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七話:アニルレイ

ついに(本編以外も含めて)百話目です!

 

「すげぇ……」


 最初に言葉を漏らしたのは誰だったか。

 俺たちは全員、この街の景観に圧倒されてしまっていた。


 家の壁には蔦が絡みつき、道行く人の頭には動物の耳が、お尻の辺りからは尻尾が生えている。

 大きな通りは舗装されているが、脇道や家の周囲は土色の地面。

 荷物の運搬か人の移動手段か、水路の上を小舟が渡って行っている。

 店に売られている商品も、王都とは違って実用性の高い物が多い。金持ち用の、装飾がジャラジャラ付いた武器などは皆無だ。

 だが……無駄を省き洗礼されたデザインの軽い武器、獣人の膂力を活かした重たい武器、その二極化だけは少し気になったが。


 服なんかも、人間用ではなく獣人用。腰の辺りに尻尾用の穴が開いていたり、胸の部分に多くの布を使用していたり……。二つの穴が開いた帽子なんかもあった。


「…………なんであれが外から見えなかったんだ?」

「仮説によれば、大森林にかかる霧は魔法陣の役割を持っているのではないかと言われています。おそらく、それで隠蔽しているのでしょう」

「へー…………」


 霧を魔術媒体にするのか、面白い発想だな。難易度は考えたくないけど……どうなんだ、霧から自分で作ればまだ行けるか……?


「あそこだよな」

「あそこだね……」


 まぁだけど、何よりも目を引くのはここからでも見える巨大な大樹だろうな。

 一本だけ、異様に高い背の巨木が生えていた。根元は、地平線に隠れてしまっていて見ることができない。

 南の入り口から一直線に続く道は、その大樹の方向へ伸びている。


「……戦闘を想定した街の作りじゃないように見えるな。シン、お前はどう思う?」


 帝国の人間らしく、アーサーはこの街の防衛機構についてコメントした。

 確かに、明らかに重要そうな地点へ入り口から一直線に繋がっているのは、争いには不向きだ。

 防衛機構が必要ない、大森林の霧を信頼し切っていることが分かる。


「この街の大きさは分からねえが、あの大樹を中心に小さな街が発展していったわけじゃない。生まれた時からこの規模だ」

「なるほど、後から整備した可能性は?」

「…………多分、ないな。ほら、あれを見ろ」

「…………なるほど」


 俺が指差したのは、木と一体化してしまっている家。もう空き家で誰も整備していないのか、ボロボロの状態だ。

 あの家は、少なくとも木があそこまで成長する間そこにあったことになる。

 そして、それだけじゃない。


「これは予想なんだが……この街、作りが魔法陣になっていないか?」

「…………ほう?」

「いや、確信はないし、なんとなくなんだけど……。上にミスリル製の金属板が置いてある建物がいくつかあってさ、それが少し気になったから」


 ミスリルから魔力は感じたないので、今は作動していない。つまり、ソーラーパネルのような物ではないということだ。

 まあ、全部こじつけの可能性も高いんだけどな……。中心に向かって一直線に線が入るような魔法陣は見たことがないし。

 それに、戦闘を想定していない街の作りなのに魔法陣を用意するのもおかしな話だし。


「ま、観光に来てるんだ。そういう不思議なことは、不思議なままの方が面白いか」

「ふふ、そうだな。しかし街を魔法陣に……帝国の街も確認した方が良さそうだな」

「帝国は……そんな小狡い事する奴少なそうだけど?」

「いや、そうでもないさ、最近は……」


 ハァ……と溜息をつくアーサー。

 よう分からんが、こいつもこいつなりに大変ということだろう。

 と、その時、


「よしっ! 既に自由行動をしている者もおるが、取り敢えずは自由じゃ! 当然、宿屋も自分らで探せ」


 キラ先生が解散を宣言した。


「ただ、あくまで目的を忘れるのではないぞ? グラムの用事が終われば翌日にはここを発つ。また、今からお主らは一人の冒険者じゃ。行動の責任は全て自分にあると考えろ。妾はただ、全員無事で帰れることを祈る」

「「「「……………………」」」」


 成る程、これはざっくり言えば「やりすぎるなよ」ということか。

 俺のように尻尾を掴んで揉め事を起こしても自己責任。用事が終われば帰るから、揉め事を起こした場合は自分で解決してから帰って来い。つまりそういうことだ。

 高校一年生に対して、中々にハードなこと言うな。


「あの、これって別に宿屋じゃなくても良いんですよねー? 例えば誰かの家にお邪魔させてもらったりとか」

「ケビン君には無理じゃないかな……?」

「ぐふっ!」


 早速一人が脱落したぞ。

 サラにトドメを刺されたケビンが、胸を押さえて倒れ込んだ。


 そして徐々に、生徒たちが散って行く。


「では、拙者たちは先に宿を見つけておくでござる」

「ああ、頼んだ」


 レイ先輩、紫苑、雪風は、一旦ここで別れなければなない。

 紫苑と雪風も立場的には一応連れて行くことは可能だが、威圧感を与えないよう人数は少ない方が良い。

 三人は、まず武器屋に入って行った。

 宿屋でも服屋でもなく、食事処でもなく武器屋。三人とも生粋の戦士だなぁ……。まあ、俺も多分そうしてたと思うけど。

 

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