が上がるみたいな。しかもアイツ無断でこっち来てるみたいだし」


「追い返せや!」


「私は追い返す立場にありません、料理長ですから」


「俺も追い返す立場にないかな、俺もちょくちょく遊びに行ってるし」


「行くなや!」


「ツケ払っといてね」


「お前もかい!」


「そろそろ質問コーナーでしょうか」


「それな」


「えー、最初のおはがき…いやこの時代におはがきってどうなの?『どうやったらそんなに料理が上手になるんですか?』だそうです」


「女の子っぽい質問だね」


「料理が上手に…ですか」


「実際作るだけなら今は包丁もいらない時代になってますからね。ただ用意された材料を使っても皆似たような味にしかならないみたいな」


「とはいえ基礎基本知らないのにアレンジしてもマズメシだしな。オカンがそうだけど」


「オカン言うなや。お妃様がマズメシ?」


「まずレシピ通りに作るの初めてなのにアレンジ♪とかやりだすから」


「一番ヤバいパターンキタコレ」


「上手くなるには料理に限らず、オーソドックスな方法に慣れることが第一ですね。最初は包丁や調味料のような加減や使い方を覚えなくとも良いのです。まず作るという行為に慣れてください。それから道具や調味料を使えば良いかと」


「オカンはカレーにレモン一個突っ込んだからな」


「イケ…なくもないかもと思ったけどまるまる一個は無理でしょう」


「しかもそのまま」


「そのまま?!」


「道具や調味料もまずは野菜炒めなど簡単なものから慣れると良いでしょう。徐々に覚えることによって選択肢が増えます。なにより食堂では味が単一になりにくいよう努めているので、食材は農家さんや市場に赴いて直接仕入れ、市販されているカット袋は使わないとしております。スーパーも行きません。そのため調理にも食材を活かす高度な技術が求められていますが、誰しも最初は指を切ります」


「結局は小さいことから努力してねってことね」


「ワープ進化するにしてもそれまでの進化を過程を踏んで重ねてますからね」


「単一的になりやすいものが悪というワケではありません。決して不味くはないので大衆に広く長く行き渡りますし、コストで言えば単一的なものの方が良いのです。が、美味しいと評判を頂くには厳しいのです」


「切実だわあ。まあウチは必要なら全部経費だから」


「企業じゃないから出来るコスト度外視ですね」


「食材に限った話じゃないけど、なんにしても他人の努力=コストだからね、それは値切るなとは言ってあるね」


「なんだろうクズ魔さんが良い人に見える」


「クズ魔言うなや」


「食堂職員も感謝しております。好きな食材、好きな道具、好きな調理法、好きな献立。そして良い評判をくださる城仕えの皆様。花開く笑顔を見ると明日もその笑顔が見たいと思うのです」


「…なんか良い話で終わっちゃってんですけど」


「それが何か問題が?」


「もうちょっとこう、あるでしょ? 魔王さまのゴミエピソード」


「ゴミ」


「魔王さまの良くない点ですか? 欠点が無いことでしょうか」


「魔王さまに欠点が無い…だと…?」


「そのリアクションおかしくない? 欠点無きゃいけないの?」


「ただ、魔王さまには好き嫌いがわずかにありますが何もおっしゃってくれません」


「あー、それはまずい」


「え、なんでなん」


「そして人間界の王子の口に突っ込むのです」


「草」


「口に合わなくても残すのはいけないかなって」


「自分で食べろや」


「いや〜キツいっす」


「食堂での魔王さまは欠点が無さすぎることが欠点ですね」


「どないせえっちゅーねん」


「敢えて申し上げるならおっ始めるのはベッドの中にしてください」


「始まっちゃったのはしょうがない」


「しょうがなくないわ! 食堂でなにしてんだ!」


「ナニ致してる」


「もうやだこの上司」

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