二十一話:猫猫戦隊、ニャンニャンジャー
「シン、これ美味しい、です!」
「だろ、俺の故郷ではタコ焼きっていうんだ。ほら、こっちもどうだ?」
「これは……魚……です?」
「食べてみな」
「……ハム。…………っ!? こ、これは! 中から黒くて甘いものが!」
「たい焼きって言うんだ。どうだ、上手いだろ?」
「…………(コクコク)!!」
口いっぱいにタコ焼きとたい焼きを頬張り、目を輝かせながら幸せそうにする雪風。
なんだこの生物、可愛すぎる。
そして、俺が雪風に懐かしい食べ物を紹介している横では、
「キシャァァ! また、破れたにゃあ! これ、全然うまくいかないにゃぁ……」
「あ、グラム殿、これは表裏を逆にして持ってみてくだされ」
「……こうにゃ?」
「はい、そうです。あとはそうですね……少しだけ水に濡らすと破れにくいでござる」
「濡らすのにゃ!? で、でも物は試し……やってみるのにゃ!」
グラムが、紫苑に金魚すくいのレクチャーを受けていた。
俺個人としては、緊張した時に出てくる猫爪にも問題があると思うのだが……まあ、焦らなければ爪がポイに当たる事もないだろ。
結局グラムは、金魚を二匹取って喜んでいた。
普通に飲み込みが早い。あ、金魚すくいと言っても、日本のとは違うぞ? 金魚の大きさが五倍くらいある。
正直、金魚というより食べられそうな小魚だ。
「流石でござるよ、グラム殿!」
そう言う紫苑が取ったのはたった一匹、だが、その腕前は遠目に見てもかなりの達人だった。
そのあと、わざと失敗をしていたのも、俺は見逃していない。
優しいな、紫苑は。
「シンッ、シンッ、あっちに白いフワフワがあるです!」
「え? ああ、あれは綿飴だな。食べたいか?」
「…………(コクコク)!!」
目を輝かせて、頷く雪風。なんだこの生物、可愛すぎる。財布の紐もゆるゆるだ。
雪風は、綿飴を食べてご満悦。「すごい、美味しい……そうだ、シンもあーんです」と言って、俺にも一口ちぎって渡してきた。
露天のおっちゃんのニヤニヤ笑いが、かなりイラッときましたね。
「…………うん、美味しい」
その後も何故か止まらない、雪風からの綿飴あーん供給(購入費用俺持ち)を受け続けながら、俺はこれまでの経緯を振り返るのだった……。
♦︎エピソードofグラム♦︎
「シン、いくのにゃ!」
「えっ、ちょ……」
……終わり。
突如として入ってきたグラムに腕を掴まれ、そのまま誘拐された。
♦︎エピソードof紫苑♦︎
「シン殿は行かせ……えっ? あぁっ!」
「シオンも来るのかにゃ? いいにゃ! シオンも知ってそうにゃ!」
……終わり。
俺を行かせまいと、グラムと反対側の手を掴んだ紫苑は、そのまま俺と共に連れて行かれた。
♦︎エピソードof雪風♦︎
「……急に何の用だよ、グラム」
「そうでござるよ。話がまとまりそうでござったのに……エミリア殿に謝った方がいいですよ?」
「にゃっ! ま、まさかグラム悪いことしちゃったにゃ!? そ、そうにゃ……シン達にも用事があった筈にゃ……うみゅ、やっぱりいいにゃ。グラムは謝りに行くにゃ……」
「「…………」」
…….何か、事情がありそうだな。
破天荒ではあるが、グラムは獣人族の族長候補。つまり、族長になる器がある人物という事だ。
周囲を顧みず、自分のことだけを考えるような人間ではない。比重が、人よりも少しだけ利己に偏ってはいるが。
「……まあ、先生がプレートを見る時間、気まずくなりそうだったからな。別にいいよ」
「……何か事実があるのではありませぬか? 拙者たちであれば、話を聞きまするが」
「本当にゃ!?」
「ああ。だけどその前に、エミリアたちには謝りに行かないと……」
「それであれば──」
「その声は!?」
「はい、どうも雪風です。先生たちには、雪風が代わりに事情を説明し、謝っておいたです」
突如後ろから現れた雪風が、心配ないという意味か、サムズアップしながらそう言った。
いつもと変わらず無表情に見えるが、どこか誇らしげだ。「ふんすっ」とか言い出しそうだ。
だが……実際有能すぎる。
俺と紫苑は顔を見合わせ、アイコンタクトで意思疎通。グラムに先を促した。
すると水に濡れた猫のようにしょげていたグラムが、まるまる内に回復、腰に手を当て、
「ふっふぅ! よくぞ聞いてくれた! 遥か彼方の森、その奥深くよりやって来たグラム様と!」
「正直、出身地とか覚えていない雪風」
「え、待って何が起きたの?」
「ワクワク、ワクワク!」
「紫苑!?」
なんか、名乗りを上げ始めた……。おれも、「やーや我こそはー!」とかしないといけないのかな……!
混乱して紫苑を見ると……この子目を輝かせているじゃないですかー。
「我にゃ、共に異国の大地を踏みし者!」
「休みにどこ行けばいいのか分からない」
「…………ん?」
「いいないいないいな!」
「……………………おーい、紫苑さーん」
「だから、道案内を頼むにゃ!」
「です」
「ニャーーー!!」
「にゃー」
指先まで意識したヒーローポーズを取るグラムと、その前で片膝をついて猫ポーズを取る雪風。
だが、その表情は対照的だ。
堂々としたキメ顔で、やってやったぜと言いたげなグラムと、俯きがちで恥ずかしがり、やってしまったと言いたげな雪風。
少しの誤差もなく完璧に合っていたタイミングが、二人の練習量を物語る。雪風、お前何やってんだ。試合はどうしたんだよ。
「!!!!」
そして、目を輝かせて拍手する紫苑。
何この混沌な光景。
取り敢えず、一番見ていて害のなさそうな雪風に注視していると、雪風はどんどん顔が赤く染まっていく。
「〜〜〜〜! い、今のは忘れてくださいです」
フードを深く被り、さらに若干俯く事でその表情を隠した雪風。
黒歴史として、自分の中で語り継がれるのだろうな。これからの人生、悶え死にしないよう頑張ってくれ。
「いいないいないいな!」
「……紫苑は、特撮好きなのか?」
「特撮……でござる?」
「いや、ああいうヒーローっぽいの。決めポーズとか名乗りとか」
「はいっ。ヒーローと言いますか、やはり自分の正義のために戦うのは大好きです! シン殿に惹かれたのも、きっとそういう一面があったのでござろうな……」
「そ、そうか……」
な、なんか照れるな。
紫音が言っているのは、俺の、師匠エミリアレイ先輩の女神三柱の敵は全て敵理論なのかも知れないけど……。
それって、ただの自己中心的な思考じゃないのか?
「違いまする!」
「心を読まないで欲しいなぁ……」
「それではシン殿は、その女神三柱が強盗に入ったら一緒に強盗するのでござる?」
女神三柱まで読まれてたのか……って今はそんな場合じゃないな。いや、結構重要な事ではあるんだけど。
「いや、しないな。多分、どんな手を使っても止めると思う。……まあ、強盗なんて想像もできないけどな……」
「女神ですからね」
「やめてっ!?」
紫苑は、冗談とかではなく本当に他心通とかを覚えていそうで怖い。
「それで、結局お二人が言いたいのは……」
だが紫苑は、それ以上俺の心を読むような事はせず、二人に向き直った。
「王都をよく知らないから、案内してくれという事でござる?」
「にゃ」「です」
「…………」
この三人が一緒になるところなんて、俺も初めて見る。
俺は、言い知れぬ不安感を胸に……
「似合ってたぞ! 流石雪風だ!」
「わ、忘れてですぅ〜〜……」
そんな事より、雪風を揶揄うのだった。
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ところで、誰がどの色担当なんだろう……。紫苑は名前からパープル、かな?




