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二話:天邪鬼メイドと今日の〇〇

まともな銃をまともに使う始めての人!


 俺は半身になって、少女の突進を回避しようとする。

 少女は勢いのあまり止まることができず、俺に無防備な背中を晒すが……


「なんでメイド服なんだ?」

「う、うるせえ!」


 ────ダダダダッッッ!!!


 俺が背中に一撃入れる前に、少女が背面撃ちを行う方が早かった。

 マシンガンの連射が、俺を襲う。


「〈風壁〉!」


 風の壁によって勢いを失った弾丸が床に落ちる頃には、既に少女は体勢を立て直しており、右手のハンドガン、左手のサブマシンガンの照準を俺の脳天に定めていた。


「いやいや、普通不思議に思うじゃん。久しぶりに会ったらメイド服なんだから」

「ぐぅ……どうせおまえも、オレなんかには似合わないって思ってるんだろ……男みたいなオレがこんな可愛らしい服を着てて、笑ってるんだろ……?」

「いや、似合ってて可愛いと思うけど」

「なっ……!! うるさいうるさいうるさーい!!」

「いやいや! いつも言ってるけどさ、お前は可愛いって!」


 お互い、沈黙……とは対照的に口喧しく睨み合う。

 そんな場面が動いたのは、〈風壁〉の効果が消えたのと同時だった。


「黙れぇぇ!!」

「…………っ!」


 俺が姿勢を低くした瞬間、頭上を弾丸が掠める。

 さっきまで呑気(?)に話していたのが嘘のような、一瞬で行われた意識の切り替えだ。


 だが……ここまで連射すれば、あのサブマシンガンでは必ずリロードが入るはずだ。

 だから、あとはハンドガンに気を付けるだけでいい。


「…………ッチ、蜘蛛かよ!」

「褒め言葉として受け取っておくよ!」


 壁や天井に魔力の糸を張り巡らした俺は、その糸を使った高速移動でハンドガンの弾丸を避け続ける。

 だが……そうだ、俺がこうして隙を見る間にも、少女は片手でサブマシンガンをリロードしている。


 でも、それで良い。


 狙うとしたら一瞬、リロードが完了して、照準をこちらに向けた瞬間だ。

 その瞬間は、たとえこいつだろうともサブマシンガンに意識が向き、ハンドガンの射撃が疎かになる。

 すると、一瞬だけ弾が飛来しない空白期間が生まれる筈だ。

 狙うなら…………


「今っ!」


 両手の銃の照準を、俺のいる真上に向けた、その瞬間、俺は少女に肉薄しようと足に力を込める。

 だが、少女の方が一拍速かった。

 連射が、俺を蜂の巣に……


「くそっ、幻影か!」


 だが、それは幻。

 当然だ。元々、銃に速度で勝とうはしていない。

 大きな隙を作り、銃本来の性能を失わせる。ここに俺はこの勝負をかけていた。


「色々お留守ですよ」

「っ……!」


 バンザイの格好のまま無防備な少女の背後に回り、後ろから両腕を取って羽交い締めにする。

 だが……


「やっぱり女には甘いんだよなぁ……」

「っ!?」


 後方転回、いわゆるバク転の応用だろう。

 床を蹴った脚を前に振り上げ、その太腿で俺の顔を挟んだ。

 だが、柔らかいその感触を楽しむ暇はない。


「シンッ!」


 悲鳴を上げる雪風。

 バランスを崩して後ろに倒れた俺、その心臓部分にハンドガンの銃口を突きつけて、少女が宣言した。


「チェックメイトだぜ?」


 顔は見えない……というか顔どころか何も見えないが、声で少女が勝ち誇っているのは分かる。

 そして、彼女が誰だかも、俺は知っている。


「…………急にどうしたんだ? メア?」


 メアとは、少女の名前だ。

 二十五番隊"砦"であり、二十五番隊員の装備品を点検、修理する錬成士だ。ちなみに、団長の愛娘だったりする。

 俺の刀も、あの壊れた銃も、そしてカメラなどの魔道具すらも、全てこいつの作品だ。

 でも今は確か、同じく二十五番隊所属のドMの双剣使いと一緒に、帝国へ素材集めに行っている筈だが…………。


「スーピルの計器が壊れて、銃も壊れたって報告があって…………オレが……オレが……どれだけ心配に……おも……おも……」

「心配?」

「お、おおお思うわけないだろ! 勘違いするなよ!? オ、オレはおまえを心配なんかしていないからな!」


 何故戻って来ているとか、そのメイド服はなんだとか。まあ、色々と気になることはあったが、こいつが気付いていないのなら、俺はそろそろ教えてあげるべきだろう。

 そう、俺の顔を覆い隠す物……


「お前、結構際どい下着を履くのな?」

「…………へ?」


 この、俺の顔を上から圧迫しているものは……


「個人的な感想だが、戦う時にそういう下着はやめた方がいいと思うぞ」


 どう考えてもパンツですね、はい。それもかなりエッチなタイプ。

 こいつ、こういうのも履くのか。


「いや、こうして押し付けられる俺としては嬉しくてもやっぱりメアは女の子だし…………」

「ほ、本格的に死ねぇぇぇぇぇ!!」

「シンーーーーーー!!」


 ──パンッ、パンッ!

 銃声が二回、廊下に響いた。


〇〇の中身はなんだろな♪

(カタカナだと〇〇〇になる)


ちなみにメアは、一章から描写だけされていた少女です。

というか、エミリア・師匠・レイ先輩と同様に、一話の時点で登場が確定していた子です。

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