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三十九話:

えー、ストックが尽きたので、木曜日の投稿をお休みさせてもらいます……。

(木曜日以外はいつも通り投稿する予定)


 

「…………駄目だ……。全然良い案が思い付かない……」


 話し合うこと一時間。

 俺たちはグッタリとしていた。いくら考えても、マリンちゃんが元気になるビジョンが見えないのだ。

 そりゃお菓子を上げたりすれば、マリンちゃんは年頃の子供らしく喜ぶだろうが、あくまで一時的なものだ。


 もう、マリンちゃんに何されたいか聞くしかないな……とかふざけた考えが浮かぶくらいに、何も良案が出ない。

 でも、聞くのはあながち間違いでもない気がするな。これはサプライズじゃないんだし、知られてまずいことはない。


「……そういえば、いつもこの時間ってマリンちゃんは何してるんだ?」

「え? マリンちゃん? さぁ……私は街を歩いているから……」

「拙者も同じでござる」


 休日は外出する行動的なエミリアと、エミリアの護衛のために付いていく紫苑は、昼間マリンちゃんを見たことがないと言う。

 かと言って……


「俺たちも旅館で研究してるけど……見たことないよな?」

「はいです。昼間この旅館にいることはないと思うのです」


 雪風が暴走なしで翼を出現させたりできるのか研究をしていた俺たちも、マリンちゃんを見たことはない。

 俺とレイ先輩(インドア派)の勝手な研究に、中でも外でもどっちでも良い派の雪風が巻き込まれているとも言う。

 グラムを探せよと言われるかも知れないが、グラムがいると思われるのは森の中なのでそもそも無理だ。

 俺たちが森に出れば、高確率で霧のせいでアニルレイに戻って来れなくなるからな。


「それはまさか、彼女は森に行っているということじゃないのか?」

「でも、森の中は魔物とか魔獣が沢山いるし……マリンちゃんが一人で歩けるかな?」

「おそらく、無理だと思いまする。獣化したマリン殿を見たことがない故正確な判断はつきませぬが、おそらくは……無理かと」

「戦闘をしたのなら血の匂いとかで流石に分かる。マリンが証拠を隠すのがプロ級なら別だけどさ」

「そうか……となると、やはり街中なのだな。すまない」

「いいや、良いってアーサー。マリンちゃんへの考察をより深められた訳だしな」


 とは言え、マリンちゃんが何をしているかはまだ分からない。

 まさか傷心のまま、自暴自棄になって身体を売ったり……!!


「心配だぁぁぁ!!」

「っ!? シ、シン?」

「今頃変な男に捕まってたらどうしよう。誘拐されたら? エッチなことをさせられたりしてたら!? 俺たちに伝えたいけど、脅されていて伝えられない……!! ああっ!!」

「……シン、もう父親じゃないか」

「お義父さんだと!? アーサー、いくらお前でもうちのマリンは……」

「はいはいストップでござるよー」

「ふぐっ……は、ははへひほぉん!」


 ど、どこぞの馬の骨にやるくらいならお父さんが一生面倒を見てやる!! だからマリンは……!!


「シン、それだとグラムも娘になるのです」

「……はっ! た、確かに……あれ? でもそれだと尻尾を掴んだことは……」

「シーンー?」

「すみません何でもないです」


 娘になら尻尾を触っても大丈夫なのでは? と思ったがエミリアにジト目で睨まれた。

 そうですよね……駄目ですよね……。

 うん、でも少し落ち着いた。


「シン殿は過剰とはいえ、本当に心配でござるよ……。マリン殿程の可愛さであれば、良からぬ男に声をかけられたり……うぅ……!!」

「……エミリア、アーサー、あの二人は思考回路が同じなのです?」

「同じだね」

「同じだろうな」


 三人がヒソヒソと何か話しているんですが……。


「シン殿! やはり拙者は心配でござる!」

「だよな! こうなったらいても立ってもいられない! 紫苑、探しに行くぞ!」

「了解でござる! して、まずはどこへ!?」

「……………………ドコヘ?」

「あ、何も考えてなかった」

「でもシオンも似たようなものです」

「一番策を練りそうな二人ともが無策なのか……」


 呆れたように首を振る三人。

 いや……だって……俺が知ってる場所なんか限られてるし……。モフモフ屋とかデザート屋とか、あ、あとは孤児院とか…………孤児院?


「なぁ、グラムもマリンも両親がいないんだよな?」

「そう聞いているね」

「うん、具体的なことは分からないけど、小さい頃に死んじゃったんだって」


 となると、二人はどこで育ったんだろうな?

 それに、孤児院で一番年上のあの子。あの被害妄想が激しい子は、グラムのように王都の魔術学院に行きたいと言っていた。

 となるとやはり……


「もしかしたら……マリンちゃんのいる場所が、分かったかも知れない」

「「「「……………っ!!!」」」」


 ♦︎♦︎♦︎


「またお兄ちゃんが来た!!」

「今度はなんかいっぱい連れてきた!!」

「でもやっぱりこのお兄ちゃんが一番変!!」

「ごめんなさいごめんなさい、やっぱり駄目ですよね今度はちゃんと私も勉強したので性的な奉仕をするのは私だけにしてください〜〜」


 やばい。こいつらのこと完全に忘れてた。

 特に最後の奴。その言い方じゃ、俺が既に一回は性的な奉仕をさせたような誤解が……

 ……はっ! さ、殺気!?


「シン殿ー? せ・い・て・き・な・ご・ほ・う・しとは一体全体なんの話でござりまするかー?」

「憤怒。シンが力を使って、外で無理矢理女を作っているとは思わなかったのです。バーカバーカ」

「……………………」


 子供たちのような無邪気な笑顔で、俺ににじり寄ってくる紫苑(殺気付き)。

 子供たちの輪から離れた所から、俺を冷ややかな目で眺める雪風(殺気付き)。

 そして何気に一番キツい、エミリアのショックを受けたような悲しそうな表情。


「まあ、なんだ、シン。流石に親友が死ぬのは悲しい。私はお前の味方だ」


 分かってくれるか、アーサー。


「それで、今度は何をしでかしたんだい?」


 親友の優しさが目に染みた。


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