七十四話：伝説の復活
ザーノスと睨み合い牽制しあっていたアルディアとすれ違う時、俺たちは一瞬立ち止まり少しだけ言葉を交わす。
「図書館ってなんの話だよ」
「いや、こっちの話だ。今は目の前の敵に集中しておけ。俺は変わらずお前の大切な人を守っとくからさ」
「そのニヤニヤ笑いをやめろ」
「仮面で見えてないはずだが？」
「なんとなくで分かるんだよ！」
はぁ……なんか、これから毎回会うたびに揶揄われそうだな……。
いや既に毎回会うたびに言われてたわ。今更だったわ。
…………？
「まだ、何かあんのか？」
仮面で近距離から見られると怖いんですが……。
「いや？ 義理の弟の顔を見たくて」
「義理の妹の夫なんですが……」
「ギリギリ弟だな。義理の義理だけに」
「さてはうまいこと言いたいだけだな？」
「バレたか。ま、本気でお前には期待してんだ。相棒」
俺の肩をポンポンと叩いて、アルディアがエミリアとキラ先生、そしてレイ先輩の所に歩いて行った。
レイ先輩は、二人に治癒魔法をかけてもらう係だ。アルディアの結界内なら、魔法が消えることはないらしい。
アルディアは早速、顔を真っ赤にしたエミリアとキラ先生に睨まれていた。さっきのことを揶揄ったんだろう。
「さてと、アルディアが消炭になる前に終わらせますか」
「…………シン」
「ああ雪風、準備はいいか？」
「はいです。あいつに雪風たちの怒りを、そして、シンに貴方の本当の相棒が誰かを……しっかりと教え込むのです」
「…………もしかして怒ってる？」
「怒ってないです。激怒してるだけです」
「すいません！ いや、でも本当にあれはあいつが勝手に言ってるだけで……」
俺の相棒は本当に雪風だけだって！
だからこれは違うんだ！
そんな、浮気がバレた男みたいな言い訳を重ねる俺をよそに、髭に手を当てて考え込んでいたザーノスがふと口を開いた。
「ほう…………そこの精霊、そして、そこの小さき魔術師、共に中々の上玉ではないか。是非、彼女らも私の妻にしたいな…………」
…………。
…………。
「………………は？」
「シン！？ ち、ちょっと落ち着くのです！ 絶対雪風のことじゃないと分かるのがとても悲しいのですがそれはともかく！ 暴走しちゃ駄目なのです！」
いやはは、何を言ってるんだ。
俺は龍の力に飲み込まれなんてしないよ。
たとえ龍の逆鱗に触れたとしても、ねぇ……。
「大丈夫だ、殺さない。痛覚、感情、その他もろもろは死ぬけど」
「拷問です！？ ああもう！」
突然、雪風が俺の腕を引っ張って……
「いや、空気読もう？」
「はい！？ シンがどう考えても暴走しているから、雪風は貴方がしてくれたようにしようと……」
ああ、それでか。
それで、俺にキスしようとしたのか。
「本当に大丈夫だ。暴走はしてねえよ。よく見ろ」
「…………あ、あれ？ 本当、です？」
雪風は目を丸くした。
「キラ先生のおかげでな。なんとなくだけど、使い方が分かってきたんだ。だから……安心してくれ」
「はぁ……」
「まぁでも、もし俺が暴走しそうになったら、その時は頼むな？」
「っ……はいなのです！」
ピシッと敬礼する雪風。
それは一見、場の空気が読めていないようだったが……。
「……変身」
表情を一瞬で厳しいものに切り替えると、ゆっくりと深呼吸をして、体内の魔力を練り始めた。
雪風が猫耳を生やしたりする時に行っているものと似ているが、今回のは、さらに複雑だ。
身体強化の術式を組み込んでいるらしいのは分かったが、理論とかは俺にも分からない。
雪風の身体が、あの日、暴走した時の姿に変わっていく。
白い天使のような翼が生えた、あの、ティーと名乗る少女の姿に。
「制御できるようになったのか……？」
「今まではできませんでした。できるようになったのは、シンがその力を制御できるようになったからだと思うです」
なるほど。
精霊契約はこういう時に便利だな。
いや、でもそれよりも感動するのは……この、二人並んで戦う感覚。
「ペアで戦うのは久しぶりだな、雪風」
「はい。少し前のことなのに、懐かしい。雪風が、新しく生まれた赤ん坊だからでしょうか」
「ふふっ……さあな。それよりどうする？ プランSで行くか？」
「ええ、相性抜群な雪風たちの力を、存分に見せてあげるのです！」
ラブコメの神様ですが、一部女子から好かれすぎて困っています。
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もよろしくお願いします！（リンス飛べなかったら、ドラッグして調べてください……）
