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十三話:死刑判決

二日続けての投稿です。


 

「えっ、ちょ、さすがに……死ぬっ」


 右から左から上から下から、前からになんなら後ろからも魔法陣によって魔法が飛んでくる。そして、全て俺に被弾する。

 うん、これ作った奴性格悪すぎだろ。

 エミリアの安全を確かめたいと焦れば焦るほど、死角の罠に引っかかり、体勢を崩したところに一斉掃射。


「うんっ……増強は必要、なかった、かな!?」


 幸い致命傷は食らっていないが、もう既に制服はボロボロだ。師匠のローブを着てこなくて本当に良かったと思う。

 炎の罠とかは、特に俺の服を燃やしにくる。

 制服を改造して耐久力を上げていなければ、今頃は素っ裸、まあその前に多分死んでいるけど。


「くそぉっ、俺こんなに仕掛けたっけ!?」


 まあ、それでも制服はボロボロ。あと少しで最終防御も突破される。

 だが、その時、


「と、止まった……?」


 魔法の掃射が止んだのだ。

 だが…………


「進みたくねえ……まあ、一応回復しとくか」


 無詠唱で〈ヒール〉をかけ、身体の傷を回復させた俺は、どうしようか迷っていた。

 俺の性格的に、ここで終わりな筈がない。

 終わったと思ってスピードを上げた侵入者を確実に仕留める何か、それを用意している筈だ。

 ちなみに、ここで止まっているのは、後ろから罠が作動する心配がないからだ。うん、全て引っ掛かったからな。

 製作者的に喜べば良いのか、悲しむべきか……。


「でも、行くしかないか!」


 悩むのも時間の無駄だ。

 俺は意を決して〈飛翔〉の速度を上げ……


「ですよねぇ!」


 スライム再襲。

 あの悪夢が蘇る程の、大量のスライムが襲いかかってきて……


「アシッドスライムかよ!?」


 取り付いた俺の服を溶かす。上だけでない、下着も同時に溶けていく。

 待てお前ら、せめて女子の服にしろ! 男の服を溶かして何になるんだ!


「色々な想いを込めて! どけぇぇぇ!」


 魔力放出。

 体内の魔力を周囲に放出する事で、取り付いたスライム共を吹き飛ばす。

 運の良い事に、吹き飛ばされたアシッドスライム共はその先の罠に引っかかり……


「えげつねぇ……」


 一瞬で蒸発した。

 制服を奪われて素肌の俺じゃ、身体強化をしてもただでは済まねえぞ、おい。

 君たちの尊い犠牲に感謝する。……いや、しかし罪悪感すげえな。


「だけど、我ながら有効な手段だな……」


 調子に乗って本気を出しすぎた過去の俺に感心すれば良いのか、それとも「お前は悪魔だ」と蔑めば良いのか。


「そんな事よりエミリアは……風呂場。くそっ、反応は二人か!」


 微かに聞こえた水音から、居場所を特定。二人分の気配は、エミリアと刺客だろう。

 風呂場……まさか風呂に入っている時に襲われたのか!?

 くそっ……イライラする! 



「オラッ!」


 流石に全裸はまずいので、〈ストレージ〉からタオルを取り出して腰に巻いた俺は、磨りガラスの扉を蹴破って浴室に飛び込む、


「お守りする!」


 が、その瞬間、聞き覚えのある少女の声と共に、俺の目に何か白い布が被せられた。

 これは……濡れたタオル?


「この悪党!」


 悪党? 俺が?

 い、いやそれよりも……


(何この背中の感触!?)


 背中で、俺は誰かと密着していた。

 その中でも特に感じる二つの膨らみ…………決して大きくはないが、確かにそこに……っていやいやそういう事じゃなくて!

 えっとこの状況……腰にナニが当たっているのかは気にしない方が良いんだよな……いやだから違うって!


「ぐる……じぃ……」


 そうっ、呼吸が出来ないんだ!!

 後ろに引っ張られているせいで、俺の喉が狭まって呼吸がしにくい!

 ああっ、てか分かった!

 俺にくっついてるのって紫苑じゃねえか!?

 背中やら腰やらに感じる感触のせいで気付かなかったが、この声は紫苑だ。

 となると、この場にいたのはエミリアと紫苑…………。


(あれ? 俺もしかして終わった?)


 もしかしなくても終わりだな。

 一国の王女とその友達が仲良く入浴しているところに、上半身裸の男が乱入か……。

 ふぅ……俺の人生色々あったな。


「シン殿ぉ…………」

「おっ?」


 だがそこで、思いがけない事が起きた、

 このまま、首の後ろに感じる冷たい感触……クナイに刺されると思っていたが、紫苑が力の抜けたように後ろは倒れ込んだのだ。

 俺の腰の前でクロスしていた足も既に解けて、完全に気絶寸前だ。

 咄嗟に振り向いて支えようとしたのだが、そこで。


「ダメェーーーー!」

「ぐはぁっ!」


 目を覆うタオルが落ち、チラリと肌色っぽい何かが見えたと思った次の瞬間、俺は何者かに顔面を強く殴られていた。

 だが、これでも護衛。たとえ覗きをしたとしても、護衛は護衛だ。


「ほえっ?」


 顔にタオルが押し付けられた瞬間、無意識に攻撃を流そうとして、半身になってしまう。


 その時、運良く紫苑が手に当たったので、左腕で抱えた。


 タオルを押さえようとしていたエミリアは、俺にいなされた勢いのまま紫苑にぶつかる。


 紫苑を支えた俺は、エミリアに殴られた勢いとエミリアが紫苑にぶつかった勢いで、そのままさらに回転する。


 まあつまり、俺は紫苑とついでにエミリアを左腕に抱えた体勢でフラフラと回って……

 そして、前に倒れ込んだ。

 咄嗟に両手をついて、顔面から落ちる事だけは防いだが、次の瞬間頭に強い衝撃が。


「いっでぇ!」


 いつのまに蹴っ飛ばしていたのか、上から降ってきた風呂桶が俺の頭に直撃する。

 咄嗟の事で、落下の勢いに負けた俺は、顔を目の前の何かに突っ込んだ。


「ヒャっ!?」


 可愛らしい悲鳴。

 俺が痛みでクラクラする頭を上げると…………


「……へ?」


 視線の動きと呼吸が、一緒で止まった。


 ()()()()()()()()()()()()()()


 床についた俺の両手の間に、二人の呆気に取られた顔がある。

 まだ状況が理解できていないのか、二人ともポカンとしていて、


 そう、俺は全裸の二人を同時に押し倒してしまっていた。

 浴室の床に寝そべる全裸の美少女二人と、それに覆い被さるタオルを腰に巻いただけの俺。


 運の良い事に、俺の目を覆っていた長タオルが落ちた事によって、俺が拝む暇もなく二人の山頂は同時に隠れた。


 だが、他は。

 綺麗な鎖骨も、うなじも、お腹も、お臍も見えていた。

 お臍の下に目を向ける勇気はなかったから、さらにその下は分からないが……きっと何も身に付けていない。

 それは、全裸+タオルの俺以上に危険な格好だ。


「…………」

「…………」


 二人は、訳が分からずに呆然とする。

 風呂に仲良く入っていたら、突然、腰にタオルを巻いた男が入ってきたのだ。

 裸の付き合いとか以前の問題、普通に事案。

 それを王女様にやるなんて、地下労働を通り過ぎて、即刻死刑だ。


「シン……殿?」


 混乱から立ち直るのは、軍人である紫苑の方が早かった。

 目をパチクリさせ、純粋な子供のように首を傾げて何が起きているのか聞こうとしてくる。

 混乱から立ち直っただけで、まだ状況は理解できていないらしい。

 右腕の手首を掴まれ床に押しつけられているのに気が付いても、首を傾げるだけだ。


 彼女の裸身は、華奢だった。

 痩せ過ぎている訳ではない。程よく肉が付いていて柔らかいのは、さっき直接身体で知った。

 紫苑は、暁月紫苑は、文字通りの少女なのだ。


「シン……?」


 対してエミリアは、状況も理解できているようだった。

 ただ、俺と同じく、ここからどうすれば良いのか分かっていない。

 俺の視線から逃れるかのように、恥ずかしげに身を捩る。だが勿論、逃げられる筈もない。

 しかも、動くと胸のタオルがズレる事に気が付いてしまい、どうする事も出来ずに顔を真っ赤にする。


 エミリアの裸身は、幼い頃に何度も見た事があるが、それから大きく成長していた。

 一番変わったのは、勿論胸だ。(たいら)だったあの頃の胸は、大きすぎずの丁度良い大きさまで育っている。

 腰にはクビレも付いているし、恥ずかしげに吐く息は色っぽいし、あの頃とは随分と違う。

 普段、服を着ている時には全く感じなかったが、エミリアも、いつのまにか大人になっていた。


「…………っ」


 思わず、生唾を飲む。

 二人は、()()()()()()()()()


 レイ先輩の身体を拭く時とは違って、場所が浴室のなのも関係あるだろう。だけど、先輩で慣れたはずの俺でも、いとも簡単に目を奪われてしまった。


 ……レイ先輩の身体を拭く時は、腕や脚、背中や腹くらいで、服を脱がせる訳じゃないのも関係あるのかも知れないが、それでも二人は綺麗だ。


「シン殿……?」


 エミリアと紫苑の目が、俺の腰に巻いたタオルに向いた。

 不思議そうな目に映るのは、徐々に男の変化を遂げたせいで盛り上がってしまう白い布。


「どうしたの、シン? 辛いの?」


 エミリアが、俺の顔を見る。

 紫苑も、同様だった。

 二人とも、理性をフル稼働してるせいで苦しむ俺の表情を見て、心配そうな表情をしている。


 俺が二人を押し倒したこの時点で、俺にとっては最悪な事態だ。

 だが、悪い事には際限ってものがない。


「…………」


 その時、何か、小さな音がした。


「…………?」

「…………?」


 音が聞こえた二人が、徐々にその方向へと目を向けていく。

 真っ赤ではあったものの、どこか夢を見ているような二人の表情。

 しかし、やがてその視線だけが俺の顔から胸へ、そして腹部へと移動していくと、二人の目はこれ以上ないほどに大きく見開かれた。


 真っ赤では収まらないレベル、茹だったように赤く染まった頰。

 小刻みに揺れる瞳。

 喉の奥からは、か細く声にならない声が微かに聞こえた。


 二人が何を見たか、それを、俺はこの言い知れぬ解放感からいとも簡単に察する事ができた。


 風呂場に相応しい格好と言えばそうだが、流石にこの状況でそれは駄目だ。

 何故なら、俺のソレは完全に反応し終わったあとで……いや、今もなおさらに激しく主張を強めているのだから。


「……大丈夫っ…………じゃな」

「…………っ!」


 と、その時、脱衣所の扉が外側から開けられた。


 恐る恐る顔を上げると、口角をピクピクと痙攣らせるキラ先生と目が合った。


 さて問題だ、彼女は一体何を見たのか。


ヒント①俺は全裸


ヒント②混乱している二人の少女(全裸)


「ほ、ほぅ……説明してくれるのじゃな、シン・ゼロワン死刑囚よ」


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