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十四話:忘れられた男

三日連続投稿!

ラッキースケベ(?)に挑戦してみましたが、どうでしたか?

 

「ほ、ほぅ……説明してくれるのじゃな、シン・ゼロワン死刑囚よ」


 死刑確定。

 と言いたいとこだが、俺には少し気になる事がある。

 こちらを見下ろすキラ先生の目は、俺を馬鹿にしている訳でも咎めている訳でもなかったのだ。

 いや、むしろ褒めているような……なんでだ?


「おいシン、お主その場で立ってみるのじゃ」

「セクハラです!?」


 驚いて、何故か雪風っぽくなってしまった。


「セクハラ……? すまぬの、妾は単に少女たちを守ろうと……」

「さては、俺が全裸だとは気付いていないフリをするつもりだなオメエ」

「ん? すまぬの、妾は耳が遠くて……」

「地獄耳という話は何処へ?」


 遠い過去は追いやられてしまったのか、それともこの数週間で本当に耳が悪くなったのか。

 まあ、十中八九俺を困らせたい冗談だろうが……。


「……分かりました」


 だが、全て俺が悪い。

 エミリアが心配だったからとは言え、そしてそれをキラ先生は知っているが、そんな事は関係ない。

 俺が、風呂に入るエミリアたちを押し倒した。それが事実で、それが全てだ。


「なっ…………や、やややややけに堂々としておるなっ。……な!」

「アンタは動揺しすぎでしょう。別に、キラ先生なら慣れてると思ったからですよ」

「な、慣れ!? も、もももちろんじゃぞ! 偉大なるりゅうが……えっと……その……男の裸くらいで狼狽える(うろたえる)筈もなかろう!」


 めっちゃ狼狽(ろうばい)してるけどな。

 ああ、あと誤解しないで欲しいが、俺に羞恥心がない訳じゃない。

 ただ……師匠と住んでいる頃、毎日のように服を猿に取られて全裸で奪い返していたから、少しだけ慣れている。

 そもそも、ここで俺が恥ずかしがる方がおかしいというか失礼な気がする。

 分かりやすく言えば、俺に恥ずかしがる権利はないという事だ。  

 だが、流石にタオルがあるのに巻かないなんで事はしない。

 まあ、見ても嬉しくないだろうしな。

 俺は、さっき落としたタオルを拾おうとして……


「…………あ」


 それを目にして、気が付いた。

 俺が腰に巻いていたタオルは運の良い事に、エミリアと紫苑の…………まあ取り敢えずアレと呼ぼう、アレを上手いこと隠していた。

 だが、これを俺が巻いたらどうなるか。

 そう、隠している布が取れたら、隠せなくなる。


「詰んだな。シン・ゼロワン」


 浴室の中に、他のタオルは確かにあった。だがそれは、二人が身体に巻いていた物や、身体を洗った物だ。

 そんな神聖な物を、巻ける筈もない。


「…………」

「…………」


 赤くなった二人が、そっと目を逸らす。

 それはまるで、取っても構わないと言っているようにも見え……俺は仕方なく──


「──そう、これは不可抗力なんだ……」

「お主、まさか……っ」


 キラ先生が、目を見開いて(おのの)く。

 ……いや、個人的にアンタがなんで目を逸らさないのかが知りたい。

 エミリアと紫苑が俺に気を遣って見ないでくれているのに、キラ先生は目を閉じるどころか目を開く。


「そうか……妾の講習の必要性あったかこれ?」

「? …………〈ストレージ〉」


 ブツブツ呟き始めたキラ先生を放っておいて、俺は亜空間から新しいタオルを取り出した。

 そしてそれを腰に巻いて、再び亜空間に手を突っ込む。


「えっと……あったあった」


 取り出されたのは、二枚の大きなバスタオル。

 それを、羞恥か恐怖か、まあ両方なんだろうけど、身を寄せ合ってプルプルと震える二人にかけてやり、俺はその場を後にする……


「おい待て」


 なんて事が許される訳ないよね〜。

 ガシっと後ろから肩を掴まれた。


「先生…………俺が言うのもなんですが、場所を変えた方が良くないですか?」

「本当にお主が言うでない! ううむ、しかしそうじゃな。場所を変えるか。逃げるなよ?」


 底冷えのする声で俺に釘を刺したキラ先生は、床で放心しているであろう二人の元に駆け寄る。


『であろう』ってのは、俺は振り返る事が出来ないから、イメージでしか分からないって事だ。


「うむ、扉は閉めた。お主らも興奮して汗をかいたであろう? それとも冷や汗か? まあ、どちらでも良いが、話をする間は湯船にでも浸かっておれ」

「は、はい……」

「分かったでござる……」


 な、何を話してるんだ?

 キラ先生が、最後、俺の耳元に防音の魔法をかけて行ったせいで、会話どころか物音一つ聞こえない。


「……の、のお、妾も入って良いかの……? 実は、ここまで飛んでくる時に身体が汚れてな」

「別に構いませんよ。お風呂は広いですから」

「すまぬの……。スライ……じゃなかった、ネバネバ生物の感触が残っておるのじゃ……」

「シオンちゃんの前では禁句ですからね!」

「わ、分かっておる。すまぬの、紫苑」

「…………え、あ……大丈夫、で、ござる……」


 聞こえてこないが、何故か背筋に悪寒が走った。

 まるで、青い物体が押し寄せてくるような……そう、確かあれはスライ……いややっぱなんでもない。


 ♦︎♦︎♦︎


 スライムでベトつく身体は、流石の妾も気持ち悪い。

 持ち主であるエミリアに許可を取った妾は、服を脱いで身体を洗う事にしたのじゃ。


「…………」

「…………」

「どうしたのじゃ? そんなにジロジロ見おって……会話はシンに聞こえんから心配しなくて良いぞ?」


 念入りに身体を洗っていると、湯船に浸かる二人から強い視線を感じての。

 気になって見てみると、やはり予想通り強い視線を……確かに妾は背丈の割に胸だけはある。だが、そこまで変なことかの?


(若い者の考えることは分からないのじゃ……)


「ふぅ……」


 身体を洗い終えた妾は、湯船にゆっくりと浸かった。

 んんっ〜〜! この感じ……日頃の疲れが癒されるのぉ……。

 ……っていかんいかん、今は二人のことじゃったな。


「紫苑、エミリア。シンに言いたい事はあるか?」

「言いたい……事?」

「うむ、なんでも構わぬ。例えば……」

「「例えば?」」


 例えばそうじゃな……


「責任を取れとかでも良いと思うぞ?」

「確かに……婚約破棄した私はともかく、紫苑ちゃんなら言えますね」

「わ、わわわ私ですか!?」

「え?」

「む?」


 何か、今紫苑に違和感を感じたが……なんじゃ?


「あ……コ、コホン。気のせいでこざる。そ、それよりも拙者なら大丈夫とは……」


 しかし、紫苑は何事もないと……ふむ、妾の考えすぎかの。


「シンは、王女が元婚約者で現彼女という、常人では中々手が出しにくい相手じゃ。だが、上級貴族の令嬢から見れば、是非とも手に入れたい相手でもある」

「え、そうなの……?」


 そう、心配そうな顔をするでない。

 シンにとってのお主は、ただの護衛対象ではないのじゃから。それに本人たちが気付いているかはともかく、な。


「そうじゃな。まず、婚約も付き合いも非公式なもの。公的な力は何も持たん。横から奪っても上級貴族であれば何も問題はない」

「拙者のような平民は…………」

「楽な道ではないな。王族関係者はまだしも、上級貴族を敵に回す事になる」


 少し言い過ぎじゃが、あながち間違いでもない。


「でも、なんで上級貴族の女の子たちはシンのことを狙っているんですか?」

「それは……お主らも知っておるであろう。護衛としてのシンの力を」

「シンの力……お風呂場に気付かれずに乱入する力?」

「やめてあげるのじゃエミリア……」


 シンが聞いたら泣くぞ?

 それか、泣く権利などないと言って土下座を始めるか……ふむ、これは良いネタができたかも知れんの。


「ふふ、すみません。シンの力といえば、一人で王女の護衛を務める、とかですよね?」

「それは……拙者も何度か聞いた事がござりまする。王女の護衛を、一人で受け持つ魔術師がいると。シン殿を見るまでは単なる噂かと思っておりましたが……」


 まあ、流石に夢みたいな話じゃからな。普通はあり得ん。


「そういえば、私に挨拶に来る子の中には、シンの事を聞いてくる子も多かった……!」

「そうじゃな、シンは公の場にはほとんど姿を見せなかった。そのせいで『実力を明かさないなんて頼もしい!』というふうに人気が出た」

「…………」

「…………」

「な、なんじゃその目は!」

「い、いや……似合うなあって……」

「は、はい……お似合いでござる。……本当に百歳以上でござるか……?」


 う、うるさいの!

 妾の耳には聞こえておるぞ! 


「つ、続けるぞ! つまり上級貴族の娘たちは、特に制限もない上に有能な護衛が夫という裏切られない形で手に入るのじゃ!」

「それは…………凄いでござる」

「あれ? でもそうなれば、シオンちゃんもシンと一緒に働いて、結婚とか出来ないのかなぁ?」


 ふむ……確かに、一夫多妻、多夫一妻はそれなりに常識的なことじゃな。

 じゃが……


「それは、お主のような奴が主人の時だけだと思うぞ……? 普通は、裏切られたくないから護衛には結婚させん」

「そ、そうなのでござるか!?」

「そうじゃ。だから妾は、婚期を逃さぬうちにシンを捕まえておけと言っておるのじゃ。紫苑は、このままだと護衛じゃろ?」

「は、はい……」


 シュンとしてしまう紫苑。

 ふむ……紫苑は、いつか結婚をしたいようじゃな。というより、結婚に憧れていると言った方が良いか?


「でも……シオンちゃんって可愛いですよ?」

「可愛い……拙者が……や、やはりそうなのでござるか……?」

「まあ、確かにそうじゃな。では、責任を取ってもらう必要はないか……」

「そ、そうでござる! そもそも、拙者がシン殿と契る理由がござりませぬ!」


 ほう。ほうほう……。


「「…………」」

「そ、その目をやめるでござる!」

「はは、そう泣くな。妾たちも虐めたい訳ではないのじゃ」

「うん。結婚する理由なんて、家のためか好きだからか、その二つだけでしょ?」


 む?


「……まあ、そう深く考えなくとも良い。男はシンだけではないし、焦らずとも相手は見つかる」

「いや、だから別にシン殿を好きな訳では……」

「「それはない(ね)(のじゃ)」」

「本当でござる! 恋慕と憧憬は別物、拙者のは単なる憧れでござる! シン殿のように強くなりたい、その一心でござる!」


 あまりに必死な否定。

 流石に、可哀想じゃな……。


「……知っておる」

「…………ふえ?」

「お主のが恋愛感情じゃない事くらい分かるわ。妾を誰と思っておる。数百年を生きる龍じゃぞ?」

「では、先程のは……」

「からかっただけじゃ。……じゃが、責任という話は冗談ではないぞ? あんな辱めを受けたのじゃ、十分資格はあるし、シンも嫌な顔はせぬ」


 冗談半分、半分は本気ではあったが、な。


「嫌な顔をしない……で、ござる、か……」


 考え込んでしまう紫苑。

 好意は好意でも、憧憬に似たもの。それは紫苑の言った通りじゃが……それが、恋に変わらんとも分からん。

 今は、翻弄して悩みに悩ませるのが、教師である妾の役目じゃな。

 そう思うと、なんだか楽しくなってきたの。案外、妾は教師向いておるのかも知れんな?


「ふふ、こうして話すのは楽しいのう。あ、これって、妾も何か言えたりするのかの?」

「権利はあると思うでござるよ?」

「私も大丈夫だと思います!」

「ふふ、そうかそうか……では何がよいか……」


 のぼせて頭が働かなくなるまで、妾たちは話を続けたのじゃった。


 ♦︎♦︎♦︎


「…………あのー……」

 俺、いつまで放置されるんですかね……?


教師としてのキラ視点の時は、遠くから見守っているような文にしています。(なのでちょっと読みにくいかも……)

実は、シン、エミリア、紫苑、キラは、一人称の文の書き方をそれぞれ変えています。

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