八話:羞恥プレイ
テスト勉強が忙しく、投稿がかなり厳しくなってます。応援してやってください。
くつろいだり部屋の整理をしていた皆を呼び集め、俺は経緯を説明した。
メアのために、魔狼事件のことも含めて。
「この子、あの時の賢狼だよね? ごめんなさい、私が貴方の家族を……」
「────」
「気にしていません。力に溺れた者の末路ですにゃ……って言ってるにゃ。ああいや、『にゃ』は言ってないにゃ」
「そう……」
それでも申し訳なさそうな表情をするエミリアだったが、賢狼が体をすり寄せると、少し嬉しそうに微笑んだ。
…………正直、賢狼の身体が大きすぎて、エミリアが襲われているようにしか見えないなぁ。
「─────」
「引っ越したのですね。これで貴方たちも、私たちの家族です……だって」
「こ、これはどうも丁寧に……」
ゆっくりと頷く賢狼に、俺は頭を下げる。
賢狼が思ったよりも丁寧で、俺たちも萎縮してしまうのだ。
「────」
「しかし、男の方は一人なのですね? ふふ、英雄色を好むと言いますが、貴方もそうなのですか? って言ってるにゃ。…………そうなのかにゃ?」
「いや違うよ!? 英雄でもないし、色を好むなんてことも…………ないとは言えなくもないのかも知れないとは思わない」
「いやどっちなんだよ……。というか、本当に節操がなさすぎるんだよ、おまえは……」
メアの蔑む目による突っ込みが厳しい。
分かりにくく言って誤魔化したんだから察して!
「でも、なんで今更契約なんだ? オレも詳しくないが、賢狼ってのはプライドが高いんだろ? なんか裏があるんじゃないのか?」
おお、そうだそうだ。今は賢狼の冗談(?)に付き合っている時ではないのだ。
やっぱメアがいると話が進むな。
「────」
「心外です。発情期の匂いがしたからです。って」
『発情期…………?』
俺たち全員の目がグラムに向けられた。
説明、プリーズ。全員の目が語っている。
グラムはダラダラと冷や汗を流していたが、マリンちゃんも参戦するとやがて諦めたようで、
「夜這いして、失敗して……実はその後、薬を飲んで無理矢理発情期を抑えていたのにゃ」
「夜這い!? お、おいシン! どういうことだおまえ!!」
「ま、待てってメア! 俺はすげなくあしらった!!」
『……え?』
「なんでそんな顔するの!? 俺はちゃんと抵抗してたよね!?」
「え……あ……そうでござるね……」
「ユキカゼガマチガエテイタノデス」
「俺の目を見て言ってください!?」
くそっ……! 俺はちゃんと貞操を守ったのに……!
俺の理性くんたちが褒められないせいでストライキしたらどうするんだ! 本能社長の思うがままだぞ!?
「本当に、何も、ないんだな……?」
「ああ。誓って何もない」
「…………本当か?」
「本当にゃ。いやぁ、流石のグラム様も、ちょっとだけ傷付いたにゃぁ〜」
じゃあしないで欲しかったよ……。
いやまぁ、あの時はそれどころじゃなかったんだろうけどさ。
「じゃあ、グラムちゃんは…………」
「あと少しで発情期が来ちゃうのにゃ♪」
「いやテヘッじゃねえよ! えっ!? てことはマリンちゃんも!?」
「ううん。マリンはお姉ちゃんの影響を受けて誘発されただけだから、今年の……マリンの初めての発情期は終わったことになってるよ?」
「良かった!!」
いや本当、姉妹に同時に言い寄られるあの日の悪夢の再現になるからね! 住んで良いと言った直後に、やっぱり秋からにしてとか言いたくないからさ!
「あの、どうして発情期だと契約をするのですか?」
「うむ、確かにそれは気になるかも知れんな。龍人にも発情期はあるが、契約したところで楽になるわけでもないし……」
「え?」
龍人に発情期? ……なんか、そう遠くない未来へのフラグが立った気がしたんですが……気のせいだよな? うん、気のせいだ。
姉妹丼に教師が加わるとか流石にまずい。いやマリンちゃんは違うから姉妹丼ではないのか。だから教師と生徒同時……結局まずいな。
「────」
「発情期になった時に教えるためだって。そっか、お姉ちゃんが発情期になっても、隠されたら分からないもんね」
「そっか……夜這いされないように教えてくれるのか……」
「…………」
「あれ? 突っ込まないの? 夜這いなんてしないのにゃ!みたいに」
「シンはグラムをなんだと思ってるのにゃ!? いや、あの……正直、お預けを喰らったみたいに感じてるから……多分、襲っちゃうにゃ」
「賢狼さん早く契約を!!」
「流石に酷くないかにゃ!?」
「──────」
「…………ノーコメントでお願いするにゃ」
「何!? 賢狼は何を言ったの!?」
「いや……はは……お姉ちゃんが伝える勇気を出すまで、マリンが教えるわけには行かないかなぁなんて思ってみたり……」
???
よ、よく分からないが、契約しないと俺の貞操が危ないような気がする。
と、その時、俺の制服の裾を、誰かがちょいちょいと引っ張った。見てみると、エミリア。
「? ねえシン。グラムちゃんって、これまでにも発情期になってキスしたくなることがあったんでしょ? なら、契約しなくても大丈夫じゃないの?」
「え? あ、いや、それは…………」
これは多分、契約して欲しくないとかではなく、単なる知的好奇心だろう。不思議に思ったから、俺に聞いた、それだけだ。
でも、でもなぁ…………発情期の獣人が、どうやって性欲を我慢するのかは、その、説明しにくいというか…………。
「そういえば、マリンも発情期は初めてなんだよね……。ねえお姉ちゃん、どうしたら我慢できるの? 教えて! 今年は良かったけど、来年になったら分からないから!!」
「にゃ!?」
エミリアだけじゃなくマリンちゃんにまで聞かれて、真っ赤になるグラム。
助けを求めるように俺の方を見てくるが……ごめん、男の俺には力になれそうにない。
グラムは「うー! うー!」と唸っていたが、やがて踏ん切りが付いたのか、口を開き……
「ひ、一人で…………慰めて……ました、にゃ」
真っ赤になって、泣きそうになる。
でも、子供の作り方を知っているくらいのマリンちゃんと、子供の作り方すら知らないエミリアは天然で容赦がない。
「…………? どうしてグラムちゃんは恥ずかしそうなの? シン、分かる?」
「? 慰める……? どういうこと? 私は悪くないよ……ってすれば良いの? うーん、効果なさそうだけど……」
「う、うぅ……」
その辺にしてあげよ? ほらもうお姉ちゃん、崖があったら飛び降りそうだからさ。




