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エピローグ2(後)

土曜日投稿すると言っておきながら、当日投稿ができなくてごめんなさい!

 

「この世界の人間じゃないんだ」


 そう言った時、彼女たちの反応は様々だった。

 どういう意味か考える者、俺の真意を測ろうとする者、ただただ唖然とする者、ハッと息を呑む者……。

 だが一つ、共通していることがあった。


 この場の誰もが、俺の言葉を冗談だと笑い飛ばすようなことはしなかった。重く受け止め、言葉の続きを待っている。


「俺と咲耶は、魔法の存在しない代わりに高い技術力を持った世界の、日本っていう国から来ているんだ。異世界転移をしたのは、十七歳の時。エミリアと会った時八歳児の姿をしていたのは、とある事情で若返ってしまっていたからだ」

「…………」

「エミリアとメアは、俺を同い年だと思っていてくれたのかも知れない。……でも、本当は違うんだ。身体は同い年でも、中身は大人だったんだ」

「「…………」」

「今まで騙していて、本当にごめん」


 俺は深く頭を下げた。

 許されないことだと思ったからだ。

 仲の良かった人が実は自分より年上でしかもそのことを隠されていた、なんて俺に嫌悪感を抱いてもおかしくはない。人間不信にもなるだろう。


 事実、俺が今回この話をしようと思ったのも、これに幾らか起因する。 

 エミリアに想いを寄せられるようになって、勿論その気持ちを今更疑うようなことはしないが、ずっとこの話をしなくて良いのかと思っていたのだ。


 エミリアからの好意は嬉しい。しかし、もし俺がエミリアと最初に会った時この話をしていたら、果たして彼女は俺のことを好きになってくれただろうか?

 答えは否だ。否に決まっている。


 みんなは、このことを聞いてどう思うだろうか。顔を上げた時、この部屋にいるのが咲耶だけになっていやしないだろうか。

 エミリアに嫌われなければ、なんて言っていた自分が馬鹿らしい。嫌われるっていうのは、めちゃくちゃ怖い。


 でも、それだけのことを俺は──


「私は、シンのことが好きだよ」


 その瞬間、俺は思わず顔を上げてしまった。

 すると、こちらを向いて少しだけ照れ臭そうに優しく微笑むエミリアと目が合った。


「友達とか、幼馴染とか、従者とかの好きじゃないよ? この好きは、結婚したいとか、一緒にいたいとか……ち、ちゅーしたいとかの好きなの」

「エミリア……」

「シンが言ってくれたから、私もちゃんと言う。……シンと違って、みんなに知られちゃってると思うけど」


 そう言ってエミリアは恥ずかしそうに笑った。

 エミリアはそこで言葉を終えず、「それに……」と続ける。


「私が好きになったのは、シンだからだよ? 護衛になったのが他の男の子でも、私は好きにならなかったと思う。若返っていたとか、そんなの関係ない。私が好きになったのは、シンの中身なんだもん」


 堂々と、そうエミリアは言い放った。

 俺の目を真っ直ぐに見つめて逸らすことなく、大胆な告白をした。


 もしかしたら俺は、エミリアの気持ちをみくびっていたのかも知れない。こんな事実が明かされたと言うのに、エミリアの気持ちは一切揺らいでいなかった。


「オレも……」


 と、その時、もう一人の被害者であるメアが口を開いた。


「オレも、気にしない。オレを助けてくれた時、おまえは本気だった。オレも、おまえの容姿を見て助けになりたいって思ったんじゃない。どんなに固く封鎖しても人の心にズカズカ踏み込んで来て、強引に、でも優しく連れ出してくれる。そんなおまえだからだ」

「メア…………」

「と、というかみんなはどうなんだ? さっきの話を聞いて」

「っ……」


 ちょっと泣きそうになったが、メアのその言葉で慌てて気を引き締める。


 そうだ、まだ話が終わったわけじゃない。

 子供のフリをしていたのはメアとエミリアに対してだけとは言え、みんなに話していなかったのは事実なんだ。どんな罵詈雑言でも受け止めよう。


 そう、心の準備をしたのに、


「拙者は何があろうと、自らシン殿から離れるつもりはございませぬ。そして拙者もまた同じく、好いているのはシン殿故」

「というか、今更嫌いになったりなんてしないにゃよ?」

「マリンはそれより、ニホン?の話を聞きたい!」

「むしろほぼ同い年と分かって親近感が湧きますね。魔法のない世界というのも気になります」

「まぁ、なんじゃ。いくら若返ろうが、人間である以上妾よりは圧倒的に年下じゃしのう!」


 みんな、優しすぎる。


「雪風とティーを受け入れてくれたシンに比べれば、このくらいなんてことないのです。だからどうした、なのです!」

「私には……よく分からない。……けど、好きなのは変わらない。だから、大丈夫」


 嫌われることを覚悟していたのに、みんな、気にしないと言う。

 本当に俺は、いい仲間に恵まれた。


 少し、泣きそうになる。


「よしよし、いい子いい子」


 と、頭が何かに包み込まれ、優しく撫でられた。

 ティーが俺の頭を胸に抱いて、『いい子いい子』しているのだ。突然のことに、俺は戸惑う。


「ティー?」

「こうされると、落ち着く。……落ち着いた?」

「っ……ああ、ありがとな。元気が出た」


 自分がやられて嬉しいことを、俺にしてあげる。

 ティーが考えていることはきっと、そんなとてもシンプルなことだろう。


「ん、良かった」


 ティーに頭を離してもらい、俺は再びみんなへと向き直る。

 そして、とても簡単に今の気持ちを表した。


「これからも、よろしくな!」


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