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一話:天邪鬼メイドとお引越し

 

「うーん、魔力回路が欠損してるね。これじゃ外部からの魔力供給もほとんど意味はないんじゃないかな? まあでも、一過性のものじゃない? すぐに治ると思うよ、うん」


 俺は二十五番隊兵舎にて、幼女と化した相棒をスーピルに見てもらっていた。

 スーピルの言葉に、雪風はものすごく嬉しそうな表情をして、


「本当です!? あの頃の身体に戻れるのです!?」

「うん、あの頃がなんだかよく分からないけど。少なくとも、シンくんが衛兵に捕まることはもうないと思うね」

「あの時は本当に終わったと思った…………」


 いや、うん。

 雪風と一緒に道を歩いていたら、突然にこやかな笑顔と共に話しかけられたのだ。

 言い訳虚しく…………というか、幼女扱いされた雪風が憤って俺をさらに窮地に追い込み、俺は連行された。

 そしてそこで厳しい取り調べを受け……話を聞きつけたレイ先輩が俺を回収しに来て……また疑いをかけられて……。その次は本職(?)のマリンちゃんで……。

 今思い出しても地獄な負のスパイラルだった。

 もういっそ、全てを諦めてロリコンとして生きる覚悟をしたくらいだ。


「ま、元から似たようなもんだと思うけどね」

「おい待て、それは俺をロリコンだって言っているのか?」

「違うの?」

「違う! …………と思いたい」


 キッパリと否定できないのが悲しいなぁ……。

 って、いやいやそれじゃ駄目だ。俺はロリコンじゃない……俺はロリコンじゃない……。


「まあ、なんにせよ、魔力の使用には気をつけてよ? 戦闘はもちろん、具現化し続けるのも気をつけた方がいい。あとはそうだね、シンくんも毎日特別な方法で魔力供給をさせてあげな」

「特別な方法って言うと…………」

「キスと性交渉、あとは吸血。お姉さん的には二番目をお勧めするよ!! 今ならお姉さんも付いてくるよ!」

「するわけないだろ!」


 たとえスーピルがついていたとしても、だ! 

 いやこの言い方だと誤解を招くな!? 


「チェー。折角生娘から卒業できるチャンスだったのにー。お姉さんみたいな豊満な体型だとね、シンくん。相手がいないの。うん、悲しいくらいにロリコンおじさんしかいない」

「それは…………御愁傷さまです」

「中々切実な悩みなのです……」


 そういや、師匠もそんなこと言ってたことがあったな……。自分には相手がいないとかなんとか。あの時の俺は、見る目がないと憤慨したもんだ。

 まぁ、スーピルとレイ先輩に相手がいないのか不思議でならないのは、今も変わらないけど。


「ま、冗談はともかく、無事でよかったよ、シンくん」


 気に真面目そうな表情になって、お姉さんは俺の膝の上に腰を移しながらそんなことを言ってきた。

 自然な動きだな……全く抵抗できなかった。


「シンくんに付けていた計測機が全て壊れてね。みんな心配してたんだよ? 死んだんじゃないかって」

「ああ、アルディアのせいか……」


 アイツの貼る結界は、魔力の遮断する。

 それで、計器が狂って壊れたのだろう。

 …………いつのまに計器を付けていたのかは気になるが。


「でもしぶといねぇ、正直、腕の一本くらい失うと思ってたよ」

「?」

「ああいや、こっちの話。ま、なんだ。姉として忠告しておこう。これから忙しくなるだろうから頑張って、シンくん」


 そう言うと、スーピルは自分の研究室へと戻ってしまった。


「「…………?」」


 これから忙しくなる?

 いやむしろ、もう七月中旬だからあと少しで夏休みなんですが……。

 …………まあ、良いか。


「えっと……帰る?」

「帰るのです」


 もう、特にすることもない。

 二人並んで、二十五番隊兵舎の廊下に出た時だった。


「シンッ!!」


 突然、俺の名を呼ぶ声が聞こえた。

 誰だろうか。俺がゆっくりと振り向くと…………


「は?」


 メイド服の女の子が、こちらに向かって突進してきていて……ってちょっと待って!


「〈ウォーターボール〉!」


 やべっ! メイドの子に本気の魔法撃っちまった! 

 もし当たったら……怪我はしないと思うけどかなり痛いぞ!?


「舐めんな!」

「って、銃!? ま、まさかお前は……」


 ──パンッ!


 という発砲音が廊下に響き、直後水球が爆散、水蒸気となって消えた。

 その間にも、少女は間合いを確実に詰めてきており……


突然ですが、マリンちゃんは小5=11歳という設定です。

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