表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スカイアドベンチャーの楽しい学園生活  作者: 紅藤
スカイアドベンチャーの失態 ~二年生~
72/116

異世界人たちの宴2

 

「狂気を感じる……あなたもそうとう悪いことを成してきたのね。邪悪な意思がだだ洩れよ。トキワさんのときとは違う波動……あなたは自分のために悪事をなしてきた。そうね?」

「あんた……なに? 心が読めんの?」

「いいえ。あなたから放たれる波動を呼んで、推測しているだけよ」

「ふーん。セイクリッドフィールドねえ。これがあんたのスキル?」

「そうよ。能力を奪うとはそういうことなのね」

「奪われた割にはサバサバしてんね、ええっと、アメリアさん?」

「泥棒風情に呼ばれる名前は持ち合わせていないの、ごめんなさいね」

「うわあ、むかつく」

「セイクリッドフィールドは、わたしが開発した魔法なの。学園の調査のために作ったのだけれど、構成は簡単で誰でも使えるようになっているのよ」

「つまり、奪われても腹は痛くない、と。やられたなあ。この世界は、誰でも使えるスキルをトレードマークにしてる奴ばっかり。面白くないよ、もっとオリジナル技を使ってよね」


 失礼な言い草である。おまえのためにスキルを覚えてるんじゃねーよ!と言ってやりたい。

 学園長も、ハロルドも、クラレンスも、この言い回しには少し顔をしかめている。

 何様だ、こいつ。そんな何様のSに話しかける教師がいた。リガットだ。


「誰も同じ技を持ってない、って点ではオレの技はオリジナルだぜ?」

「あんたかよ。脳筋野郎は要らないって言ってるだろ!」

「でもおまえ、リサーチしたらリガットより攻撃力が高かったぞ、良かったな脳筋」

「は? そんなこと言い出したら、一番の脳筋はテメーだろ!」

「そうともおれは脳筋さ。それが?」

「わたしは脳筋が好きなのじゃ」


 リサーチとは、敵・味方のステータスを開示するスキルである。

 この間の茶番劇で、舟長がサンドバッグにリサーチをかけたら、攻撃力わんりょくは528だった。リガットの攻撃力わんりょくは500に満たないので、攻撃力で比較する限り、S氏の方が脳筋だ。

 ただし、脳筋云々は、ステータスのバランスから言うものでもある。

 他のステータスと比べて攻撃力わんりょくが突出しているリガットや、攻撃力わんりょくが700もある斧戦士は明らかに脳筋だが、S氏は違う。そもそも攻撃力以外のステータスが見えなかったので、なんとも言いようがないのだ。


「そういえば、学園長の話では腕がもげたらしいリガット先生ですが、どこがもげたのです?」

「それも問題の一つでな……」


 学園長がクラレンスを見る。クラレンスはハロルドを少し見て、学園長に向かって頷いた。


「信じてはいるが、念のため言っておく。これから話すことは他言無用だ」

「前半はしゃべってもいいのかい?」

「フロウ……。もちろん、だめだ」

「分かってるよ。そこの兄ちゃんがなにか言いたそうにしてたからね。代わりに言ってあげたのさ」


 セリフを奪われたSが、ええー、とため息をこぼす。

 正直、前半の内容は眉唾ものだった。こことは違う世界があり、それを超えてこちらにやってきた、なんて……誰かに言っても信じてはくれまい。だが、嘘みたいなホントの話は、頭に残りやすいものだ。少しでも覚えていて、それが流出したら困る。

 各々、黙って了承する。


「クラレンス、説明を頼む」

「了解した。あのとき……リガットの左腕はあんまし綺麗には切断されてなかった。俺の腕じゃ縫えるか分からんぐらいには。止血魔法を唱えて、いざ手術をしようってときに、トキワが俺を止めたんだ。すごい回復師を呼んだから待っていろ、と」

「そんなこと言ってないよ。最強のヒールが来るから待ってろとは言ったけど」

「些末なことじゃない」

「……現れたのはそこの嬢ちゃん。魔法課の子が来て杖を振り回すもんだから驚いたが、なんとヒールの一言でリガットの腕を再生させちまった。生えてくる、じゃなくて初めから傷なんてなかったかのように。ヒールの回復量は知力に依存する。その通りのことが起きたんだ」

「彼女の名は、チェリル・グラスアロー。魔法課の二年生だよ」


 学園長が捕捉する。と言っても今日の集まりでそれを知らないのは少数派なのだが。

 へえ、彼女がセインズに勝ったっていう? 一年前のことを蒸し返さないでくれるかな。オレはいつでも思い出すぜ。問題児三人衆が盛り上がっている。

 好奇の視線が集まり、魔法使いは居心地が悪そうだ。


「彼女の知力は900越えらしい。HPを回復したあと、あまった回復量が欠損部分の回復に向かった……と俺は考えている。それでも飽き足らず、気分やその他もろもろの傷まで治してしまった可能性がある」

「ああ。あとで確認したんだが、学生の頃つけた脇腹の傷がなくなってた」

「やはりか。本人も古傷が治せるって言ってたからな。それはあるだろうとは思ったが……本当に治せるとは」

「今更だけど、知力900なんて何をしたらそこまで行くのよ?」

「ひたすらにジョブをマスターし、ひたすらにレベルを上げるだけだよ?」

「聞いただけで分かるわ……その道過酷なんでしょ?」


 アメリアが知ったような口を利いた。ええ、その通り鬼畜ですよ。

 魔法使いは九つの属性を操るが、それは全属性を操りたかったからそうなったのではなくて、ただ知力を上げたかっただけである。確かに全属性扱えれば、モンスター相手に有利に動けるだろう。しかし、これは最悪無属性だけでも事足りる。

 ※無属性の耐性を持つモンスターはいない。つまり、どの敵にも等倍でダメージが出る。


「知力……魔法課、支援課……ヒール……ふむ」

「学園に新しい風を吹き込みますか、学園長」

「いや、わたしの一存では決められないよ。後ろに口うるさいお目付け役も控えていることだしね」

「人の命を救うことですよ。さすがの彼もうんと言ってくれるでしょう」


 そのお目付け役は学園長の横でだんまりを続けている。


「フランシスは応援してくれるのかい?」

「学園長がやる気なら。あ、ついでに無手課と支援課の共同授業も一緒にお願いします」

「またそれか……。いや別に反対してるのはわたしじゃないんだが……」

「ハロルド教頭。なにがいけないのです?」

「せめて学園だけでも、生死に関係なく過ごしてやるべきだ、とは思わないのですか」

「そんなこと言ったら無手課のアサシンの卵たちは、実際に使うことなく仕事をやらねばなりません。そちらのことの方がワタシは恐ろしい」

「いままでもそうだったのだから、問題ありませんよ。学園は外から切り離された楽園。平穏の中で学習することが最も良いのですから」

「外から切り離された……? 冗談はやめてください。自宅から通う生徒や、休日に冒険者として活動する生徒は、何だって言うんです?」


 ハロルドとフランシスの間で激しい口論が巻き起こる。学園長はそっと席を立って、二人から離れた。フロウが酒瓶を持って入ってきたので、いったん口を閉じて席に座りなおす。

 当然のことながら、真っ先に酒瓶へ飛びついたのはアメリアだった。


「あの子、アルコール中毒でも患ってんの?」

「さあな。なんだか一部の人が喜びそうなすごい顔をしている」


 アヘ顔ダブルピースですね、分かります。しゅごいのぉとか言いそう。

 勝手な感想に、舟長と剣士は辟易だ。一応、やめろと言ったが、あながち的外れでもない表現に唸らざるを得ない。


「目にハートマークが……」

「いい加減にしろ!」


 舟長の拳骨に魔法使いは涙目だ。

 一方、敬語キャラ同士の戦いから逃げてきた学園長は、セインズに話しかけていた。

 にっこり。笑顔で。


「ところで、セインズ君」

「学園長ですか……なんでしょう」

「君、学生時代に禁書を持ってたことがあるんだって?」

「……!?」


 いや―な予感は無事的中。セインズはカクカクと動いて悪友を見た。ハワードは違う。そうなんだ、とか言ってる。リガットは……。目をそらしまくっていた。


「り、リガットぉおおおおお!」

「違う、違うんだ。オレがしゃべったのは保健室の……」

「クラレンスがこっそり教えてくれたんだ」

「あわ、あわわ」

「おまえ、絶対しゃべるなってあんとき言っただろ!!」

「ふむふむ。裏付けが取れてわたしも嬉しい限りだよ」

「あああああああああ」


 修羅場になっていた。

 そんな悪友の現状をスルーしながら、ハワードはこっそりスカイアドベンチャーに近付いた。魔法使いと呼ばれている少女の後ろに回って、いざ驚かそうとしたときだ。黒い腕がにょろりとハワードの腕を掴んだのは。ものすごい力でぐいぐい引っ張られるので、逆らわずそっちの方へ行くと……。


「ねえ。何してるの」


 あんまりよろしくない雰囲気で、スカイアドベンチャーのメンツに囲まれていた。

 四つの目は胡散臭いと言わんばかりに。一つの目は純粋な疑問を浮かべていた。


「この人誰?」

「さっきセインズさんとリガットの横に座ってた人だね」

「それは知ってるけど、この人と会うの、今日が初めてだよね」

「やあ、こんにちは。僕は――」

「ハワード・コンテン。支援課の教師。セインズ・リガットと合わせて問題児三人衆を結成している。ジョブは鑑定士。三人衆の中では頭脳・インドア派」

「……ええっと」

「ハワードさんって言うんだ。頭よさそうな名前だね」

「おまえはなんつう頭悪そうなセリフを言ってるんだ」


 言うべきことをすべて奪われてしまったハワードは頭をかくしかない。

 初めて会ったはずなのに、どうしてこんなに詳しいのか不思議だったが、セインズとリガットを知っているなら話は別だ。謎の三人目のことを調べたくもなるだろう。

 この情報群が、さっきハワード自身の頭を読んで得た情報だと知ったら、どんな反応をするのだろうと思いつつ、斧戦士は警戒しながらハワードをじっと監視する。

 S氏は放置されていたのをいいことに、クラレンスとフロウに絡んでいた。


「ねーねー食堂のおばちゃん、オレにもなにかつまみをちょーだい!」

「おばちゃんって。あんた、結構いい年なんじゃないのかい」

「初めてあいつに殺されたときから、身体は成長してないからね。身体は若いよ」

「ふうん……じゃあ40前後ってとこかな」

「さあね。年なんか忘れちゃったよ。あ、あんたのスキルも面白いねー」


 フロウに話しかける姿はごく普通の青年だ。能力のことを口に出さなければ。


「俺のトレードマークか……止血魔法だな」

「あったりー! なになに? 自分にもかけれるの? すげーじゃん!」

「若いときは国軍で衛生士をやってたんだ。そこじゃ、自分も怪我するのは当たり前だった。だから、こんなスキルが開発されたのさ」

「ふーん、じゃ、これも汎用スキルなんだ」

「スペルメイカーでもないのに、自分の攻撃にスキル名つける奴なんかそうそういないぜ。って、おまえ何を……」


 急に自分の腕を斬り出したS氏に驚くクラレンス。S氏は、覚えたての劣化スペルエイドを唱えるが、何も起きない。だらだら流れる血に、クラレンスがスペルエイドを発動した。


「ちっ、効かないか。これだがら劣化スキルはやなんだよねー」

「なるほど……劣化すると、自分には効果がなくなるのか」

「あ、止血、サンキュウな。一応、ほっといても治るんだけど」

「そんなにだらだら流したら、掃除が面倒だろ。掃除するのはフロウさんなんだからな」

「そりゃあ、失敬」

「なあ、Sさん。あたしにも能力ってあるのかい?」

「え、オレ? ……能力はどんな人にでもあるよ。おばちゃんの能力はね……」


 満腹メーター。目を合わせた人の空腹度が分かる。


「あっはっは! すごい! オリジナル能力だ!」

「戦闘員じゃないからかね。あんまりみんなが使ってるスキルを持っていないのさ」

「でも、これはオレには必要ないかな。老後に料理屋を開くってんなら別だけど」

「老いないんじゃなかったのか?」

「だから、一生使うことはないだろうね! オレ他人とか気にしない性格だし」

「食堂で働くにはバッチリの能力だったようだね。どうだい、しばらくここでアルバイトしないかい」

「あはは、やらない、やらない! そんなことしたら、食堂に来た子、片っ端から能力奪っちゃうよ!」

「それはまずいねえ」

「それはまずいなあ」


 フロウとクラレンスの声が重なった。互いに顔を見合わせる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ