エピローグ2(前)
おしくらまんじゅうのことは一旦忘れることにして、俺たちは再び席に座り直した。
ただし、少しだけ場所が入れ変わっている。
咲耶、俺、ティー、雪風、キラ、グラム、マリンちゃん、レイ、エミリア、紫苑、メア、咲耶……の順でテーブルを囲んでいる。
朝食の準備ではなく座り直したのは、俺にまだ話したいことがあったからだ。
エミリアとメアがが作ってくれた朝食は俺が責任を持って〈ストレージ〉に保管しているため、冷めるようなことはない。
「……じゃあ、二人が仲良くなったところで、俺からみんなに知っておいて欲しいことがあるんだ」
「……仲良くなってない。修正」
「仲良しなのです」
ティーさんから修正の要望が入ったが、お姉さんによってその要望は却下された。仲良く手を繋いでいる。
ティーは口ではああ言っているが、手を拒んでいないあたり単に恥ずかしいだけだろう。戸惑って素直になれていないが、じきに慣れていくはずだ。
「知っておいて欲しいことって、何かな?」
「……咲耶、仮面を外してくれ」
「了解」
仮面をつけていたのも、俺に正体がバレないためだ。迷うことなく、咲耶は仮面を外した。
「篠上咲耶。小さい頃からの、俺の幼馴染だ」
「幼馴染……?」
エミリアが不思議そうな声で名前を繰り返す。
それもそのはず、俺は小さい頃エミリアとずっと一緒にいたのだ。普通に考えれば、エミリアが知らない幼馴染がいることはおかしい。
勿論、幼馴染として俺と咲耶が一緒にいたのは実際は転移する前、つまり日本での話なのだが、そのことをエミリアたちは知らない。
「咲耶さんって……あの時、会った人だよね?」
「ああ。久しぶりだね、エミリア。……それに、雪風も」
「お頭……やっぱり、お頭だったのですね」
食堂にみんなを集める際、咲耶と二人で話をしたのだ。あることを、明かすか、明かさないか。
その時、咲耶からエミリアと会ったことも聞いていたから、二人が知り合いなことには驚かない。
「実は、みんなには話していないことがある」
咲耶と考えて話すことに決めた、あること。
本当はもっと後に、もしくは死ぬまで明かさないつもりだったが、咲耶と会ったのならば話は別だ。
咲耶と俺の関係を話す上でその話は絶対に避けられないというのもあるが、やはり知っておいて欲しいのだ。
俺の、過去。気力を失った、見にくい俺を。
「スー……」
深く息を吸って、心を落ち着ける。
そしてみんなを見渡し、ゆっくりと告白した。
「俺と咲耶は、この世界の人間じゃないんだ」
次話は土曜日です




