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三話:天邪鬼メイドは隠せない

 

 俺が目を覚ました時、まず最初に、身体の筋肉が強張ったかのような痛みを感じた。

 …………硬い。

 何が硬いって、寝ている場所だ。

 ベッドの上ではない、床の上に寝かされている。


 そして……


「ううっ…………グス……見られた……もうやだぁ……グスン……死にたい……」

「だ、駄目だよメアくん! ほ、ほら……えっと……その……」

「下着を見られたくらいで死ぬのは感心しないのです! まぁ……その下着で顔の上に座ってしまったのは……同情……するのですが……」

「リーシャのせいだ……何がこれを着て行けば良いことがあるだ……最悪だろ……絶対エッチな子って思われた……」

「「…………」」


 ベッドの上で、布団を抱き枕にして横になっている少女が、今にも死にそうな表情で泣いていた。


「……あ、シンくん……」

「……ッッッ」


 俺に気付いたスーピルが俺の名前を呼ぶと、ダウナー少女はビクッと大きく肩を震わせた。


「えっと……その……」

「どうせ、馬鹿にするんだろ……」

「え?」


 聞き返すと、少女は寝返りを打った。

 真っ赤な顔を、布団に押し付けて隠している。


「お、おまえもオレを馬鹿にするんだろ! わ、笑いたいなら笑えよ……! 男みたいなオレが、こ、こんなフリフリした服着て、あ、あんなエッチな下着履いてるなんて! そんなの、お、おかしいもんな!」

「いや、全然おかしくないだろ」

「…………!」


 ハッ、と顔を上げた。

 その顔立ちは……到底、男とは思えない。

 綺麗な、少女の顔だ。羞恥で真っ赤になっているのも、またいじらしく可愛らしい。


「ハンゲル王国二十五番隊"砦"副長、メア・ド・マーカス。性別女。年は14。な? どこに男の要素があるんだよ」


 前にも言った気がするが、彼女は錬成士と呼ばれる人間だ。

 幼い頃、当時二十五番隊の隊員だったドワーフに師事して鍛治の技術を学び、人間としては初めて、師範格を示す"ド"の一文字を名に冠することを認められた少女。

 俺の魔剣や銃、そしてカメラなどの魔道具の製作者でもあり、二十五番隊の装備品のメンテナンスは全部こいつがこなしている。

 確かに女の子らしくない仕事かも知れないが、それがどうした。こいつが可愛らしい女の子だってことは、こいつ以外の二十五番隊のみんなが知っている。


「なっ……嘘だ嘘だ! オレにこんな可愛い服が似合うわけ…………」

「いや十分似合ってるって!」

「ま、またっ……! う、うぁぁぁ!」


 布団に顔を押し付け、ジタバタするメア。

 だが、急にパタリと動きを止め、布団から恐る恐る顔を上半分だけ出すと、可愛い上目遣いに俺を見てきた。


「シン……オレ、可愛いか?」

「可愛いと思うよ。やっぱり、俺が昔に言った通りになった」

「…………。オレ、普通の女の子みたいに見えるかな……?」

「見える見える。というか、昔から言ってるけどメアは女の子だろ」

「そう、か……女の子、か……」


 ちょっとだけ頬を赤らめ、「えへへ……」と嬉しそうに笑うメア。

 その表情はどこからどう見ても、一人の女の子だった。


「い、一応、礼は言っとく……。……あ、で、でもこの服は違うからな!? べ、別におまえのために用意したとかそんなのじゃないからな!?」

「分かってるって」

「そ、そうか……それなら良いんだ。…………」

「???」


 チラチラと、こっちを見てくるメア。


「心配……したんだぞ」

「へ?」


 その言葉があまりにも予想していないもので、俺は思わず聞き返してしまう。


「おまえが倒れたって聞いて……。向こうで装備を点検している時にも、ずっとおまえのことを考えてた……。そしたら、帝国兵士のための装備なのにおまえに合った性能になっちゃって、もう一度打ち直すことになって…………」

「…………」

「……へ……あ……お、オレ何を言って……い、今のは忘れろ! 今日ここに来たのも、心配とかじゃないぞ!? さ、さっきのは嘘だ嘘!」

「はいはい、了解です」

「ほ、本当だぞ……? 心配なんてまったく……ほんのちょっぴりだけなんだからな……?」

「お、おう。了解です」


 面白いほど、可哀想なほど、話せば話すほどドンドンとボロが出てくるな。

 でも、まだ肝心のメイド服について聞いていない。メイド服と言っても本格的なものではなく、もう可愛さ全開の改造メイド服だ。スカート丈も膝上である。

 俺の知るメアは、必ずと言っていいほど恥ずかしがって、そういうフリルの多い可愛らしい服は着てこなかったはずだが……。


「なぁ、結局なんでメイド服なんだ?」

「あ、ああ、それは…………」


 俺が聞くと、メアは少しだけ恥ずかしそうにして、ついてしまった服の沢を手で簡単に伸ばし、


「王様がお呼びでございます、ご主人様」


 聞いたこともない言葉遣いで、丁寧に頭を下げた。

 …………。

 …………。


「めっちゃ練習した?」 

「したよ! 悪いか!」


ハッと気が付く。あれ? キラ先生、レイ先輩、スーピルは年上なのに容姿は子供で……メアとマリンちゃんは年下? …………?


次話は金曜日投稿です

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